“天真爛漫”とも違う。単に“天然キャラ”と言っても言葉足らずだ。“純粋培養の音楽バカ”という表現も、どこかしっくりこない。ただただ“音楽に対して無垢のまま成長を遂げた”天才肌の少女がいる。2月12日にミニアルバム『step by step』でメジャーデビューを果たすSuzuだ。可愛らしく小柄でキュートな少女だが、Suzuの目には汚れなく屈託のない少年のような正義感が宿っている。Suzuの魅力に引き込まれ、彼女の才能に目が離せなくなった多くの音楽ファンは、彼女が宿す少年のようなピュアさに共鳴したからなのではないかと思っている。

◆Suzu「CUPS」パフォーマンス映像、 画像

彼女は16才の時に初めて曲を書き下ろした。そして17才(高校2年)の時に書いた曲で最初のインディーズシングルをリリースした。規則で夢を縛るような学校の中で感じた憤りを「うそつき」という曲に注ぎ込んだのが最初のオリジナルだ。地元沖縄では一気に話題は広がり、インディーズ1st Singleとして「うそつき」は沖縄ローカルチャートで1位に輝くことになる。もちろん宣伝や戦略でヒットにつながったわけではない。作品自体、大人の入れ知恵で磨かれたものでもない。Suzuの歌に宿った歪みなく映し出された真実の清らかさが、人々の間を感銘で埋めていく。沖縄1位は当然であり必然でもあったのだろう。Suzuの歌の世界には、その清らかさに裏打ちされたデトックス効果がある。

Suzuの非凡さはライブでも確かめることができる。彼女の興味は音楽に託された思いを表現することにしかないようで、全ての集中力は音楽を奏でることに注がれる。ギタープレイも例外ではなく、感情の表現がギタープレイからストレートに放たれる。ギターを弾き始めて2年あまりで、テクニック的には高度なレベルではないにも関わらず、繊細なタッチとピッキングで喜怒哀楽を鮮やかに表現してしまう様子は、非常に斬新な世界だ。

指がもつれたりするのにリズムは崩れない。フィンガリングに安定感は乏しいのにピッチに不安定さは感じさせない。音が伸びている間に伝えるべき感情のひだをしっかりと掌握し、休符への入り口や音符への入り方に、きちんと表情を織り込んで“音楽を表現する”プレイをごく自然体で放つ。Suzu自身は何の意識もしていないかもしれない。だからこそ、表現したい思いが全面に飛び出し、それに必要なスキルが置いてけぼりになっているという、見たことも聴いたこともないSuzuの音楽表現が現れる。天賦の才が生み出すSuzuワールドだ。

ステージに立つ自身の心理状態を、Suzuは「無」と表現する。それは16歳からはじめたストリートでも19歳になった現在のライブハウスでも全く変わっていない。彼女は音楽を表現しているときは「無」の状態になるという。その瞬間、19歳にして解脱してしまっているのかもしれない。

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Suzuをネット上で検索するとYouTubeでテイラー・スウィフト、カーリー・レイ・ジェプセン、アブリル・ラヴィーン、マイリー・サイラスといった海外アーティストをカバーしている映像がたくさん現れる。自然な発音は、海外での暮らしの経験があるのか、あるいは沖縄という土地柄でネイティブな発音に接する機会に恵まれていたのだろうと思うのだけど、実のところ、驚くことに彼女は英語はほとんど喋れない。

子供が耳から言葉を学んでいくように、彼女は耳に入った音をそのまま口に出しているだけのようだ。メロディーも音もそのニュアンスも全て、聞こえたそのままを発音する…要するに、抜群に耳がいいらしい。まるで喋りだした赤ん坊のように、耳から入っている響きを歪曲することなく吸収してしまう。その後歌詞を訳して意味を理解し、そのストーリーを心に満たしながら英詞を歌うのがSuzu流で、もはや一点の隙もない。

そもそも英語の歌を歌ってきたのには訳がある。日本語の歌詞はどうにも覚えるのが苦手ですぐに忘れてしまうというのだ。おそらく、彼女にとって音楽は覚えるものではなく、身体に同居し、身体とシンクロし、喜怒哀楽も苦楽も共に生きる空気や水のような存在なのかもしれない。そういう意味で、洋楽は良くも悪くも意味がわからない。左脳を働かせる必要もなく、歌詞もメロディーも渾然一体となり1つの音としてSuzuの身体に染みこんでいくのだろう。その証拠に「洋楽であれば2~3回聴き歌うだけで、歌詞を含め全て覚えてしまう」という。まるで乾いたスポンジが水を吸うように、音楽はSuzuの身体に染みこんでいく。

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Suzuは音楽に囲まれた環境で生まれ育ったが、父親が弾くギターをみて自分もギターが欲しいと思った。そのとき父親はスピッツの「ロビンソン」を弾いていた。歌はどうしようもなく音痴だったがギター1本だけで歌っている姿はとてもカッコ良かったと話す。

ギターが弾きたいとギターをねだり手に入れるものの、手にしてみると弾けないことがわかり、すぐに「面白くない」と断念、ほっぽり出したらしい。「買ったらすぐに弾けるものと思っていた」ところが天然のおめでたさだが、その後、親戚の結婚式の余興でエイサー(お盆の時期に踊る沖縄の伝統芸能)をやることに巻き込まれたSuzuは、みんなで一緒に練習するのがいやで、ならば私はギターを弾くと、エイサーの練習から逃れたことで、初めてギターと対峙する。いわば団体競技ではなく個人競技の道を選んだ、天才肌のアスリートのようなエピソードだ。

ここからギターを弾き音楽を歌うアーティストSuzuが誕生する。

しかし、ここでもSuzuの非凡さが浮き彫りになる。全て独学…というか我流でギターを覚え、コードネームすら知らずに自己流の道を走り始めるのだ。「ドレミファソラシ」に紐付いて「CDEFGAB」の7つのコードがあることも知らず、Gの次にはHというコードがあると思っていたらしい。

どこかトンチンカンなSuzuだが、耳は一流。当然のように楽曲の中で響く和音を聴き取り、指板上で音をはめてひとつひとつを手探りで探し当てていった。先生は楽曲そのものだ。おそらくセオリーも順番もあったもんじゃなかったに違いない。メジャーもマイナーもセブンスもサスフォーも、ディミニッシュもオーギュメントも、テンションコードも全ては音から感じ取り、ギターの指板で音を探し独自で会得していったというから面白い。

コードブックを見れば一発で済むのになぜにそんな遠回りを…と思うが、Suzuは「覚えられないしすぐ忘れるから」と笑う。全ては耳だけが頼りだ。音を分解し身体に取り込み、それが血となり肉となり、曲の骨格や、メロディの道筋、サウンドの緩急、音のダイナミズムをもあわせて、ひとつひとつ自らのものに消化していったことだろう。

遠回りのようでいて、音楽の真髄に向かって一直線に突き進んでいった稀有な経験が今のSuzuを作り上げている。もちろんこれも誰かの策略でもなければ差し金でもない。これこそ、Suzuが「音楽に対して無垢のまま成長を遂げていく」奇跡のロードマップだった。

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「いまだ日本語も怪しく英語の語学力も乏しい」と自らを冷静に評価しながら「ま、いっか」と屈託なく笑う。スタッフはそんなSuzuを笑顔で包み、暖かく見守っている。Suzuの進むべき道の先には、世界の人々に笑顔を届けるという夢がある。だから日本語でも歌うし、同時に英語でも歌詞を書き英詞でも歌い続けると、明快なビジョンを謳う。

16才の、まだまだ飛び入りライブに出ていた頃のSuzuを知るスタッフによれば、最初は歌もギターも下手くそだったけれど何かひかる物を感じたという。それからすると、今はずいぶんうまくなりましたと語る。私はその事実を聴いて、より嬉しくなった。成長著しく、彼女の伸び代は、まだまだ果てしなく広がっていることが証明されたからだ。努力でまい進する天賦の才。それを一言で“天才”と呼ぶのだと思う。

text by BARKS編集長 烏丸哲也



Mini Album
『step by step』
[沖縄限定盤]
PROJ-1010  ¥1,575(Tax in)
2014年1月29日発売
※ボーナストラック2曲収録
[通常盤]
UPCH-1966 \1,575(Tax in)
2014年2月12日発売
収録曲
1.step by step
2.Open that door
3.キミとボク
4.アクアマリン
5.別れみち
6.うそつき-2014re-mix ver.
7.告白
(M-6・7は沖縄限定盤のみ収録)


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