【ライブレポート】アルター・ブリッジ、熱量高き高次元モダン・クラシック

ツイート

まさに待望の初来日公演。いや、待望くらいでは言葉が足りないかもしれない。アルター・ブリッジ史上初の日本でのライブが、2月18日、東京・恵比寿リキッドルームで実現した。フロアに渦巻く熱気のみならず、ステージ上に居並ぶメンバーたちの表情からも、誰もがこの日の到来を切望していたことがうかがえた。ショウの序盤、フロントマンであるマイルズ・ケネディ(Vo、G)の口から発せられた「10年も待たせてしまったことをお詫びしないと」という言葉からも。

◆アルター・ブリッジ画像

このバンドが始動したのは2004年のこと。2013年9月に日本でも発売された最新作『フォートレス』は、通算第4作にあたる。その最新作からの「アディクテッド・トゥ・ペイン」で幕を開けたライブは、3曲のアンコールを含めて100分以上にも及び、これまでの全4作から万遍なく選りすぐられたトータル18曲が披露された。

そこでまず驚かされたのが、各楽曲の浸透度の深さだ。誤解を恐れずに言えば、これまで彼らの作品は、ここ日本においてはヒットを重ねてきたとは言い難いし、第2作の『ブラックバード』については国内発売にさえ至っていない。このバンドの基盤ともいうべきクリード(マイルズ以外の3人はすべて同バンドでの活動歴を持つ)と同様に、何故か日本では受け入れられにくいバンド、全米での実績が極端にすごい“ビッグ・イン・アメリカ”なバンド、と認識されてきたところがあった。が、それでも、イントロが始まるたびに歓声を上げ、マイルズと歌声を重ねる熱心なファンがこれほど存在しているのだという事実に、僕は少なからず感動に近いものをおぼえたし、いつも“未だ見ぬ大物”的に扱われ続けてきたこのバンドのファンとして、同志がたくさんいることを実感した人たちも少なくなかったはずだ。

もちろん、ライブ自体の内容が素晴らしいものだったことは言うまでもない。前述のマイルズの歌唱力の高次元での安定度については、スラッシュとの一連の活動を通じても評価を集めてきたが、彼とバンドの両看板をなすマイク・トレモンティ(G)の卓越したプレイも当然ながら見どころのひとつ。ただ、これはリズム隊の2人についても言えることなのだが、彼らは個人芸のレベルの高さを過剰に強調しようとはしない。あくまで楽曲優先なのだ。そのなかで、各々の技量の高さがおのずと滲み出てくる。このバンドには、あからさまなヒーローは存在しないが、いわば各々の楽曲が主人公なのだ。しかも、とにかくバンド自体がきわめてタイト。実のところ、彼らは2013年10月から11月にかけて行なわれたUK/欧州ツアー以降、しばらくライブ活動から離れていた。が、そうした時間的ブランクを感じさせない演奏ぶりだったという当然の事実についても付け加えておきたい。

同時に感じたのは、かつて始動当時には「1990年代のグランジ/オルタナティヴからの流れを汲むヘヴィ・ロック」的に解釈されがちだったこのバンドのサウンドが、今では良い意味でクラシックに感じられるということ。もちろん、1970年代のハード・ロックを焼きなおしたかのようなクラシック・ロック臭とは違う。むしろ1970年代から2000年代に至るまでのすべてを通過しながらの“モダン・クラシック”とでもいうべき感触を、僕はおぼえた。もちろんそれは、これまでの作品群からも感じさせられていたことではあるが、「今日的でありながら普遍的で、普遍性を持ちながらも古臭くない」というこのバンドならではの強みを、今回のライブ・パフォーマンスを通じて改めて痛感させられた次第だ。

今回のジャパン・ツアーは、この東京公演、そして翌19日に行なわれた大阪公演の計2本のみからなる非常にコンパクトなもの。実は、まさに大阪公演が行なわれている最中に僕はこの原稿を書いているのだが、大阪でも東京に勝るとも劣らないライブが繰り広げられたに違いない。

メンバーたちは満足げな笑みを浮かべながらステージをあとにした。マイルズが「俺たちがまた来たら、また観に来てくれるかい?」と問いかけると、オーディエンスは、そこがライブハウスだとは思えないほどの音量の歓声で、それに応えていた。アルター・ブリッジ再来日公演の早期実現を、心から願いたい。

文:増田勇一
撮影:古渓一道


<アルター・ブリッジ来日公演@EBISU LIQUID ROOM 2014.02.18>
1.Addicted to Pain
2.White Knuckles
3.Come to Life
4.Before Tomorrow Comes
5.Cry of Achilles
6.Ghost of Days Gone By
7.Ties That Bind
8.Waters Rising
9.Broken Wings
10.Metalingus
11.Blackbird
12.Watch Over You
13.One Day Remains
14.Isolation
15.Open Your Eeys
-ENCORE-
16.Slip to the Void
17.Farther Than the Sun
18.Rise Today

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス