【インタビュー】androp、『period』が導く終止符からの未来「ギターの音だと気づかなくても構わないけど、分かる人が分かってくれるとすごく嬉しい(笑)」

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andropが3月5日に3rdフルアルバムをリリースした。これまでリリースされた作品は、『anew』『note』『door』『relight』『one and zero』というタイトルを持ち、それぞれの頭文字を並べると「a」「n」「d」「r」「o」と、バンド名をなぞるものだった。そして発表された最新アルバムのタイトルは『period』だ。andropという造語に有機的な意味を持たせたこの作品に収められたサウンドは、ある意味ではバンドの完成形と言っていいほどの進化を遂げている。音響・ライティング・映像が三位一体となった総合空間演出が話題を集める彼らだが、このアルバムで注目すべきは、サウンドへの凄まじいこだわりだ。たとえば、レコーディングでは貴重なヴィンテージドラムを使用しながら、打ち込み的サウンドを作るなど、その驚くべき手法は枚挙に暇がない。全14曲に収録されたサウンド構築法や、andropのなんたるかを、バンドの中心人物でありボーカル&ギターの内澤崇仁が語るロングインタビューをお届けしたい。

◆『period』documentary trailer 動画

■胸を張ってひとつの終止符を打てるようなアルバムを目指して
■お客さんのテーマソングになるような曲、そしてパンチがある曲を作りたい

──まず、andropというバンドの経歴からうかがいたいと思います。

内澤:結成は2008年です。andropの前のバンドがうまくいかずに解散してしまって。そのときに、自分が本当に好きな音楽をもっと自由にできるバンドが作りたいと思ったところから始まりました。

──現在のメンバーとはどのように?

内澤:ギターの佐藤(拓也)君とは前のバンドをやっていた頃に対バンしたことがあったんです。ものすごく楽しそうにギターを弾く人で、ずっと印象に残っていたんですね。プレイヤーとしてのスキルも高いし、曲作りもできるということで、まず佐藤君を誘いました。その後、知り合いにベースの前田(恭介)君を紹介してもらったところ、前田君がドラムの伊藤(彬彦)君も連れてきてくれたんです。

──一番最初に4人で音を出したときのことは覚えていますか?

内澤:3人が揃ったときに僕が作ったデモ音源を渡して、その後スタジオに入ったんです。でも実はその頃、メンバー探しのためにいろいろな人とスタジオに入っていたんですけど、なかなかいい出会いがなかった。それが、今の4人でスタジオに入ったときは、もう音を出した瞬間、音で会話できるような感覚があって。4人で音を鳴らすことが本当に気持ちよかったし、僕が作った曲を全員がしっかり噛み砕いて、自分のフィルターを通して音を鳴らしてくれていることも分かった。それで、すぐに一緒にやろうと言いました。

──いい出会いがあったんですね。andropの軸になる音楽性は、結成当初から変わっていませんか?

内澤:曲作りは、基本的に僕がアレンジした状態のデモ音源を作って、みんなに渡すというカタチを採っていて。僕が目指す音楽性を具現化するというスタンスは変わらないけど、メンバーの指向性を意識することで、自然とその人が好むフレーズに寄っていったりする部分があるんです。だから、メンバーのことを知れば知るほど、楽曲がいい意味で変化していった気がしますね。

──内澤さんが作るデモ音源はかなり作り込んだタイプのものでしょうか?

内澤:全パートのフレーズをほぼ決め込んで作ります。ただ、僕が作ったデモを完全再現してもらっているわけではないんですね。メンバーから「ここは、こういう風にしたいんだけど」という声が出たときとか、たとえば、歌が入る前にドラムのフィルが入るとして、すごくカッコいいんだけど歌とかグルーブが消えてしまうようなときは、ざっくばらんに話し合うようにしています。どうしてもそのフィルを活かしたいのであれば、それに合わせてメロディーを変えたりもするし。楽曲をベストな形に仕上げるのが一番大事なことなので、自分が考えたものより全然よければ、迷わずそれを採用しています。

──作曲者のこだわりとメンバーの個性を両立させる良いパターンと言えますね。

内澤:自分が打ち込みで作ったトラックをそのまま生に差し替えるだけでは、バンドをやる意味がないというか。4人の個性が混ざり合って良いものができるのがバンドの魅力だから。そういうバンドマジックを楽しんでるんです。

──andropの曲調の多彩さからは、内澤さんが好きな音楽の幅広さもうかがいしれます。

内澤:僕は音楽そのものが好きだから、ジャンル分けして音楽を聴くタイプではないんです。いいと思えばジャンル関係なく好きになって、それがバンドにも反映されるから、いろんな要素を活かした音楽になっていますね、andropは。最近は一層ジャンルに縛られない方向にいっています。

──では、そういったことを踏まえつつ、ニュー・アルバム『period』について訊かせてください。新しいアルバムを作るにあたって掲げたテーマなどはありましたか?

内澤:ありました。andropのコアファンの方は知っている情報ですけど、今までandropが作ってきたアルバムタイトルの頭文字を並べると“a”“n”“d”“r”“o”になるんですよ。だから、次の頭文字が“p”だということは、以前から自分の中で決めてて。実は、今回の“period”というアルバムタイトルも1枚目の『anew』を作った頃から決めていたんです。

──6thアルバムまで見据えていたという?

内澤:『anew』を出したときは、次のアルバムを出せるかどうかも分からなかったけど、もし“p”まで頑張って音楽を続けていることができたら、胸を張って“これがandropだ”と言えるアルバムを作りたいという願いが自分の中にあったんです。それが実現したわけだから、今回のアルバムにはすごく思い入れがあって。夢見ていたとおり、胸を張ってひとつの終止符を打てるようなアルバムを目指して曲を作ったし、レコーディングにも臨みました。

──新曲を作っていく中で、アルバムの指針になった曲をあげるとしたら?

内澤:「Voice」です。前アルバム『one and zero』を作ったときは、燃え尽きた感があって。完成させた後に、何ヵ月もの間、1曲も作れない状態になってしまったんです。どうしようと思っているうちに<one-man live tour "one and zero">が始まって。このツアーは初のホールツアーで、今までで一番大きなキャパシティだったんですね。そのツアーの初日にステージに立ってみたら、2階席、3階席で観ているお客さんの声が上から降ってきた。そういう状態で、お客さんと一緒に歌っているときに、“こういう風にお客さんと一緒に歌える曲、お客さんのテーマソングになるような曲、そしてパンチがある曲を作りたいな”と思ったんです。

──ライブとお客さんが『one and zero』の次へ向かわせてくれたわけですね。

内澤:自分達がこのステージに立てているのは、俺らだけの力じゃねぇやと改めて感じることができたんです。そういう曲を作りたいなと思ったところに1フレーズが出てきて、ホールツアー中に「Voice」ができあがりました。ホールツアーのファイナルとなった東京国際フォーラム公演が終わってすぐに「Voice」をレコーディングして、やっと新しい曲ができた。「Voice」が形になったことで、数ヵ月間自分の中に溜め込まれていたものが一気に溢れ出す感じで、その後は、新しい曲がどんどんできたし。次のアルバムに向けて歩き出せるようになるキッカケを作ってくれた曲です。

◆インタビュー(2)へ
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