【インタビュー】陰陽座「自分は用無しになるということを覚悟した上で、むしろその天下泰平を求めて戦いに臨む政宗の意志。それこそがこの物語の最大の肝だと思います」

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ベスト盤『龍凰珠玉』(2013年12月発売)を挟みつつ、新作のリリースとしては2年3ヶ月ぶりとなるシングル「青天の三日月」が3月19日に登場。サミー製ぱちんこ『ぱちんこCR戦乱BurST!』の主題歌として書き下ろされた本作は、伊達政宗を主人公とした架空の戦国物語第3弾であると同時に、疾走感と爽快なメロディを併せ持った陰陽座のド直球と呼ぶに相応しいナンバーだ。タイアップ作でありながら、陰陽座イズム満点の世界観と哲学をふんだんに封じ込めた奇跡のコラボレーション。そこに描かれた“青"が指し示すものを、リーダー・瞬火(B&Vo)と黒猫(Vo)が語る。

◆陰陽座「青天の三日月」~拡大画像~

■よりにもよって陰陽座に主題歌を頼むなんて、よく企画書が通ったなと思いますよ
■僕が上司だったら「なんだ、その“インヨウザ”とかいう訳の分からんバンドは」と一蹴するでしょうね



▲「青天の三日月」
――10作目となるスタジオ・アルバム『鬼子母神』がリリースされてから2年。新作が持ち望まれる中で登場するシングルとなれば、これまではアルバムの先行作という形が常でしたが……。

瞬火:アルバムからの先行シングルという位置付けではないですね。この「青天の三日月」はサミー製ぱちんこ『ぱちんこCR戦乱BurST!』のために書き下ろしたもので、物語としては同じく『ぱちんこCR戦国乱舞』の主題歌だった「蒼き独眼」(2009年8月発売)、「紺碧の双刃」(2011年2月発売)の続編になります。とはいえ、次に発表されるであろう新作アルバムと全く無関係かと言うと、そういうわけでもありません。

――来るべき11枚目のアルバムと同じ軸の上にはあると。

瞬火:確実にありますね。9作目の『金剛九尾』(2009年9月発売)の制作段階で、もう11作目と言わず、12作目も13作目もタイトルは決まっていました。だから、予期しないタイミングでタイアップの話が来ても、ちゃんと次の構想を踏まえた中で、違和感なくハマる1ピースとして捉えることができたんです。前2作に続く物語ということで、今回も史実と架空が織り成す伊達政宗の、とある戦いを描いた曲になっていますが、そういった世界観は陰陽座のどの作品に入っていても不思議はないですからね。

――逆に言うと、その世界観がハマるという判断の元に、サミー側もオファーしているわけですもんね。

▲黒猫
▲瞬火
瞬火:そこが数少ないながらタイアップのお話があったとき、僕が有難く感じている部分ですね。そもそもタイアップって、誰もが知っている有名アーティストに頼むことで宣伝効果を付加するためのものですから、よりにもよって陰陽座に主題歌を頼むなんて、よく企画書が通ったなと思いますよ。僕が上司だったら「なんだ、その“インヨウザ”とかいう訳の分からんバンドは」と一蹴するでしょうね。

黒猫:あはは(笑)

瞬火:つまり、逆に言えば陰陽座というバンドにタイアップを依頼するということは、その音楽や世界観そのものを起用したいという意図以外ありえない訳ですから、その熱意と勇気に、音楽そのもので全力で応えるしかないですよね。メジャーなアーティストではなく僕たちに依頼することには相応のリスクがあるはずですから。

――結果、この「青天の三日月」も陰陽座の王道と呼ぶに相応しい、疾走感を持った力強い楽曲になっているんですね。おまけにテレビから流れて来ても、何ら違和感の無いキャッチーさもある。

黒猫:ホントに陰陽座のストレートど真ん中! っていう感じで、私も他のメンバーも初めて聴いたときは暫く余韻に浸りつつ、“カッコいい!"って同時に声を発したのを、すごく覚えてます。

瞬火:テレビから流れて来ても違和感が無いと言っても、歌詞は『ぱちんこCR戦乱BurST!』にしか適合しない内容ですけどね。でもそれこそが僕たちの誇りとしているところであり、陰陽座に求められているところでもあると思っています。だから、もちろん今回も前2作と同様にサミーの制作スタッフから物語のアウトラインを聞いて、自分の中で咀嚼することから始めました。おさらいをすると、史実の“奥州仕置き”に反して、攻めてきた豊臣秀吉を迎え撃つ伊達政宗の戦いを歌ったのが「蒼き独眼」。そこで倒したと思っていた秀吉が実は生きていて、天下人の地位を狙う徳川家康と共闘して秀吉を倒すのが「紺碧の双刃」。そして家康が天下を統べることになりそうだけども、本当に彼が天下人に相応しい器かどうかを刃を交えることで確かめようと最後の戦いに臨む政宗の様を描いたのが、今回の「青天の三日月」です。

――いわゆる伊達政宗にまつわる“歴史if"の物語。

瞬火:そうです。詳しいことはパチンコを楽しむ方のために明言しませんが、結末は史実と同じですが、プロセスが違います。そしてその史実と異なるプロセスによってより強調されるのが、天下泰平の世になれば、戦に生きる人間の力は必要なくなるから武人としての自分は用無しになるということを覚悟した上で、むしろその天下泰平を求めて戦いに臨む政宗の意志。それこそがこの物語の最大の肝だと思います。安易に“勝った方が天下を取るぜ!”という物語にしなかった制作陣の思慮深さというか、歴史に対する愛情と敬意に、一歴史好きとして非常に共感できましたね。歴史に刻まれている史実を否定するのではなく裏側を覗いて、より深く歴史を楽しもうという姿勢こそが“歴史if"の醍醐味ですし、最後の戦いに臨む政宗の心境に、僕たちが常に陰陽座で描こうとしているヒロイズムとシンクロするものを感じることができたので、制作はとてもスムーズでした。

黒猫:歌詞の世界だったり、そこに流れるテーマも非常に陰陽座らしさに溢れていて、その奇跡的なマッチ具合はホントに素晴らしいなと私も感じました。もうビジョンが見えるというか、まだ歌ってもいないデモの段階で世界に入り込めたので、聴いた瞬間に“早く歌いたい!”って思ったんですよ。で、実際に歌うにあたっては、ストーリーが一種の潔さや爽やかさを秘めたものになっていますし、曲調も哀愁を帯びつつ広がりや前向きさも感じるものになっているので、何か小細工をするとか感情過多にグイグイ攻めるのではなく。とにかく、その潔さ/爽やかさを伸びやかに、突き抜けるように表現することに専念しました。

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