東阪で開催されるプラネタリウム・ツアー。東京での追加公演である日曜の午後は、コートが重く感じられるほどのぽかぽか陽気。会場に入ると、傾斜した客席の底の部分がステージにあたり、リビングよろしく絨毯が敷かれ、フロアスタンド、コーヒーテーブルの上には白い花が活けてある。場内が暗転すると、なぜか低い姿勢でそそくさという形容が似合うムードでPredawnこと清水美和子が登場。「こんばん……こんにちは、Predawnです」と自己紹介しながら、軽快なカントリーテイストもある「Over the Rainbow」を歌い始める。”矢継ぎ早”とも思えるペースで4曲目の「Tunnel Light」まで演奏。弾き語りのせいもあるのだろうが、すでにある曲というより、そこで新たに歌が誕生するかのように自然に鳴らされる生命感たるや!

◆Predawn <Planetarium Tour”Make believe,Make a wish”> 画像

昨日、今日とプラネタリウム・ライブというなかなか経験できないことをやらせてもらってるんですが、聴いてる方はどうですか?見苦しいと思ったら、リクライニングを推奨します」と、笑いを誘う。実際、暗がりだからこそ、より演奏を見たくもあり、逆に明るい場所より音に集中できている気もしたり、オーディエンスも改めて自分の五感を研ぎ澄ますことそのものを楽しんでいるようだ。彼女の背面一杯に写真のスライドショーが投影される演出もあり、特に、海の光景が映し出された「Breakwaters」では、情景と曲がないまぜになって寂しいような懐かしいような思いが込み上げた。

そして英語詞が多い彼女の中では珍しい日本語詞の「霞草」から場内は漆黒に包まれ、半球の天井に星々が投影される。続く「Universal Mind」も「Sheep & Tear」も彼女のあどけなさと芯に強さのある声がダイレクトに届き、訥々とした歌唱は明滅する光のように、伸びやかな声は闇に差す一条の光のように、まるで可視化できそうに近くに感じたのも、プラネタリウムという場の効果かもしれない。

歩くように自然に歌とギターを紡ぎだすせいか、あっという間に12曲も演奏していたことに気づく。そこで「今日はグランドピアノがあるということで……」と、彼女もボーカルで作品に参加しているRayonsこと現代音楽家の中井雅子を招き入れ、ツアータイトルを歌詞から引用したという「Milky Way」を披露。中井の弾く愛らしいグロッケン・シュピーゲルがイノセンスの色を濃くしつつ、曲を彩る。「プラネタリウムと夢って似てるねって友だちと話してて。プラネタリウムは忠実に実際の星を再現しているけど偽物であって、空に本当にいるはずはないのに「さそり」や「牛」がでてきたり、突拍子もないじゃないですか?星座も夢も、現実を投影してるのかなって」と、この会場ならではのMCをしてくれたのだが、奇しくもそれは音楽そのものにも似ていると思った。

終盤はRayonsのナンバーが続くのだが、ビョークにも通じるルナティックな部分も感じる歌唱の「Waxing Moon」、クラシックと映画「サウンド・オヴ・ミュージック」の世界が融合したような「Ivy」は、ふたりの繊細にして獰猛な音楽家の魂がスリリングに交錯。穏やかなのにドキドキする。そんな無二の時間は、普遍的なグッドメロディの「Halfway」で幕を閉じた。すっかりPredawnの魔法にかかった聴衆から起こるアンコールに応えて、再びひとりで登場した彼女は、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」の主題歌である「I See the Light」をMonday Mooreの歌詞で届け、続いて“君が歌う 空が笑う”というフレーズが印象的で、新しい季節を迎えたことを体感するこの日にぴったりな「虹色の風」で、かけがえのないライブの最後を彩ってくれた。

終演後、外に出て春の日差しをあびると、殊更、つい先程までの時間が魔法のように感じられた。

<Predawn Planetarium Tour”Make believe,Make a wish”>
2014年3月16日 北とぴあプラネタリウムホール
テキスト:石角友香
写真:AZUSA TAKADA



◆Predawnオフィシャルサイト
◆Predawn Staff twitter
◆Predawn Facebook