【インタビュー】May J.「“ムズムズ”が一番出た最初のテイクが良いことが多かった」

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May J.が大ヒットを記録した『Summer Ballad Covers』に次ぐ、第二弾カバーアルバム『Heartful Song Covers』を完成させた。前作をひっさげて全国各地にキャンペーンやライブイベントなどで訪れた際、自身の歌声がリスナーの毎日の活力や励み、笑顔を生んでいることを実感したという彼女。前作は「May J.の声でいろんなカバー曲を聴きたい」というリスナーからの声に応えるかたちでリリースされたが、今回はそうして彼女の音楽に心震わされた人たちに向けて、May J.が今の想いをメッセージしようとつくられた。いわば本作は、May J.の真心のこもった微笑みがえし、というわけだ。

May J.:アルバムを出して本当にたくさんの方からファンレターやメッセージを頂いたんです。復興地の方からも、「被災して以来、感情を押し殺すことを覚えてしまったんだけど、私のアルバムを聴いて初めて涙を流すことができた。それから前に進んでいこうっていう気持ちになれた」っていうお手紙を頂いて。そういう声をいろいろ聞いて、今こそ自分が伝えるべき歌は、“誰かを元気にするための歌”なんじゃないかと思ったんです。私自身、常に音楽に励まされながら生きてきたし、そういう存在の音楽を今度は自分がみんなに伝えたいって。リスナーのみなさんとのコミュニケーションで気づけたことをアルバムにして、今度は私から届けたいと思ったんです。」

カバーする曲は、May J.が中心となってセレクション。スタッフからもさまざまな意見を募って選定された。
 
May J.:今回は歌詞を重視して曲を選びました。幅広い年代の人が次のカバーアルバムを待ち望んでいると思ったし、いろんな年代の方にどんぴしゃな曲を入れたかったので、スタッフさんからもいろいろ意見を聞いたんです。選曲するときは、まず歌詞を見て本当に素晴らしいメッセージが詰まってるなと思った曲を何十曲とピックアップして、それからカラオケに行って全部歌ったんです(笑)。そうして今度は自分の声とハマりがいいかを耳で判断して決めたんです。

制作時に最も時間をかけたのは、歌詞を何度も読み返し、“歌を自分のもの”にする作業だったそう。前作はその作業をスタジオで実際に声を出しながらプロデューサーの方と話ながら行ったが、今回はその経験値とコツを活かし、ひとりで歌のアプローチをイメトレ。実はそれが前作以上に美しくハリのある歌声を生んだことに繋がっている。

May J.:今回も一曲一曲、何度も歌詞を読み返して、歌詞から連想する感情や場面、状況を自分の過去と照らし合わせながら、この歌で自分らしさを伝えるためにはどうすればいいんだろうって考えました。でも、今回は家で一度も歌の練習はしてないんです。発声をしてしまうとフレッシュさがなくなると思って。ブースに入った瞬間、もう歌いたくてしょうがない、ムズムズするっていう状態を今回はいつも作ってたんです。しかも、今回は歌った回数も本当に少ない。その“ムズムズ”が一番出た最初のテイクが良いことが多かったんです。

リード曲の「Believe」は、卒業式や合唱大会などでよく歌われるナンバー。オリジナルは「生きもの地球紀行」(NHK)のエンディングテーマとして1988年に発表された楽曲なので、当時、中学校の卒業式(15歳)で歌った人は現在31~32歳。30歳以下には合唱曲として知られている。今回はそれを勇壮なオーケストラアレンジでカバー。ドラマチックなサウンドと、May J.のダイナミズムあふれる歌声を聴いていると、力がじわじとみなぎってくるようだ。

May J.:この曲は小学校のときの教科書に載ってたんです。合唱曲のイメージが強いんですが、そのイメージを崩すことで新しいものが生まれるんじゃないかと思って。だから、歌い方もいつもの私が歌うJ-POP寄りにして、アレンジも壮大にして、改めてこの曲の良さを伝えられたなって。歌うときにイメージしていた色は、澄んだ空の青。大空に羽ばたく感じ。日本だけじゃなく、世界中のみんなと手を繋いで大空を見上げながら一緒に歌ってるイメージを浮かべてました。

1曲目にふさわしく華やかなストリングスが舞う「手紙 ~十五の君へ~」は、“声色”に注目の一曲。ひとつの曲の中に15歳のMay J.と現在のMay J.、その2人の気持ちが重なった声、そして、そんな世界観の曲であることをリスナーに伝える声と、4種類もの声色が現れる。また、「永遠に」も多彩な声の魅力を伝える曲。前作収録の「少年時代」でひとり多重録音によるアカペラに挑戦し、その手法を“ひとりゴスペラーズ”と呼んでいたMay J.だが、今回はちょっと遊び心を効かせ、ご本家の名曲をアカペラ風にカバー。ここには12人のMay J.がいる。

May J.:「手紙」は15歳の自分と今の自分の会話みたいにしたかったんです。歌詞の一番は15歳でまだ弱い自分を歌っていて、2番から今の自分になるんですけど、でも、まだ今でも苦しんでるんだよっていう感じを出してる。で、大サビになると、また15歳の弱い自分が出てきて、今の自分も出てきて、最後は一緒に頑張っていこうって2人が重なる部分が出てくるんです。そして一番最後になると、そういうことも全部あって今を生きてる、みたいな。その2人を俯瞰してる感じを意識して歌ったんです。

May J.:「永遠に」は、2013年の<SOUL POWER SUMMIT 2013>でゴスペラーズさんと「少年時代」を共演させてもらって、ご本人たちから“ひとりゴスペラーズ”の許可を頂いたんですね。だから、今度はそれをゴスペラーズさんの曲でやりたいなって。レコーディングでは、「アー」か、「ウーアー」か、「フゥー」か、どんな口の開け方でどの音量で歌うのか、そういうの全部想像しながら録らなきゃならないから大変。前回でそれなりにコツは覚えたつもりですけど、コーラス録りは途方にくれてました(笑)。

本作にはMay J.のルーツが伺える選曲/アレンジも。「Let It Go ~ありのままで~[Heartful ver.]」は、幼いときから大好きだったディズニーの新作映画「アナと雪の女王」の日本語版エンディングテーマで、ラストの強く美しいロングトーンが必聴。「元気を出して」は少しネオソウルな佇まいにアレンジされているが、シブい方向ではなく、柔和な歌声でゆったり軽やかに仕立てているところがMay J.ならではだ。反対にラストの「Amazing Grace」は、声がビリビリ割れるほどの大迫力の絶唱。これほど“パワフルにうなる”May J.は、これまでCDで聴かせたことがない。古くからライブで歌っている曲だけあって、歌の細かいタイミング/ニュアンスも情感豊か。ヘッドフォンで聴くとより臨場感が味わえるし、何度聴いても新しい発見があるだろう。

May J.:ディズニーから「Let It Go ~ありのままで~」の話を頂いたときは、飛び上がるほど嬉しかったです。物心ついたときからディズニー映画を観て育って、ディズニー音楽を歌いながら歌手になりたい夢を膨らませていたから。このバージョンは劇場版からちょっと大人っぽくアレンジしていて、歌も録り直してます。オリジナルはデミ・ロヴァートが歌ってますが、相変わらず“負けたくない精神”が強いので、そのバージョンに一切囚われたくなかった。もっとそれを超える、その上を行く歌を届けたかったんです。

May J.:「元気を出して」は軽やかに気持ちよく歌ってる曲。今回のアルバムで新しく挑戦したのは、こういうレイドバックした雰囲気のもので、「やさしさに包まれたなら」もそういう感じに仕上がってます。失恋した女の子の友達を励ますときってストレートに言うより、なにげなく一緒に過ごしたり、一緒にショッピングに出掛けたりとか楽しいことをしながら「忘れようよ」って言うことが多いと思うんです。そういう女友達のやさしさを伝えたくて、アレンジは明るく軽やかな、ちょっとハッピーな方向にしたかったんです。

May J.:「Amazing Grace」は、13歳くらいのときから歌ってる曲。ライブで結構歌うんですけど、ライブではいつもああいう声を出すんです。アルバム唯一のスタジオライブ録音で、ピアノと同時に「せーの」で録ってます。こんなに自由に歌ってる私は、なかなかないと思いますね。

本作をひっさげて7月に全国ツアーを行うことも決定。どんな歌声で我々を笑顔にさせてくれるのか、期待が膨らむ。

May J.:ツアーは『Heartful Song Covers』の曲を中心にオリジナル曲も加えた曲目を考えています。「遠く遠く」とかMay J.バンドのメンバーで録音した曲もあるので今回は全個所生バンドでやります。あと、前回のツアーではやらなかったんですけど、今回はダンスもやりたいし、新たなMay J.のエンタテインメントを追求したライブができれば。私の音楽で少しでも元気になってもらったりとか、私の音楽がなにか新しいことを始めるきっかけになったりとか、ライブに来ることで明日に向かうパワーがみなさんに生まれてくれたらいいなと思ってます。


◆BARKSインタビュー
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