【ライヴレポート】摩天楼オペラ、荘厳にして凛々しいサウンドで渋谷AXを席捲したツアー・ファイナル

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2012年から2013年にかけ“喝采と激情のグロリア”なるコンセプトのもと、合唱をキーワードに壮大な“生命”の物語を描き上げてきた摩天楼オペラ。聴くだけで身が引き締まるようなシンフォニックメタルを軸に、着実に活動規模を広げてきた彼らは、2014年の元日に「天国への鍵」と題された新作音源をオフィシャルHPに公開した。その勇壮なるSEは3月より開催された<journey to HEAVEN Tour>、すなわち“天国への旅路”と名づけられたツアーのファイナル公演でも幕明けを飾り、そのまま新曲「天国の扉」に繋がって5月末の閉館を控えた渋谷AXを席捲。まさしく“天国”への高鳴る歩みをなぞるかのような力強いリズムと、荘厳にして凛々しいサウンドで場内を圧倒して、新たなる物語の始まりを示してみせた。

◆摩天楼オペラ~拡大画像~

「東京!“journey to HEAVEN Tour”へようこそ!」

固唾を飲んで厳かなオープニングを見守っていたオーディエンスは、しかし、曲終わりで苑(Vo)が軍帽を脱ぎ捨て、ステージからスモークの柱が噴き上がった途端、一斉に声と拳をあげて沸騰。それに応えるべくフロント陣もグッと前に出て「Plastic Lover」から楽器隊のパワーコーラスが攻めまくる「Psychic Paradise」と、ライブお馴染みのアッパーチューンを一気に畳み掛ける。2階席から見下ろすと、ステージ後方に張られた鏡に沸き返るオーディエンスが映り込んで、時間の経過と共に熱狂の度合を増してゆくのが明らか。続いて「埋まったね! もう無くなっちゃうハコで、これだけの人数で暴れるって、すごく思い出に残ると思う。最高の夜にしようぜ!」という苑のMCからヘッドバンギング吹き荒れる「RUSH!」、「落とし穴の底はこんな世界」と進めば、場内のテンションはピークに到る。カラフルに瞬くライトは鏡に反射して幻想的な情景を創り出し、その中でアグレッシヴに蠢く5人に向かって突き出される拳が、さらにメンバーの動きを煽る様は爽快きわまる野外フェスのようでもあり、原始宗教の妖しい礼拝のようでもあり。まさしく“落とし穴の底ってこんな世界?”と自問自答してしまいたくなるほどだ。

衝動的なバンドアクトをたっぷり魅せて、中盤のドラムソロでは昨年、持病の療養のため半年間の活動休止を余儀なくされた悠(Ds)が、緩急豊かなプレイと高速ビートで快復ぶりを証明。代わって苑と彩雨(Key)が登場すると、天井中央のライトが血の色を放つなか、ダンサブルな打ち込み曲「DRACULA」により、バンドサウンドとは対極にある“もう一つの摩天楼オペラらしさ”を披露する。そこから5人が揃っての「Innovational Symphonia」では、熱い鼓動を刻む生ドラムにスリリングな弦楽器、壮麗な鍵盤に高らかな歌声という5つの音にオーディエンスの合唱が加わって、重厚と繊細を併せ持った摩天楼オペラの王道を創り上げてみせた。断片を繋ぎ合わせて、完成形へ――。それは摩天楼オペラというバンドの成り立ちを実証するような、素晴らしくドラマティックな流れだった。

「ヤバイ、楽しくない? 俺も手袋が絞れるくらいグッショグショ。動けてないヤツはリズムに乗りなさいって! 次の曲はどんなに腕が上がらない子でも、“Hey!”と言えば許される曲だから。声出していこうぜ!」

そこで贈られた新曲「蜘蛛の糸」はパワーで押すスラッシーなメタルチューンで、苑の言葉通りサビでは全員で“Hey!”とシャウト。と同時にダークな色も仕込まれている曲だけに、如何なる感情が籠められているのか気になるところだ。より凶悪の度合いを増して二階席にまでフロアの熱気を届けた「Adult Children」、キャッチーな煌めきとテクニックがフュージョンした「IMPERIAL RIOT」と続けて、彼らの巧みなアンサンブルを堪能できたのがインディーズ時代からの代表曲「ANOMIE」。ザクザクと斬り込むAnzi(G)のギターは苑の歌と共にエモーショナルに叫び、タイトなビートを放つ悠は白く発光するネオンライトを振るオーディエンスに合わせて大きくスティックを振る。それを上と下から挟み込むように彩雨と燿(B)のフレーズが彩ると、そこに凄まじいパワーが漲って心と身体を躍らせるのだ。そして苑が“天国”という新たなるキーワードについて語り始める。

「天国に行くにはどうしたらいいんだろう?って考えたとき、自分の意識で悪いものも良いほうに変えていけば、最後は“幸せだった”と終われるんじゃないかと思えた。だから、みんなも摩天楼オペラのライブに来て悪いことも楽しく、前向きに切り替えてくれたら嬉しい。HPで「天国への鍵」をクリックして、ライブに来ると1曲目に「天国の扉」を聴けて……でも、ここでおしまいじゃない。ここから“天国のある場所”へと続いてゆくから」

さらにニューシングルを7月23日にリリースすること、コンセプトの最終形態である“天国のある場所”の最終日を10月18日の日比谷野外音楽堂に定めたことを告知すると、客席からは悲鳴のような大歓声が。続いて包容力豊かなバラード「Orb」の優しい温もりと、「喝采と激情のグロリア」の苑渾身のアカペラが場内を震わせて、天国への序曲となった今ツアーのフィナーレを感動的に飾る。


アンコールでは10分のみのオープニングアクトだった2008年の初出演等、彼らにとっては今日が最後となる渋谷AXに対する思い出を口々に語って、燿の発案で記念撮影をしたり、なんと彩雨からは京都コンピュータ学院と京都情報大学院大学の客員教授に就任したとの報告まで! 苑も「インディーズラストライブでココに立ったときは見えなかった後ろの奥まで今日は見える。私も摩天楼オペラも成長したね」と語り、その後「INDEPENDENT」「CAMEL」とステージをテンション高く走り回りながらも全くブレることない技巧プレイで、その成長を確認させた。最後は感動の合唱曲「GLORIA」を軽快に、これまでになく楽しく聴かせて、笑顔のうちにライブは終了。摩天楼オペラというバンドの旨味を改めて刻み付けたツアーを経て、天国への旅路がどのような道を辿ってゆくのか? まだまだ彼らの動向を見逃せそうにない。

取材・文●清水素子
撮影●寒川大輔


◆摩天楼オペラ オフィシャルサイト
◆摩天楼オペラ キングレコード レーベルサイト
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