【ライブレポート】ν[NEU]&wyse、世代を超えたコラボレート・ライブ

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ヴィジュアル系というシーンが誕生し、間もなく四半世紀の歳月が経とうとしている。"ヴィジュアル・シーン黎明期"を担ったX JAPANやLUNA SEAが今でも第一線で活動を続ければ、彼らの後に続いた黒夢も復活。同世代のL'Arc~en~Cielは、ジャンルの枠を超え、世界中の音楽ファンから支持される存在にまで成長してきた。その後、このシーンを活性化し続けてきたLa'cryma ChristiやPIERROT、SIAM SHADEなどが限定的ながらも復活を遂げ、原体験をしていない若い世代たちを含め、今のヴィジュアル・シーン全体を活性化してゆくための刺激を注入。すでにヴィジュアル系という枠を逸脱し、ラウド界で活動するDir en grayや、現在のシーンのトップを走るガゼットなど、海外にも活動の拠点を築いているバンドも着実に増えている。

◆ν[NEU]&wyse画像

誕生当初は、日本の音楽シーンから迫害、虐げられていたヴィジュアル系というジャンルは、結果、世の中の動きとは一線を画すことで、他にないオリジナリティを持ったスタイルを確立。それが現在の、日本が世界に誇る音楽文化になっていることは、みなさんもご存じだろう。余談として語るなら、今でもヴィジュアル系は、日本の音楽シーンからは痛い目で観られている。でも、それでいいんだと思う。マイノリティーがマジョリティーになる力というのは、そういうところから発揮されるものであるのだから。

1999年に産声をあげたwyseもまた、2001年にメジャー・デビュー。2000年代前半時期のヴィジュアル・シーンを第一線で活性化し続けてきたバンドである。wyseは、2005年に解散。2011年より再始動を行い、現在も精力的に活動している。

ν[NEU]は、まさに今のヴィジュアル系の第一線を牽引している若手注目株のバンド。同バンドのベースであるヒィロは、wyseのベーシストであるTAKUMAに多大な影響を受けてきた。

4月26日(土)にTSUTAYA O-WESTを舞台に、<wyse × ν[NEU]「2MAN」~60min×2~>と題されたイベントが開催になった。片やwyseは、ヴィジュアル系というシーンの中へ強烈な爪痕を残しつつ、今も刺激を与え続けている存在。方やν[NEU]は、今のヴィジュアル系好きな人たちに、これからのヴィジュアル・シーンの未来像を指し示しているバンド。いわゆる「世代を超えたバンドどうしが刺激しあうことで、新しいムーブメントを芽吹かせよう」というのが、今回のイベントの趣旨になっていた。

   ◆   ◆   ◆

▲wyse
▲ν[NEU]
イベントは、wyseとν[NEU]2バンドのメンバーが舞台上へ全員集合し、スタート。すでに華遊とHIROは腕を組み合ってのラブラブ(笑)状態。この日はまだ出演順が決まっていないこともあって、「出演順を決めようよ」と、両ヴォーカルが"じゃんけん"で対決。勝負の結果、wyseがトップバッターに。wyseは現在、サポート・ドラマーをToshi Nagaiが担当。「せっかくだから一緒にセッションしようよ」と選んだのが、Toshiが参加しているGLAYの「彼女のModern...」。その遊び心が素敵じゃない。

wyseのメンバーの演奏をベースに、月森とみつが歌を掛け合う形でセッションはスタート。他のν[NEU]のメンバーたちは、観客と同じよう手振りをしながらヴォーカルどうしのセッションを煽っていた。場内を埋め尽くした観客たちも「彼女のModern...」は身体に染み込んでいるようで、2人の歌の掛け合いや合唱に、腕を振り上げ熱狂の想いを返していた。

15年間の歴史も集約したwyseのライブ。途中、ν[NEU]のメンバーとのセッションも。

いきなりのセッション演奏から始まった、この日のイベント。ν[NEU]のメンバーが舞台から引き上げたところで、そのままwyseのライブに突入。「ノリ方なんか関係ない、好きに楽しんでいこうぜ!」。冒頭を飾ったのが、腹の奥底にズンズン音が響くワイルドな演奏が炸裂した、ハード&ロックンロール・ナンバーの「Plastic Monkey」。熱い演奏を通し、冒頭から、セッションで作りあげた熱へさらに高ぶった熱を重ねだした。

悲哀さを秘めながら。でも、込み上げる情熱的な感情のままに想いをぶつけた、歌謡風のメロディも印象深い「Vision」。身体突き刺すソリッドな音を通し、場内に冷徹な空気を満たしていった「Countless trigger」と、wyseの演奏はキリキリと攻めゆく表情で進んでいった。

「デビュー・アルバムに収録した曲になります」。そう語り演奏したのが、刹那な心模様たっぷりに唄いあげたミッド・ナンバー「3 years later,I」。哀愁味を持った歌が胸に響きながらも、演奏が熱を持っているぶん、身体は疼きを憶えていた。

「この辺であちらのリーダーを呼びたいと思います」。ここでゲストとして招き入れたのが、ν[NEU]のベーシストのヒィロ。ヒィロは、wyseの大ファン。彼は、「僕の学生時代の恋愛の想いがすべて詰まっているから、この曲を聞くとあの頃の悲しい経験を思いだしてしまう」という理由のもと、インディーズ時代の名曲「float」をセッション用に選曲。TAKUMAは、アコギとコーラスを担当。

切なさを哀愁味を抱いたメロウな「float」を、想い噛みしめるように唄う月森。ヒィロは黙々と。でも、憧れのメンバーらと一緒に音を奏でてゆく一瞬一瞬を大切な思い出に変えながら、演奏。こういう意外性を持ったセッションを味わえることこそ、2マン・イベントの醍醐味だ。演奏を終え去りゆくときのヒィロの満面の笑顔も、とても印象的だった。

続いて舞台上に呼び込まれたのが、ヴォーカルのみつとギターのタクミ。2人を迎えて演奏したのが、ν[NEU]の「starting over」。とても晴れやかで開放的な演奏が場内中に広がり出した。月森の歌声に爽やかさが見えれば、一緒に唄うことが本当に楽しいからこそ笑顔混じりに歌っていたみつ。タクミは、wyseのメンバーの気迫に負けないようにと、思いきりパワーをぶつけ演奏。晴れやかな楽曲に、よりパワー感を与えた凛々しきナンバーに昇華していったのも、セッションだからこそ生まれた魅力だ。

ライブも後半戦へ。「Air」を奏で、会場中に爽快な風を吹かせたwyse。身体をウキウキ弾ませずにはいれない楽曲のよう、場内中の人たちも、手を振りながら、はちきれんばかりの笑顔で楽しんでいた。

身体弾む心地好さを止めたくない、「終わらない夜のマーメイド」を通した、気持ち上がってゆく心地好さ。熱を持った演奏は、一気に駆けだした。開放的かつ晴れな表情を持った「To Shy」を、wyseは凛々しく攻めたてるように演奏。後半では、観客たちと一緒に合唱してゆく場面も。高ぶりだした熱は、もう下がるなんて不可能だ。

「飛ばしていこうぜー!」。荒ぶったロックンロール・サウンドが炸裂!wyse流煽りナンバー「Miss txxx」を通し、観客たちと感情と感情のぶつけ合いを展開。

「こういう出会いがあるから、音楽ってホント楽しいなと思う」と語ったTAKUMAの言葉ではないが、wyse自身が、新しい刺激に囲まれながら演奏してゆくことを思いきり楽しんでいたのも事実。最後に披露した、高ぶる感情を持って胸に突き刺さった「I believe」まで、ライブを通した気持ち一つに溶け合ってゆくのはもちろん。それ以上に、この瞬間をwyseのメンバー自身が思いきり忘れたくない時間として、熱狂と共に心に刻んでいた。

ハートフルな熱狂作りあげたν[NEU]のライブ。wyseのメンバーとのセッションのみならず、DEEP KISSも…。

キラキラとした輝き放つ壮麗な演奏響き渡る「カレイドスコープ」を唄い幕を開けた、ν[NEU]のライブ。身体を揺さぶるビートの効いた楽曲だけに、誰もが身体揺らしながらも。その麗しき歌世界に気持ち寄り添わせ、舞台上の5人の姿に見入っていた。

「みなさんに愛があふれますように」。演奏が飛び出すと同時に、会場中の人たちが一斉にタオルを振り出した。とてもロマンチックでハートフル。でも、走る演奏にノせ身体も一緒に心地好く弾んでゆく「The 25th Century Love」が飛び出した。大サビでは歌の掛け合いも登場。 優しさと愛に満ちあふれた楽曲を真正面から堂々とぶつけてゆく潔さこそ、ν[NEU]最大の持ち味だ。

会場中の人たちが両隣の人たちと手を組み、ゆったり左右に揺れだした。思いきり夢の世界へ誘ってゆくハートフルでメロディアスな「D's Wonderland」だ。なんて、ロックなメルヘンワールドを描き出してくれるバンドなんだ。無邪気に、無垢な気持ちで歌に寄り添っていける、その包み込む世界観を味わいたくて、みんなν[NEU]のステージに振れに来ているのだろう。

最初のMCを華遊が担当。彼は、wyseのメンバーを「ワイザー」と呼んでいたことも報告しておこう。

ここでみつが、wyseの月森とMORIを呼び入れた。このメンバーでセッションしたのが、澄み渡る透明感と美しさ。同時に、身体揺らすビートを携えたwyseの「無色の雪」。切れ味鋭いMORIのカッティングビートに乗せ、想いを込めながら、みつと月森がマイクを交わしあい唄いあげてゆく。月森がリードしながら、みつが月森の歌に寄り添っていく。その関係性に、互いの信頼関係も感じれた。

モダーンなトランスビートが流れ出した。場内中に♪YES NO×2♪の合唱が場響き渡った「YES≒NO」。間奏では、お馴染み華遊によるWAVEも登場。爽やかな"青の景色"広がる「スプラッシュ!」を奏で、場内を燦々とした太陽の下へとν[NEU]は連れ出した。曲によって、次々と目の前の景観を変えてゆく。それが、嬉しい彼らの持ち味だ。

「僕ら、2マンはよくやるんですけど。曲中でセッションするなんてなかなかないよね」「セッション中はズーッとメンバーさんの姿を見てました」と、wyseとのセッションに対しての喜びを、ヒィロは語っていた。みついわく「歌心を大切にしている」ところがwyseとν[NEU]の共通点とのこと。

思いきり照れてしまうほどキュートな振りも飛び出す「妄想接吻」では、ν[NEU]ファンのみならず、wyseファンたちも、しっかり熱狂妄想モードへ突入し、両手でハートを作りながら気持ちを一つに溶け合っていた。終盤では、真っ赤な口紅を唇に塗った華遊が、舞台上に現れた月森のほっぺにキス。とたんに月森が野獣に変貌。華遊を舞台上に寝転がせ、思いきりDEEP KISSを行っていたのも、この日ならではの嬉しいハプニング?

一転。演奏は、激しいギター・サウンド響き渡った「Another Blue」へ。アグレッシブなモードに変貌し、徹底して攻めの姿勢で満員の観客たちへ挑みかかってきたν[NEU]の面々。続く、ヘヴィファンキーな「Key of Life」でも、ν[NEU]は観客たちに熱い牙を向けていた。

シンフォニックハードな「LAB」の演奏が爆発。後半へ突入したν[NEU]は、徹底して攻めの姿勢を貫きながら、場内に熱狂の大きな渦を作り続けていった。華激なデジタルビートにのせ観客たちを恍惚の世界へと導いた、高揚デジロック・ナンバーの「New World」を通した絶頂の空間。最後に「心に光を与えられる曲」「everlasting light」を奏で、熱狂し火照った心や身体を、ν[NEU]は優しく優しく包み込んでいった。「届いてるかー!」。みつの叫んだそのひと言に、誰もが熱狂した超えと高揚した表情を返していた。そう、それかこの日の確かな答えだから。

ふたたび最後に嬉しいセッションが。最後に、演奏を終えたばかりのν[NEU]がwyseのメンバーを舞台上へ招き入れた。ふたたびここで、2バンドによるセッションを実施。wyseからは、MORIとHIROがギターも担当。月森に至っては、華遊にキスされた唇の痕を頬に残しながら登場。選んだ楽曲が、GLAYの「SOUL LOVE」。会場中の人たちが大きな手拍子をしながら、壮大かつ開放的な楽曲を満面の笑顔で受け止めていた。舞台上のメンバーたちも、冒頭とは違い、どこかリラックスした雰囲気でセッション。短い時間の中とはいえ、音を通し会話をしたことで、互いの関係も急接近。でも、それがコラボレート交えた2マン・ライブの醍醐味。またν[NEU]とwyseが手を組み何かをやらかしてくれるのか?楽しみにしていようじゃないか。

PHOTO: 藤原 悠里/TEXT:長澤智典

セッション
「彼女のModern...」(GLAY)

wyse
「Plastic Monkey」
「Vision」
「Countless trigger」
「3 years later,I」
「float」
「starting over」(ν[NEU])
「Air」
「終わらない夜のマーメイド」
「To Shy」
「Miss txxx」
「I believe」

ν[NEU]
「カレイドスコープ」
「The 25th Century Love」
「D's Wonderland」
「無色の雪」(wyse)
「YES≒NO」
「スプラッシュ!」
「妄想接吻」
「Another Blue」
「Key of Life」
「LAB」
「New World」
「everlasting light」

セッション
「SOUL LOVE」(GLAY)

TAKUMA(wyse)×ヒィロ(ν[NEU])対談

――ヒィロさん、もともとwyseの大ファンだったそうですね。

ヒィロ:中学生高校生の頃にメチャクチャ大好きで、リアルにファンでした。僕が初めて新宿の自主盤倶楽部まで買いに行った音源が、wyseさんの「LIME」の2ndプレスのデモテープ。それくらい大好きなバンドです。

TAKUMA:今回、紹介を受けてν[NEU]と一緒に演ることになったんだけど。メンバーにwyseの大ファンがいることは事前に聞いてたので、僕らも嬉しくて。年齢も、世代も違いますけど。ロックという想いで互いに繋がっていますし。セッションも含め、初めてのコラボレートでしたけど、刺激になりました。

ヒィロ:ホントに僕らも嬉しいです。僕が初めて買ったデモテープの中に入ってて。しかも僕がwyseさんの中で一番好きな「float」をセッションしたんですよ。僕がtwitter上で、曲に対する想いや思い出を書いたら、wyseのメンバーさんたちが、僕にその曲を弾かせてくれたんです。

TAKUMA:ホント、いい感じだったよ。僕は、側でアコギを弾いてたんですけど。聞いてて、すごく楽しかった。

――若手のバンドと一緒に演るって、どうでした?

TAKUMA:僕らも解散し、多少間が空いての再始動だったから、勢いのある若手と一緒に演ることが出来たのはすごく嬉しかったし。ぜんぜん違う個性がぶつかりあって。それがミックスされたのが、すごく楽しかった。ファンの人たちも思いきり楽しんでれば、お互いのバンドを初めて観た人たちも多かったようで、とても刺激的なライブでした。

ヒィロ:またぜひ一緒に何か……そんなこと、僕から言える立場では…でも、一緒に演りたいんです。

TAKUMA:こちらこそ、また一緒に何かやらかしましょうよ。

<wyse 15th Anniversary Live 2014 「the future begins today」>
2014.06.14(土)大阪MUSE
2014.06.15(日)名古屋E.L.L.

<wyse 15th Anniversary Live 2014「Each individual Color」>
~in the case of HIRO~
2014.07.26(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
~in the case of TAKUMA~
2014.08.23(土)HEAVEN'S ROCK さいたま新都心
~in the case of MORI~
2014.09.28(日)千葉LOOK
~in the case of 月森~
2014.10.25(土)HEAVEN'S ROCK熊谷

<TOSHI祭り!BUZZ☆DRUM~30th Anniversary & Birthday~Produced by GLAY>
2014年6月8日(日)
@渋谷公会堂
出演:Toshi Nagai/GLAY/米倉千尋/wyse/sfpr 他

<★5th Anniversary★ONEMAN TOUR 2014>
2014.7.06(日)渋谷REX(FC限定)
2014.7.07(月)渋谷TSUTAYA O-WEST(重大発表あり)
2014.7.12(土)神戸VARIT.
2014.7.13(日)広島NAMIKI JUNCTION
2014.7.18(金)岡山IMAGE
2014.7.20(日)大阪MUSE
2014.7.21(祝)名古屋ell.FITS ALL
2014.7.26(土)高崎CLUB FLEEZ
2014.7.27(日)新潟BLACK STAGE
2014.7.30(水)新横浜NEW SIDE BEACH!!
2014.7.31(木)滋賀U☆STONE
2014.8.02(土)熊本DRUM Be-9 V2
2014.8.03(日)福岡DRUM Be-1
2014.8.08(金)仙台MACANA
2014.8.10(日)長野CLUB JUNKBOX
2014.8.16(土)郡山#9
2014.8.17(日)HEAVEN'S ROCK 宇都宮
2014.8.23(土)京都MUSE
2014.8.24(日)金沢AZ
2014.8.30(土)HEAVEN'S ROCK さいたま新都心
2014.8.31(日)柏PALOOZA
2014.9.05(金)札幌KRAPS HALL
2014.9.06(土)札幌KRAPS HALL
2014.9.28(日)渋谷AiiA Theater Tokyo

◆wyseオフィシャルサイト
◆ν[NEU]オフィシャルサイト
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