【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、フルアルバム年間3枚発表の驚異「今回は雨がコンセプトのエレキギターによるインストを追究した」

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■雨にちなんだ物語を経て、最後には雨が上がる流れがアルバムにあるんです
■苦悩は辛いものだけど、それを知ることで人生も深いものになる

──ブックレットがアルバムの価値を一層高めていると思います。では、話を楽曲に戻しましょう。雨をテーマにした作品にふさわしく、翳りを帯びた曲が多い中、爽やかさを活かした「YELLOW BOOTS」のような曲も入っていますね。

AKIHIDE:この曲は、四苦が表す“生老病死”の“老”がテーマになっています。ブックレットを見てもらうと、子供が水たまりで遊んでいるのが分かると思います。それを大人が見て嫌な顔をしている。でも、嫌な顔をしている大人も、かつては子供だったわけで。その時その時で見える景色は大切にしないといけないという、生老病死の“老”と繋がっています。そこから、水たまりで遊んでいる子供を見守る優しい大人の目線を表した曲にしようと思った結果、こういう曲になりました。

──アルバムのいいアクセントになっています。リバースサウンドを使った「HUMAN MAZE」は、他曲とは趣の異なる幻想的な味わいが印象的です。

AKIHIDE:結構前にリフだけあったんです。『Lapis Lazuli』を作るにあたって、アコースティックオンリーの作品にするかどうかをまだ決めてないときに、この曲も録っていて。だからレコーディングは2年くらい前だけど、今回のアルバムにフィットする楽曲だったので入れることにしました。“HUMAN MAZE=人間迷路”というタイトルどおり、夢を抱いて都会に出てきた人が、いろんな人とぶつかって人間関係の難しさにハマッていくというドロドロとした雰囲気を表現しています。最後は気がふれてしまうということも最初からイメージしていて、そういうところからリバースサウンドは自然と頭の中で鳴っていました。

──アッパーなシャッフルチューンとチャイナテイストを融合させて独自の世界を構築している「BLUES & LEE」も楽しめました。

AKIHIDE:この曲のリフはもう10年以上前からあって、その時からチャイナ感を持っていましたね。当時から気に入っていたけど、なかなか活かす機会がなかったんです。でも、ソロをやることになったときに、インストなら使えるなと。で、曲の雰囲気から“ブルース・リー”の名前が浮かんできて、さらに“ブルース”という男の子と“リー”という女の子が痴話喧嘩しているというイメージが湧いてきたんです。ちょっとコミカルで、アルバムのいいフックになったなと思います。ライブも盛り上がりそうですし。

──ライブも楽しみです。アルバムを締め括るドラマチックな「RAINBOW ROAD」は、どういう風に構築していったのでしょう?

AKIHIDE:雨にちなんだ様々な物語を経て、最後には雨が上がっていくという流れがアルバムにあるんです。ラストナンバーとなる「RAINBOW ROAD」は、天国へ向かうときのお話ですね。なので、優しい感じがありつつ、人生を祝福して終わるような曲にしたいと思って。実際にささやいて、言葉を投げかけながら作っていったので、思い入れの深い1曲になりましたね。ブックレットの言葉を歌詞にしてオペラシンガーの方々に歌ってもらうことで、ゴスペル感も出すことができました。天国に帰っていく雰囲気をより表現できたんじゃないかなと思います。

──たしかに。それにアルバムを通して聴いて、雨が降るからこそ、雨が上がって虹が出たときの喜びを感じられることを改めて感じました。

AKIHIDE:そう。この曲のブックレットに描かれた虹は七色ではなくて、八色になっているんです。それぞれが“八苦”を持って天国に帰っていくというストーリー。苦悩や苦しみは辛いものだけど、それを知ることで人は成長しますし、人生も深いものになる。『RAIN STORY』は、そういうことを伝えたくて作った作品なので、「RAINBOW ROAD」を聴いた方が、雨が降ったからこそ感じられる雨上がりの新鮮な空気感や雨上がりの新鮮な街並みといったものを思い浮かべてくれるといいなと思っています。

──続いて、ギタープレイに関するより詳しい話を聞かせてください。ギターの聴きどころも満載で、たとえば「BLUE BIRD BALLAD」は、風味のよいクリーントーンパートとワウを絡めたホットなギターソロの対比が印象的です。

AKIHIDE:この曲は、最初のほうのパートはフェンダー製ストラトキャスターを使っていて、ギターソロからメインのギブソン製SGに変わっているんです。最初は全編SGで弾いて、ロックバラードみたいな感じだったんですけど、デモはストラトで録っていたんですね。スタッフとの話の中で、旅情感がデモとはちょっと変わったかもという話しになって。たしかにそうだなと思ったので、前半だけストラトで弾き直したんです。ギタリスト的には、メロディアスなインスト曲の途中でギターを替えるのはどうだろうという気持ちもありましたけど、そうすることでクリーントーンで柔らかく始まって、ギターソロで一気に情熱的になる。そして激しく終わるというストーリーが作れたので、弾き直したのは正解だったと思います。

──同感です。「BLUE BIRD BALLAD」に限らず、今回はシングルコイルピックアップの音色やクリーントーンを多用していますね。

AKIHIDE:ジャズを聴くと分かることですけど、柔らかい音だから出せるニュアンスというのがあるんですね。今回、僕がジャズの要素を採り入れたいと思ったのは、アルバムの表情が広がると思ったからです。やっぱり歌うように弾くとなると、いつものようにジャーッ!と歪んだ音だけではいけない。だから『RAIN STORY』という作品のために、シングルコイルの枯れた音やクリーントーンで、より表情を表現したかった。結果的に、今までにないくらいクリーントーンを入れましたね。イメージ通りのニュアンスを出すために、ピックを弦にあてる位置をいろいろ試したり、指で弾いてみたりもしました。その辺は『Lapis Lazuli』で勉強したことが活かせました。

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