【ライブレポート】石月努 with(K)NIGHtribe、白と黒のはざまで紡ぐメッセージ

ポスト

2012年9月、ソロアーティストとして再始動してから約1年半。驚異的なペースで作品をリリースしている石月努。4月1日に2枚同時リリースした『WHITE DISC【白盤】』『BLACK DISC【黒盤】』もタイトルが示すように、2枚の作品が対になっているという意欲作だ。また本作品から再始動以降、石月をサポートしてきたメンバー3人が“石月努 with(K)NIGHtribe”という名で正式にサポートチーム(バンド)となった。

◆石月努 with(K)NIGHtribe画像

その石月努 with(K)NIGHtribe名義としての初ライブが5月5日、6日の2日間、東京キネマ倶楽部にて行われた。1日目の5日が「白ノ夜」。2日目の6日が「黒ノ夜」と音源【白盤】、【黒盤】とリンクするというコンセプトとなっている。早速この“白”と“黒”の2daysライブをレポートしよう。

   ◆   ◆   ◆

5月5日「白ノ夜」

▲5月5日「白ノ夜」
定刻の17時。【白盤】に収録されているインストナンバー「白孔雀の湖」が会場に流れる。緩やかにフィルターが開いてゆくシンセサイザーが奏でるコードが不思議な浮遊感を醸し出す中、突然ステージが明転。ステージにギターの桜村眞、ドラムスのLEVIN、ベースのSato、そして石月努が白を基調としたスタイリングでステージに姿を表す。そしてオープニングSE「白孔雀の湖」のリフレインが突然カットアウトし、ほんの短い空白の後LEVINが4つのカウントを刻む。石月努 with(K)NIGHtribeの初ライブのスタートだ。1曲目はアルバム【白盤】のオープニングナンバーでもある「メロス」。疾走感の溢れる超ポジティブソング。サビで石月が紡ぎだすメロディーにハーモニーをつける桜村。アウトロのギター・ソロに行く直前「行くぞ!」とばかりに桜村がSatoにアイコンタクトする。ライブ初見参であるこの曲をプレイする4人に気負いはない。すでに(K)NIGHtribeは十二分にこの“白ノ夜”を楽しんでいるようだ。

間髪を入れず始まった「Parade」ではイントロのリフレイン“Rock'n'Roll it Alive Forever”を石月努 とオーディエンスが一体となってコールする。

続く「I.S.」は石月の解釈によるファンキーミュージック。リズムの基本は横揺れのファンクだが(K)NIGHtribeのロックなグルーヴと相まって、また新しいカタチを創造している。

ライティングが逆光となり、ステージの4人が深い影となる中、音源未発表曲「オーロラ」の艶やかなイントロが始まる。この視覚と聴覚のコントラストを活かした演出の妙が憎い。そして、艶やかなイントロから一転、Aメロでは桜村のアルペジオにのせて、言葉を噛み締めるように歌う石月。「情報の中の想像で僕等生きてる。現実の姿は全く違うものなのかも」。このリアルなメッセージにオーディエンスも一瞬息をのむ。

「白ノ夜にようこそ!」。白ノ夜の石月の第一声はこんなシンプルな言葉から始まった。そして少し間を置いて“石月努 with(K)NIGHtribeです”と今夜のライブがバンドとしての初ライブである事をオーディエンスに告げると会場からは大きな歓声があがる。

MCを挟んで、石月の体の一部といってもいい、優しいバラード「ありがとう。」「your song」の二曲を続けて披露。(K)NIGHtribeがサポールするアンサンブルは音源よりも、さらにシンプルで石月の紡ぎだす言葉がより際立って伝わってくる。

メンバー紹介に続いて、桜村の掻きむしるようなギターリフに導かれて【白盤】に収録されている「桜ノ蕾」をプレイ。“桜咲けばもう一度君に会える”と最後のサビでは石月とオーディエンスの声が重なり合って1つの塊となり会場にこだまする。陰と陽を合わせ持つ、デリケートなこの曲を4人はライブでも見事に体現してくれた。

続くパートでは「I BELIEVE」「青ノ翼」「SNIPER」と立て続けにジャンプナンバーを披露。このマゾヒズムなセットリストに石月の額に汗が滲む。石月は激しく煽りながらもオーディエンスに目線を合わせて、丁寧に言葉を紡いでゆく。

“再始動のきっかけになった曲です”という石月のMCに続いて演奏されたのは「365の奇跡」。“365の奇跡を君と共にみつけたいよ”と歌うメッセージは先の震災を憂いて再び音楽家として歩んでいく道を選んだ、石月の決意表明の作品だ。

「まだ、まだ、今日は終わらないぜ、みんなで白くなれますか! 白ノ夜いくぜ! もっと!」。【白盤】の2曲目に収録されている「SWEET PAIN」のギターリフがスタートする。石月の挑発に拳を突き上げて応えるオーディエンス。そのオーディエンスの熱がまたステージの4人にフィードバックする。そうして、個々の熱が会場中に連鎖し、ループを作ってゆく。アガりきったテンションはそう簡単には下がりはしない。石月のライブでのキラーチューンである「Shang-Hi-Baby」「LOVELESS」を畳み掛けるようにプレイし、一度この日の幕は閉じた。

熱いオーディエンスのリクエストに応えて再びステージに姿を表した4人。アンコール1曲目は「Re:BIRTH」。“恐れないで 迷わないで 言葉の数だけ無限に繋がっていく”というポジティブなメッセージはこの夜のオープニングナンバーである「メロス」とリンクするようなイメージ且つ“白ノ夜”を総括するようなチューンだ。

そしてオーラスは【黒盤】に収録の「ADDICT」。この完全無欠のロックナンバーでは石月、LEVIN、桜村、Satoの4人がキッズの頃から、体に染み付いているであろう8ビートをそのまま吐き出す。「白ノ夜」のラスト・ナンバーにあえて【黒盤】に収録されている「ADDICT」をチョイスすることにより、明日の「黒ノ夜」に含みを残しつつ、1日目の「白ノ夜」は幕を閉じた。

   ◆   ◆   ◆

5月6日 『黒ノ夜』

▲5月6日 『黒ノ夜』
昨晩の「白ノ夜」と対になるような演出で【黒盤】に収録されているインストナンバー「BLACK CAT」の速いパッセージのシーケンスフレーズと4つ打ちのキックが高揚感を煽る。黒を基調としたスタイリングでステージに姿を現した4人。ここまでの演出は1日目の「白ノ夜」とテレコになっている。

オープニングナンバーは【黒盤】の1曲目でもあった「FACES」。ドラムスLEVINの真骨頂である、大きなタイム感のビートにギターの桜村とベースのSatoのエッジの効いたリフが絡み合う。さらに石月にねっとりとしたボーカルが重なる。また、ステージに用意されたストロボライトがステージの4人をほんの一瞬映し出しては、また暗転する。聴覚と視覚がグルグルに刺激され、オーディエンスはトランス状態となる。

続く「GAME」では、幾分BPMが上がり、モニタースピーカーに足をかけた石月が挑発的に歌う。“黒ノ夜、真っ黒に染めよう!”という煽りと同時に【黒盤】に収録されている「FAME69」が始まる。イントロの重々しさから、一気に開けるサビ。ミドルのパートでは、ギターの桜村がエモーショナルなソロを聴かせるなど、コンパクトながらも、様々な表情を見せるこの曲。各パートに見せ所も多く、ライブ映えのするチューンであることを強く感じた。

石月は着ていた黒いジャケットを脱ぎ、額に滲んだ汗を拭った後、桜村が一呼吸おいてから「雨のち、君が咲く。」の妖しいギターリフを刻む。抑制されたメロディーに激しい求愛の言葉が絡むこの「雨のち、君が咲く。」。石月は言葉を噛み締める様に丁寧に歌う。

中盤、メランコリックな「Echo」、2013年8月にリリースされたアルバム『UNPROUD』に収録された希望の歌「ヒカリへ」、「DROP」とミディアムテンポの“聴かせる”ナンバーが続く。そして8曲目に用意されたのは4人が織りなすグルーヴをたっぷり堪能できる「MY WAY」。石月が吐き捨てるように“This is My way”と歌うその様は文句なくカッコイイ。

“暑い!”この日の石月のMCの第一声はこんな素の言葉だった。“昨日も来て頂いた方もいると思いますが、「黒ノ夜」の方がハードですね”。再び額の汗を拭いながら石月が笑う。

メンバー紹介を挟んでライブ後半は「RUSTY EMOTION」からスタート。どこか郷愁をさそう、不思議な魅力をもったナンバー。前半の荒々しく、攻めのモードからシフトチェンジして、オーディエンスも石月の歌に聴き入っている。

そして10曲目は昨晩のアンコールでもプレイされた「ADDICT」。昨晩は荒々しく且つ、エネルギッシュに感じたが、この日の「ADDICT」は昨晩よりもタイトな印象を受けた。筆者の勝手な思い込みもあるかもしれないが、セットリストによって同じ曲でも聞き手が受ける印象がまったく違うと実感する。あえて中盤に昨晩アンコールでプレイした「ADDICT」をもってきたのは策士石月努がセットリストによって、オーディエンスの反応の違いを試す実験だったのかもしれない(笑)。

そして「黒ノ夜」の宴もたけなわ。セットリストは屈指のハード・ドライブチューン“DANCE DANCE DANCE”に突入する。この曲の核となるLEVINが創造する攻撃的なビートに合わせて、左右に大きくステップを踏みながらプレイをするSatoのパフォーマンスが印象的だ。石月が朋友である桜村の肩に腕を回して “DANCE DANCE DANCE!!!”と共にシャウトする。この演出ではない“バンドが感”が微笑ましい。会場は一気にピークを迎える。

続く「Shang-Hi-Baby」「Re:BIRTH」と昨晩もプレイした石月努 with(K)NIGHtribeのスタンダードソングが続く。

そして本編最後は1日目の「白ノ夜」と同様にライブでの鉄板チューン「LOVELESS」だ。ステージ前方ギリギリまでせり出し“愛はきっと 隣の人にも感染していく”とオーディエンスに語りかけるように歌う石月。ステージに熱を残したまま、約1時間30分のステージを終え4人はステージを後にした。

そしてアンコールは【白盤】に収録されている「メロス」と「SWEET PAIN」。「メロス」のイントロがプレイされるやいなや、ステージが白く明転し「黒ノ夜」と「白ノ夜」は融け合って1つの夜となった。

鳴り止まない歓声に応えるかたちで、予定にないダブルアンコールは「365の奇跡」を披露し、この2daysのライブは完成したのだった。

「白ノ夜」「黒ノ夜」と題された2つの夜。ライブを観るまでは完全に“黒”と“白”にセパレートしたステージになると予想していたが、2日目の「黒ノ夜」のアンコールで“白”く明転したステージで【白盤】収録の「メロス」がプレイされたように、石月にとっての“白”と“黒”の住み分けは、ライブを組み立てていく過程でのきっかけであり、オーディエンスに対する問いかけだったようだ。その証拠となる石月の【白盤】【黒盤】リリース時のインタビューを最後に記しておこう。

「白か黒かなんて、見る立場によって変わるものですからね。今回、僕は白盤、黒盤と分けましたけれど、白盤に収録されている曲が本当に“白”で黒盤の曲が本当に“黒”なのかっていうところは聞いてくれる方に委ねたいなと思っているんです」。

そう、石月努は黒と白だけの世界の住人ではなく、無限段階グラデーションの価値観の中で生きているアナログ人間なのだ。

写真:青木早霞(PROGRESS-M Co.,Ltd)
TEXT:ぽっくん

<5月5日 白ノ夜@東京キネマ倶楽部>
S.E[白孔雀の湖]
1.メロス
2.Parade
3.I.S.
4.オーロラ
5.ありがとう。
6.YOUR SONG
7.桜ノ蕾
8.I BELIEVE
9.青ノ翼
10.SNIPER
11.365の奇跡
12.SWEET PAIN
13.Shang-Hi-Baby
14.LOVELESS
-ENCORE1-
En1.Re:BIRTH
En2.ADDICT

<5月6日 黒ノ夜@東京キネマ倶楽部>
S.E[BLACK CAT]
1.FACES - Fake Genaration -
2.GAME
3.FAME69
4.雨のち、君が咲く。
5.Echo
6.ヒカリへ
7.DROP
8.MY WAY
9.RUSTY EMOTION
10.ADDICT
11.DANCE DANCE DANCE
12.Shang-Hi-Baby
13.Re:BIRTH
14.LOVELESS
-ENCORE1-
En1.メロス
En2.SWEET PAIN
-W.ENCORE-
WEn1.365の奇跡
この記事をポスト

この記事の関連情報