【ライブレポート】NoGoD「俺たちの9年間は、お前たちのおかげで一つもムダじゃなかった」

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アンコールの最後、初期から歌い続けてきたセルフタイトル曲「ノーゴッド」を勇ましくブチ上げると、団長(Vo)はそう叫んだ。その眼下では人々の歓声と笑顔が渋谷AXのフロアを埋め尽くし、対バン形式とワンマン併せて21本に上った全国ツアーのゴールを祝福する。結成から9年――。春夏秋冬をテーマにした4曲を収めたコンセプト・ミニ・アルバム『四季彩』を3月に発表し、5月末の閉館間際に滑り込んだNoGoD初の渋谷AXワンマンは、この9年間の軌跡をフルボリュームかつバラエティ豊かに凝縮して、集まったオーディエンスと共に確固たる“NoGoDの生きた証”を創り上げてみせたのだった。

◆NoGoD~拡大画像~

拍手の中で幕が開くと、まずはNoGoD十八番のハードチューンを淀みないプレイで畳み掛け、激しさと切なさを秘めたドラマを描き出してオーディエンスの心を震わせる5人の姿が。「一つになろうぜ!」と団長が号令を掛けるまでもなく一体となって拳をあげるフロアに向かい、従来のキュートな女形から一転、華凛は1曲目「STAND UP!」が鳴るなり漢らしく迫り出して、Kyrie(G)は豪快にギターを回す。そこにメガネ姿のShinno(G)が並ぶと、統一感あるモノトーンの衣装のおかげか、まるで三兄弟のように映るのが微笑ましい。ハイパーに攻める定番曲「愚蓮」、ヘヴィにセンチメンタルな「憎愛アンチテーゼ」に続き、「愚かな王」ではK(Ds)が凄まじいビートを放って場内を席捲。イベントも含めて初めて立つという渋谷AXのステージを、見事にNoGoDのホームにしてみせる。

「平日なのにビックリ、こんなに人が来た! ちょっと引いたわ!」

ほぼ満員のフロアを眺めて、団長がツンデレ気味に感謝を述べると、さらにNoGoDの多彩なふり幅が披露されることに。会場一丸となって“we got the power!”と叫ぶハードロックな「The Power」から、その声のお返しとばかりにリズム隊の緻密なセッションが繋ぐファンクな「浮世ROCKS」、そして音の弾丸が吹き荒れる超王道ヘヴィ・メタル・チューン「Frontier」へ。高揚感満点のツインギターとメロディックなサビで感動を呼び、大作「Ⅳ‐他者/Philosophia」ではKyrieとKのセッションも交えながら、プログレッシヴな展開で魅了する。

驚いたのが中盤、NoGoD初の試みとしてKyrieとShinnoによるアコースティックコーナーが設けられていたことだ。「夢というものは、ただ存在するだけ。そこに向けて歩みだしたとき、その道が幸せなものであればいいなという想いを籠めて作った曲です」(Kyrie)と語って演奏されたのは、今ツアーが初披露となるインストゥルメンタル曲「夢の泡」。アコギを抱えて着席した二人が互いに見つめ合い、呼吸を合わせて紡ぐ優しいメロディは、まさに心を解く珠玉の調べだった。続く「箱庭」では団長も加わってKyrieのコーラスと美しいハーモニーを聴かせると、「アコースティックを優しく歌う白塗りのキャラがわからない!」と笑わせるなか華凛とKもステージに再度あがり、手拍子の中で『四季彩』収録曲「あの日の空は極彩で」を軽やかに贈る。爽やかなムードを引き継いで「アタリマエ」「球根」とポップなナンバーでNoGoDの浸透力高い歌謡性を証明して、後者では“ダメジャンプ”と曲終わりのキメ台詞で偉大な先人へのリスペクトまで。そこで「重大告知します。本日5月28日……僕の妹の誕生日です。ヒロミ!」と場内をズッコケさせるのも“らしい”が、それが魅力的に映るのもバンドに賭ける真摯な姿勢があればこそだ。

「HR/HMと言いつつポップやったり、一緒に踊ったりしてるけど、とにかく楽しい音楽をやりたいんです。ここまで幅広いセットリストを組んで、激しい曲から優しい曲まで、全部ひっくるめて“NoGoDです!”って言えるのは世界でウチらだけ! それを見せたくて曲数を多くとったし、自分でも、もっとNoGoDが好きになれたツアーでした」(団長)

真剣な面持ちでそう告げると、9月17日のニューアルバム発売と11月29日の品川ステラボールをファイナルとする全国ツアーを発表。そこから「今日のライブもあくまでスタートだからな!」と雪崩れ込んだ怒涛のクライマックスが、また凄まじかった。拳の海が一体感を生む「Carnival」、新たな未来を切り拓かんとする渾身ヴォーカルに奮い立つ「神風」、さらに激情露わなパフォーマンスに泣かされた「恒星」を経ての本編ラストは「啓発フラストレス」。詞を書いた団長いわく“フラストレーションとストレスが溜まる社会で、どうしたら強く生きていけるか?という自分の思想・理念を集約した”というメッセージソングである。

「俺たちに一番大事なものは今、お前たちが感じている気持ちだ。それがNoGoDを作って来た歴史だ。これからも俺たちの手を絶対放すなよ!」(団長)

そう前置いて叩きつけられた力強いプレイと歌声、そしてサビを大合唱するフロアを目の当たりにして、感動に胸が震えるのを止めることができなかった。NoGoDの強みは良質なラウド・ミュージックとハイクオリティな演奏力だけではない。そこに心の底からあふれ出したメッセージが乗って初めて真価を発揮するものであり、団長が語った通りNoGoDとは楽曲に触れたときに我々とメンバーとの間に生まれる想いそのもの、熱量そのものなのだ。

『四季彩』のリード曲「櫻」で始まったアンコールでは、まず櫻が散るがごとき儚さをアグレッシヴなサウンドで繊細に表現するという難業をやってのけると、各パートがメタリックに絡み合う「敬虔」で場内をカオスに! さらに「ノーゴッド」では“あなたは神を信じますか?”と問われたオーディエンスが一気にステージに詰め寄り、Kyrieと華凛も互いの愛器を交換してハシャいでみせる。曲終わりに「もう少しAXでライブしてみたかったです」と団長がボソリ呟いての記念撮影では、楽器隊の4人がフロアに下りて団長ひとりをステージにとり残す場面もあったが、これが“らしい”と笑顔で受け入れられるのも5人の強い絆の証だろう。


「14年間、俺たちバンドマンを支えてくれてありがとうございました!」と渋谷AXへの謝意を述べ、5人が退場しても“NoGoD!”コールは鳴りやまず。「俺たちを支えてくれる皆に祝福を!」と、予定外のダブルアンコールで贈られた「祝福の唄」で沸き起こった合唱は、間違いなくNoGoDの未来をも祝福するものだった。この日、発表されたアルバム&ツアーの前にも6月19日には氣志團との2マン、7月5・6日には“Japan Expo 2014”に招かれてフランス・パリで公演と、その活動幅は日増しに広がっている。来年の結成10周年に向け、さらに加速する彼らの進化を見逃してはならない。

取材・文●清水素子
撮影●Hidemi Otsuka

◆NoGod オフィシャルサイト
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