【インタビュー】笹木ヘンドリクス「この曲は僕の中では恥ずかしいぐらいの歌謡なんです」

2014.06.10 15:46

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■ロックバンドの中に歌謡の要素がたくさんあるのが好きなんです
■懐が深くて音楽に優しさが乗っかっていて、なおかつカッコいい

 ▲「星のかけら」初回限定盤
 ▲「星のかけら」通常盤

──インディーズ時代の曲を聴いてもわかるけれど、洋楽ロックが大好きなのはもちろんで、普通にJ-POPも聴いているだろうなという、ポップなメロディもいっぱいありますよね。

笹木:日本の歌謡が好きなんですよ。ザ・イエロー・モンキーとか、スピッツとか、ロックバンドの中に歌謡の要素がたくさんあるのも好きです。エレファントカシマシ、奥田民生さん、ウルフルズ、山下達郎さんもそうだと思うし、そのへんはずっと聴いていました。歌謡ならではの優しさというか、単純にロックだから攻撃的に歌うということではなくて、懐の深さを感じるというか、そういう方々の曲は好きです。それって、最近の人たちにはあまり感じないものなんですよ。

──それは歌詞の面で?

笹木:それもありますし、歌声のパワー感とか。懐が深くて、音楽に優しさが乗っかっていて、なおかつカッコいいという、それが日本の音楽ならではの、すごくいい土壌だと思うので。そこを掘り起こしてみたいというのは、ずっと思っていることでもあります。

──確かに、日本人のロックって、どこか優しい気がする。大雑把な言い方ですけど。

笹木:そうなんですよね。その優しさが、単純にきれいだとか、どうぞ感動してくださいとか、そういうものではなくて…アルデンテみたいな優しさがいいと思うんですよ。

──あははは、うまい! 芯がちゃんと残っている。

笹木:そう(笑)。日本人だからお米のほうがいいかな、芯の残ったお米とか(笑)。炊くのに失敗しちゃったみたいな、微妙な感じがいい味になっていると思うので。優しいけど、その奥にある淋しさは何だろう? とか。僕はもともと洋楽が好きで、できることなら外国でもやりたいと思っていたけど、やっぱり日本でやろうと思って、東京に出てきて気づき直したことが、それだったんです。J-POPとして音楽をやることは、17~18歳の頃は、ダサイことだと思っていたので。でもそこに気づき直したあとは、そんなこと全然思わなくなりました。むしろ、そのはがゆい感じというのは、「この感覚を、外人は一生知らずに過ごすんだろうな」とか。

──逆優越感だ(笑)。

笹木:洋楽よりもJ-POPのいいところは、たぶんそこだと思うので。日本語で歌うことはカッコ悪くないし、J-POPのフィールドで音楽をやることも、全然ダサくない。

──特にこの「星のかけら」は、その代表みたいな曲じゃないですか。インディーズ時代の曲にも、ここまで思いきりJ-POPというか、日本的な歌謡の要素を出した曲はなかったんじゃないかなと思うぐらい、ストレートな曲だなと。

笹木:正直、この曲はまだ弾き語りで歌っていた頃の、17~18歳の頃の視点で書いたものなので、今ここで出すのはどうかな? と思っていたんです。周りのスタッフさんが、「この曲はいろんな人に響くし、笹木くんのいいところがすごく出てる」と言ってくれたので、「なるほど」と思って。最近は、好きですね。

──最近は(笑)。でも作った時には…。

笹木:この曲は、ソロでデビューすることが決まりかけていた、17~18歳の頃にはあったんです。でもバンドがやりたくて、悩んだ末に断って、そのちょいあとぐらいにできた曲で。だから歌詞がうしろ向きで、サビの最後のところも、“どこか知らないところへ抜け出していきたい、誰にも言わないで、淋しさ抱えたまま”って歌っていたんですけど。

──ぜんぜん違いますね。

笹木:絶望しかなかったんですけど、それを書き直しました。みんな、もとの歌詞もいいと言ってくれたんですけど、やっぱり古いし、せっかくだから今の気持ちもちゃんと入れて形にしたいなと。

──たとえ傷ついてボロボロになってもかまわない、それでいい、もう逃げたりしない。そう歌っているところが、今の気持ちなんですね。

笹木:はい。

──なるほど。すごく、腑に落ちました。

笹木:バンドでやると決めてからは、アコギ1本で歌うことも、カッコいいことではないと思っていた時期があったんです。でも最近ラジオ番組とかで、アコギで歌うと、思った以上にたくさんの人が「いいね」と言ってくれるので。そこであらためて納得して、アコギもどんどんやっていこうと思って。…いや、面白いな。

──面白いですよ。だって「ヘンドリクスです」って言って、アコギをポロンとやって、J-POPを歌いだしたら、誰だこれ?って思いますよ。

笹木:面白いですよね(笑)。

──じゃあ「星のかけら」を引っ提げて、笹木ヘンドリクスとして世の中に出て行くことに、今は迷いはまったくない。

笹木:はい。もともと自分の中では、すごくいろんなものがごった返しているんですよ。ビートルズもジミヘンもそうだし、プリンスや、オアシス、ストロークスとか、ほかにもレディオヘッド、モグワイ、プロディジーとか、自分が好きでやりたい音楽はあって、披露してないデモはいっぱいあるんですけど。それはアルバムなのか、そういう音楽をまとめてやる時期を作るのか、わかんないですけど、そういったポップ以外の曲を出す時に、一発目に「星のかけら」があることで、「あれ?」と思ってもらうのも、面白いことだと思うので。

──笹木ヘンドリクスの引き出しにはまだまだ、様々な音楽性がつまっている。

笹木:はい。好きな音楽と、作りたい音楽が、まだまだいっぱいあるので。それが「星のかけら」のうしろに控えているということを、自分でちゃんと納得して出せるのがうれしいです。だから「みなさま、はじめまして」ですね。

──どんなふうに受けとめてほしいですか。

笹木:「星のかけら」は、僕の中では、恥ずかしいぐらいの歌謡なんですよ。それをいいと思ってもらえるのか、恥ずかしいと思われるのかは、出してみないとわからないです。今の主流ではない曲だと思うので。90年代前半とかなら、普通に聴けるのかもしれないと思うんですけどね。それが楽しみでもあり、音楽家としてはドキドキしているところもであります。

──どう受けとめられても、やり続けてください。音楽に選ばれた人間として。

笹木:はい。マジでこれがなかったら、何の仕事もできないので。日本で一番あぶれちゃう人だと思います(笑)。おじいちゃんになるまで、変わらずに、こつこつと音楽をやっていたいですね。

取材・文●宮本英夫


「星のかけら」
2014.06.11発売
初回限定盤:CD+DVD VIZL-665 \1,500+税
通常盤: VICL-36909 \1,000+税
CD
01.星のかけら
02.命の灰
03.星のかけら(Instrumental)
04.命の灰(Instrumental)
●初回限定盤DVD 収録内容
「星のかけら」Music Video
Making of “星のかけら”

<フリーライヴ+ジャケットサイン会>
6月14日(土)14:00スタート
タワーレコード渋谷店 1Fイベントスペース
[問]タワーレコード渋谷店 03-3496-3661
6月21日(土)13:00スタート
名古屋パルコ店 西館1Fイベントスペース
[問]タワーレコード名古屋パルコ店052-264-8545
6月21日(土)16:30集合 / 17:00スタート
タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
6月22日(日)15:00スタート
札幌・ミュージックショップ音楽処 店内イベントスペース
[問]札幌・ミュージックショップ音楽処 011-221-0106

<ライヴスケジュール>
6月13日(水)「和子の部屋 ~別館~」&7.30(水)「和子の部屋」出演
8月17日(日)「TREASURE05X 」@名古屋
6月15日(日)「SevenColorsPresents W杯を見たい!聞きたい!歌いたい!feat.笹木ヘンドリクス&FootballWeekly」
6月17日(火)「HANAMOGERA EXPERIENCE!!」 supported by 笹木企画@TSUTAYA O-nest

◆笹木ヘンドリクス オフィシャルサイト