【ライブレポート】エイジア、職人の堅実さにパワフルなグルーブを点火

ツイート

ニュー・アルバム『グラヴィタス~荘厳なる刻』を携え、新生エイジアが2012年9月以来となる来日公演を行った。

◆エイジア画像

▲ジョン・ウェットン
▲ジェフ・ダウンズ
▲カール・パーマー
▲サム・コールソン
東京公演は渋谷公会堂2デイズだ。再編以降初となる2007年以来過去4度にわたる来日公演でも必ずここでライブが行われており、エイジアにとっては相性のいいヴェニューと言える。今回のジャパン・ツアーに先駆けて英国内で2公演ほどウォームアップ・ギグが行われているが、実質的にはこのジャパン・ツアーが『グラヴィタス』ツアーの皮切りとなっていると言っていいだろう。

2013年1月、スティーヴ・ハウに代わって無名の若手ギタリスト、サム・コールソンが加入、2006年にオリジナル・メンバーで再編して以来約6年間にわたる活動にひとまず区切りをつけ、また新たなフェイズへと踏み出したエイジア。この新しいラインナップで制作されたニュー・アルバムを2014年3月にリリースしているが、ハウとはまた異なるテイストのコールソンのギターをフィーチャーし、ブリティッシュ・ロックの伝統美と威厳に満ちあふれたサウンドに仕上げられていたのが印象的だった。

これまでのステージではイントロでエルガー『エニグマ変奏曲』より「ニムロッド」が用いられていたが、このツアーからチャイコフスキーの「1812年」に替わっている。この荘厳な序曲に導かれて演奏されるのは「孤独のサヴァイヴァー」。エイジアのステージではこれまでコンサートのクライマックスで演奏されることが多かったキラー・チューンで、この曲をオープニングに持ってきたのは実に大胆と言わざるをえない。楽曲中盤にはコール&レスポンスも盛り込まれ、のっけから会場を熱狂させていく。ここからシームレスになだれ込むのは「この夢の果てまで」。『詠時感~時へのロマン』のみならず、エイジアのあらゆるレパートリーの中でも最もアグレッシヴなこの楽曲でオーディエンスをさらにヒート・アップさせる。前作『XXX~ロマンへの回帰』収録の「フェイス・オン・ザ・ブリッジ」、『詠時感~時へのロマン』収録の「タイム・アゲイン」と力強いナンバーを畳み掛けるように演奏して、5曲目にいよいよ新作のトップを飾る「ワルキューレ」が披露される。エイジアらしい壮大さとメロウネスが見事に溶け合ったサウンドで、コンサート前半のハイライトとなっていた。

続いてはジョン・ウェットンのソロ・ボーカルとジェフ・ダウンズのデュオによる「アイ・ノウ・ハウ・ユー・フィール(ミッドナイト・ミックス)」、4人の演奏ながらアコースティック・アレンジとなった「ヴォイス・オブ・アメリカ」、前半のウェットン&ダウンズによるデュオと後半の壮大なバンド・アンサンブルとのコントラストが見事なライブならではのアレンジの「偽りの微笑み」、『フェニックス』収録の「アン・エクストラオーディナリー・ライフ」と、叙情的なメロディ・ラインでポップな側面を見せる楽曲を聴かせる。そして演奏されたのが新作から選ばれたもうひとつのナンバーである表題曲「グラヴィタス」。やはり「ワルキューレ」同様力強さと繊細さが同居したエイジア一流の表現が息づいていると言えるだろう。

「流れのままに」のコーダをアレンジしたダウンズのソロを挟んで、エイジア流のロックンロールといえる「デイズ・ライク・ディーズ」、『アストラ』の冒頭を飾った「ゴー」、そして『アルファ』からのヒット・シングルとなった「ドント・クライ」と再びキラー・チューン連発でオーディエンスをノックアウトしていく。カール・パーマーのドラム・ソロから始まる怒濤の終盤は「時へのロマン」、「永遠の輝き」とスケールの大きな楽曲を連発し、アンコールの「ヒート・オブ・ザ・モーメント」まで息をもつかせない非常に高いテンションのパフォーマンスを見せつけてくれた。

先述したとおり、コールソンのプレイはハウのそれとはかなり異なるもので、よりオーセンティックなハード・ロック的テイストを身上とするものだった。ハウのように時にリズムを無視するように切れ込んでくる独創的なオブリガートや、あるいは突き抜けるようにトレブリーなトーンもないのだが、アーミングやタッピングなど、ハウがあまりしないプレイを随所に織り込みながら個性を発揮していた。また、要所で繰り出す豪快なパワー・コードや時にバンド・グルーヴを引っ張るようなリズム感のよさもあり、全体的なバンド・アンサンブルがいつになくエネルギッシュに聴こえたのは、ウェットン、ダウンズ、パーマー三者の好調さもさることながら、コールソンによるところが決して少なくないと感じられたのだがいかがだろうか。概して堅実で職人的なプレイに終始しているように見えつつもバンド全体をよりパワフルにブーストしていたという点で、コールソン加入の効果は計り知れないものがあったと見ていいだろう。新生エイジアの今後への期待も大いに高まる来日公演だったのは言うまでもない。

写真:中村功


<ASIA JAPAN TOUR 2014>
2014年6月20日(金)@渋谷公会堂
1.1812 Overture
2.SOLE SURVIVOR
3.WILDEST DREAMS
4.FACE ON THE BRIDGE
5.TIME AGAIN
6.VALKYRIE
7.I KNOW HOW YOU FEEL -Acoustic ver.-
8.VOICE OF AMERICA -Acoustic ver.-
9.THE SMILE HAS LEFT YOUR EYES -Acoustic ver.-
10.AN EXTRAORDINARY LIFE
11.GRAVITAS
12.KEYBOAD SOLO
13.DAYS LIKE THESE
14.GO
15.DON'T CRY
~DRUM SOLO
16.ONLY TIME WILL TELL
17.OPEN YOUR EYES
EN1.HEAT OF THE MOMENT

◆ワードレコーズ・ダイレクト
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス