【ライブレポート】KREVA「ラップの鬼になっていいですか?」圧巻のスーパープレイ

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2014年にソロ10周年を迎えたKREVA。彼が、ベスト盤『KX』リリースに合わせて、ソロ・デビュー記念日で、自身の38回目の誕生日でもある6月18日に大阪・ZEPP Nambaを皮切りにスタートさせた5年ぶりのスタンディング・ライブ<KREVA ライブハウスツアー 2014「K10」>が7月8、9日、Zepp Diver City Tokyo 2DAYSでファイナルを迎えた。

◆KREVA 画像

10周年のアニバーサリーライブ、ベスト盤発売後のツアーとなれば、きっと誰もがヒット曲、シングル曲連打というツアーをイメージしがちだろう。だが、このようなアニバーサリーツアーであってもチャレンジ精神を貫き通し、それをどうやって最高のエンタテインメントショーとして成り立たせていくのか。やっぱりKREVAはここでも戦いを挑んでいた。

KREVA10周年を間近で祝いたいという熱狂的なファンとともに、連日半端ない盛り上がりを見せてきた本ツアー。ファイナルは<K10>に合わせて10本目という粋な演出。各地のファンが熱いメッセージを書き込んだKREVA10周年お祝いフラッグが、まずは来場者をお出迎え。グッズ売り場に目をやると「K店」という看板を発見。K10からのKT、K点に続けてK店まで活用術があったとは! オープニング前にしてまんまとKREVAにやられる。

1階フロアはもちろん、2階席まで約2500人のファンに埋め尽くされたこの日。ステージを覆う黒い幕が左右に開くと、ものすごいスモークの中、3人(B,Ds、Key)のプレーヤー+1DJという“生半バンド”を従えたKREVAが、舞台中央でバックライトを一身に浴びながら姿を現す。この凛とした佇まい、まさに王者の風格! 一人で戦ってきたものだけが醸し出す“孤高”のカッコよさが彼にはある。<K10>ツアーのために用意した10色に彩られたド派手なセットアップを着込み、サングラス姿でオープニングの「トランキライザー」からKREVAが熱いメッセージをフロアに投げ込むと、フロアの男子からはたちまち熱いオイコールが沸き起こる。続く「挑め」は、グラサン外しからの上から目線の流し目、そこからの品格をまとったジェントリーな辞儀姿で女子ファンをメロメロに。

久々のライブハウスということで、とにかく前へと押し寄せるフロア。その状況をいち早く察知して即座に「俺はどこから見てもカッコいいから」とオーディエンスの逸る気持ちを余裕で落ち着かせ、スタンディングのマナーを促していくあたりは10年選手ならではの手際の良さ。「初めてのヤツも、いつも来てるヤツも誰一人置いていかないぞ」と挨拶した後は「このライブは<K10>、KREVAの10年、KTのK点、俺の『基準』見せてやるぜ!」と言い放って「基準」へ。ビートと真っ向から対峙しながら、マシンガンラップを武器に一人でそのなかを切り抜けていくスリルに、息が止まった。

まるで、相手ディフェンダーを次々にかわしてゴールまで決めちゃうドリブラーのスーパープレイを見ているかのよう。10年間に積み上げてきた個人のスーパープレイ集の後は、「ストロングスタイル」の“スタイール”で見せる限界スレスレのロングトーンや「成功」でのオーディエンスとの掛け合いで、この10年間に観客と一緒に作りあげてきたライブアクトを次々と披露し、オリジナル音源をあえて収録したベスト盤とライブバージョンの違いをまざまざと見せつける。

この後、ジャケットを脱いだKREVAからの「人間やめてもいいですか? 人間やめて“鬼”になって…ラップの鬼になっていいですか?」宣言後に始まったのは、このツアーならではの変形フォーメーション(1)「PROPS KREVA Brand Mix」だ。「ベスト・アルバムの曲を全部やるのはimpossible(あまりの発音のよさに観客が沸く!)。ラップはメロディがない」というころを逆手にとって彼が考え出したのは、「PROPS」のトラックに次々と他の曲のヴァースを放り込みひたすらラップをしまくって、なおかつそれが一つのストーリーとしてつながっていくという超絶ミラクルプレイ。「初めて来た人はここchance!」といって、「THE SHOW」「国民的行事」「I REP」「ひとりじゃないのよ」「Shock」とベスト盤にも収録されてる曲たちをリリックで見事につないでいって、ラップというものの面白さをハイスペックなパフォーマンスを使ってヒップホップ、KREVA初心者を置いてけぼりにすることなく超分かりやすく伝えていく。どこまで息が続くんだ? なんでここからあそこに? 鬼のようなラッププレイにファンも仰天!

そんなKREVAの音楽人生を1曲に凝縮した「BESHI」をはさみ、次に繰り出されたのは変形フォーメーション(2)。こちらは「ラップの鬼っていってるけど(お前らを)喰ったりしないから。ビートはくうけどね(笑)。初めて観る人は“あの人ずっとラップしてる…”ってひいちゃってるかもしれないけど、俺、めちゃめちゃセンチメンタルだから(笑)。ラップの次はそれを俺のDJ的な面白さで見せていく」といって「王者の休日」「ビコーズ~今夜はブギーバック~ビコーズ」「I Wanna Know You」というメロウな楽曲たちを生演奏しながら生ミックスしていく。これは、ラッパーであると同時に一流のトラックメーカーでもあるKREVAだからこそなせるワザ。最後にこれらの楽曲すべてが次々とつながっていったハイライトのパフォーマンスは目から鱗、まさに圧巻の一言! フロアからはとてつもなく大きな歓声が上がった。

KREVA初心者とコアファン、その両者が感じとるであろう感動ポイントを違うところに設定することによって、お互いを大満足させていったこの2つの変形フォーメーションに仕組まれたKREVAマジック。超マニアックなのにエンタテインメントしながらヒップホップをレクチャーしていくこのマジックこそ、この10年、アンダーグラウンドのカルチャーだったヒップホップをメジャーグラウンドで、知力をつぎ込んで本気でやってきたKREVAの生き様そのものだ。

その中でも「次はこの10年、ターニングポイントになった曲をお届けしてきます」といって、「この曲は歌詞をじっくり楽しんで」と「かも」を披露。続いて「俺の10年は戦いの10年。でも、この曲があればどんなアウェーの現場でも一つになれた」といって「Na Na Na」を。さらに「日本ででっかい出来事があったでしょ? そのときに俺は音楽から離れそうになったんだよね。でも、この曲を作って戻ってこられた」といって「KILA KILA」をそれぞれ丁寧に曲解説をしながら、大切に届けていった。

そして、ここからはライブも後半。「みんな、KANさんのライブにいったら『愛は勝つ』を聴きたいじゃない? 今回、俺は俺なりのストレートな選曲をしたつもり」と話し、その後、オーディエンスとのコール&レスポンスで場内をあたためた後、「OH YEAH」「イッサイガッサイ」「Have a nice day!」のサマーチューン連打で、観客はいっきにヒートアップ。

「心があったまったね。みんなに拍手!いいラストスパートがかかりました。でも、ここからはいつもと違う感じにしたい」と、大騒ぎするだけではない新たなKREVAのライブのエンディングをKREVA自ら提案。まずはインディーズで限定リリースされたソロ第1弾曲「希望の炎」をじっくりみんなの心に届けると、歌い終わった後フロアからは大きな拍手が贈られた。続く「アグレッシ部」はオーディエンスも主役。この日1番の大合唱が場内に響き渡る。そして、そのエネルギーを身体の奥までしみ込ませるように、最後はメジャーデビュー曲「音色」をしっかりと届けて、本編は幕を閉じた。

すかさずアンコールを求める「Dr.K(ドクター・ケー)」コールがわき起こり、再び舞台の黒幕が開くと、そこにはKREVAの横に盟友・三浦大知が! 始まったのはもちろんあの曲「全速力 feat.三浦大知」。眩しすぎる輝きを放つトラックと2人のパフォーマンスに引っぱられ、オーディエンスも凄まじいまでのエネルギッシュな盛り上がりを見せる。最新曲にもかかわらず、すでに最強のキラーチューンに成長している。

この日、初のゲスト出演に気持ちが和んだのか、本ツアー3回目のゲスト参加の三浦に対してKREVAが「大ちゃん、そろそろグループ名つけようぜ!“鹿と亀”(※「全速力feat.三浦大知」参照)とか(笑)」といって、いっきに場内の笑いを誘った。そして「今回近いところでみんなの顔を見られて、声を聞けて、やる気がでました。すぐに夏フェスとか908フェスがあるんで、この力を溜め込んで臨みます。ぜひ楽しみに来てくれたら嬉しいです。また“人気者”になれる気がしてきたんで(笑)、これからもよろしくお願いします。これが俺からの最後のメッセージ」と最新曲「Revolution」に込めた誓いを握りしめたマイクを通してきっちりと観客の胸に刻み込み、KREVAはステージを後にした。

この夏はa-nationをはじめとしたたくさんの夏フェスに参加し、さらにその後には<908FESTIVAL>も控えているKREVA。9月7、8日と2日間にわたって東京・日本武道館で開催される908FESTIVALは、1日目があの伝説を彷彿させる「完全一人武道館」、2日目のゲストには鈴木雅之、久保田利伸、三浦大知、AKLO、RHYMESTERの他になんと、あのKICK THE CAN CREWが出演する事も発表された。

まだまだ止まらないKREVA10周年。KREVAという名前は知っているけれども、まだ1度もライブは観たことがないという“ふわっと層”にいる方々! ぜひ、このチャンスにKREVAのライブに参加してみて欲しい。ヒップホップ、KREVA初心者も安心して! 絶対にKREVAが楽しませてくれるから。

取材・文◎東條祥恵

<KREVA ライブハウスツアー 2014 「K10」>
東京公演 2014年7月9日(水)セットリスト

M-01. トランキライザー
M-02. 挑め
M-03. 基準
M-04. ストロングスタイル
M-05. 成功
M-06. PROPS KREVA Brend Mix
M-07. BESHI
M-08. 王者の休日
M-09. ビコーズ~今夜はブギーバック~ビコーズ
M-10. I Wanna Know You
M-11. かも
M-12. Na Na Na
M-13. KILA KILA
M-14. OH YEAH
M-15. イッサイガッサイ
M-16. Have a nice day!
M-17. 希望の炎
M-18. アグレッシ部
M-19. 音色
EN-1. 全速力 feat.三浦大知
EN-2. Revolution

10th Anniversary Year
<908 FESTIVAL in OSAKA 2014>
2014年8月28日(木)大阪フェスティバルホール
チケット代:6,800円(in tax)
チケット一般発売日:7月19日(土)
お問合せ:キョードーインフォメーション 06-7732-8888(10:00~19:00 無休)

<908 FESTIVAL 2014>
公演日:2014年9月07日(日) 開場:17:00 開演:18:00
    2014年9月08日(月) 開場:17:30 開演:18:30
会 場:日本武道館
チケット代:7,908円(tax in)
※3歳以上チケット必要 ※高校生以下割引(キャッシュバック有り)
お問合せ:ディズクガレージ 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)
チケット一般発売日:8月3日(日)
【高校生以下割引(キャッシュバック)について】
通常チケットが必要な3歳から18歳までの方を対象に、500円のキャッシュバッグを行い ます。
公演日当日に年齢の確認できる身分証明書(中学生/高校生は学生証を、小学生以下は保険証など)を会場受付にて提示頂ければ、500 円をその場で返金致します。 この割引の受付は各公演日の入場時(開演前)のみとなり、
開演後及び他の方法では返金されませんのでご注意下さい。

◆チケット詳細&購入ページ
◆908 FESTIVAL 2014特設サイト
◆KREVAオフィシャルサイト
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