【インタビュー】摩天楼オペラ「“劇的ロック”っていうキーワードで新しいことに挑戦していきます」

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摩天楼オペラが7ヶ月ぶりのシングルとなる「隣に座る太陽」を7月23日にリリース。シンフォニック・メタルという自らの基軸に沿いつつ、洒脱なジャズ的ムードを備えて新たな扉を開いた本作は、同時に9月3日リリースのアルバム『AVALON』の先行シングルでもある。前作アルバム『喝采と激情のグロリア』で合唱を核に見事な壮大世界を描き出した彼らが掲げる、次なるキーワードは“劇的ロック”。その片鱗と、不満を希望へと転換するメッセージが、ここから窺えるだろう。

◆摩天楼オペラ~拡大画像~

■同じ景色でも気持ちを少し方向修正するだけで明るく見える
■それが思いつかない人に宛てたメッセージ的な意味合いもある


――新曲「隣に座る太陽」がリリースされますが、前作とはガラリと違うハードチューンになりましたね。

Anzi:前作「Orb」がバラードだったので、次はロックな疾走チューンがいいよねっていうのが、当たり前のようにメンバーの中ではあったんです。で、今回の「隣に座る太陽」のメロディとコード進行を苑がスタジオで披露してくれたとき、従来の摩天楼オペラっぽさはありつつ、今までに無かったジャジーな匂いがメロディやリズム感に感じられて、コレじゃないか?と。

苑:バンドとしてブレない主軸があるのはわかっているので、あまり同じものを作り続けたくはないんですよね。それでサビでは摩天楼オペラらしく、逆にAメロはセブンスコードを主体に従来とは違う色を出したんです。ここ最近、バンド自体が新しいアプローチに挑戦していこうという流れになっていて、そのキッカケになったのが“劇的ロック”っていうキーワードなんですよ。

――劇的ロック?

Anzi:2013年の“喝采と激情のグロリア”ツアーが終わった段階で、次はどうするか?っていう話をしたときに出てきたワードですね。その劇的ロックを体現するために、固定概念に囚われず自由にアレンジしようと。裏を返せば、自由にやっても最終的にはウチらっぽく、カッコいいものになるっていう自信が今は持てているんです。

燿:自由なアレンジの一環として、今回の制作でも「初期衝動を盛り込もう」という話になったんですよ。摩天楼オペラとしてバランスを取るために、これまで抑えていた部分も思い切って出してみようと。僕自身、思いついたままベースラインを作って裏メロっぽいものを入れてみたり、結果、各パートがすごく主張しているのに上手く混ざり合っている仕上がりになって、自分のバンドながら「凄いな!」と思いました。

彩雨:僕の場合、普段だったら厚みを出して大きく上から包むようなアプローチをするところ、サビ中でも細かいフレーズで常に動き続けていたり。最近はどこかに置き忘れていたゴチャゴチャ感を、引っ張り出してきた感じですね。

――洗練されたサウンドを目指してきた摩天楼オペラですが、それが達成された今だからこそ、洗練の対極にある衝動や混沌を盛り込んでも成立するということでしょうね。

苑:そうですね。マスタリングでも低音を削って、各パートが何をやっているかをハッキリ聴かせることに専念したので、みんなの音が中心に集まってきているんです。そうなると普通はボーカルがいろんな音に食われて聴こえにくくなるんですけど、それもボーカルをグッと前面に押し出すことで問題を解消して。そのへんも前の音源と聴き比べると如実に違うと思います。

悠:初期衝動という点で言うと、僕は正直ちょっとしか意識してなかったんですけど、その“ちょっと”がスゲぇ難しくて! 意外と曲が速いんですよ。218bpmというテンポに、最近の自分ならやらないであろう16分のフィルを詰め込んでいて、初期衝動っていうワードが無かったら恐らく8分音符のフィルにしていただろうところ、ちょっと自分をイジめましたね。

――リズム的にも今までに無かったアプローチですから、そういう意味でも難しかったのでは?

悠:そうですね。シンコペーションのリズムは最近あまり無かったし、ここまでシンコペする曲は自分的にも叩いたことないんじゃないかな。だからAメロやサビは曲が呼ぶままで、そのぶんBメロでは遊んでみました!

Anzi:僕は今までも好きなように作ってきたので、特に初期衝動を意識したり、新しいチャレンジをする必要はなかったですね。ただ、コードをなぞった上でのリフメイクをした結果、やっぱり自分ではあまり思いつかないリフになったし、ハードロックの音はしていても響き的にはオシャレっていう、この独特のサウンド感は気に入ってます。

――らしさと新しさの融合に“お、やってくれたな”という感はあります。多彩な要素が詰め込まれたサウンドと呼応してか、歌詞のほうも一種難解で、まず「隣に座る太陽」の“太陽”とは、いったい何の象徴なんでしょう?

苑:希望です。隣には常に希望がいるのに、それに気づいていないよっていう意味ですね。これ、確かツアー中のホテルでしこたま飲んでるときに書いたんですけど、そのときの心境が、きっとそういう感じだったんです。なんで世の中には暗いニュースばかりなんだろう?っていう不満が溜まっていて、そんな自分の気持ちを前向きに持っていこうと書いた歌詞じゃないかな。同じ景色でも自分の気持ちを少し方向修正するだけで明るく見えたり、気も楽になるじゃないですか。それが思いつかない人に宛てたメッセージ的な意味合いもある。

――世の中への不満を訴えているように聴こえて、実はすごくポジティブな曲なんですね。“不満があるってことは希望があるっていうことだと思う。どうしたいかが自分でわかってるんだから。”というキャッチフレーズ通り、つまりは隣にある希望に手を伸ばせと。

苑:そうです。静粛だとか裁判官だとか、あえて固い言葉を使っているのも、ガチガチに固められている世界を表したかったからなんです。そうやって他人に作られた世界で息苦しさを感じながら、ただ頷いて座っていたくはない。で、9月にリリースするアルバム『AVALON』に、自分のやりたいことを目指すのに“太陽を目指す”と書いた曲があったところから、希望を太陽に例えたんです。

彩雨:とはいえ、みんながみんな、こんなに強くはなれないですよ。この現代社会、なかなか生きていくのは大変ですよね。

――だからこそ歌って励ます曲が必要なんでしょうね。

Anzi:まぁ、僕はこの歌詞が目指してる通りの人間ですけどね。不満や鬱憤は溜め込まずに“俺、最高!”になっちゃってるタイプ。

苑:……凄いよ! この歌詞で言えば、すでに“地球が味方”状態だもんね。

悠:僕は1Aの“好きなことだけしたいだけなのさ おはようで乾杯したいだけ”っていう詞が好き。キャッチーで、もう、苑という人間をそのまま表してるな!と。普通は“おはようで乾杯”なんてしないじゃないですか? でも、彼はしてしまうし、ロックボーカリストはそれくらいでいいんですよ。運転は僕がするんで!

燿:ちょっと待って、今日は俺が運転したじゃん! 二日酔いだから替わってくれって言ってきたくせに。(一同笑)

悠:そんな日もある! でも、こうやって素直に自分を出せる歌詞が入れられるようになって、良かったなとは思いますね。結成当初だったら絶対できなかっただろうし、表現が広がった。

燿:このタイトルと歌詞、僕はすごく好きなんですよ。勢いもあるし、今のバンドの状態でもあるのかな?って勝手に深読みしたり。バンド活動をする中ではいろんな夢や希望もあるけれど、それってただ続けるだけ……ただ座っているだけでは叶えられないものですよね。やっぱりいろんなことを考えて、手を伸ばさなきゃいけない。そういう意味でも今の摩天楼オペラが出すシングルに相応しいと思います。

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