【インタビュー】the brilliant green、セルフカバーベスト発表「ブレな過ぎだろオレ、みたいな」

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the brilliant green、再び。4年ぶりの活動再開となるリリース第1弾は自身のヒット曲の数々をセルフカバーによって新録したベストアルバムだ。大ヒット曲「There will be love there~愛のある場所~」をはじめ、「冷たい花」「そのスピードで」「Hello Another Way –それぞれの場所–」ほか、デビューシングル「Bye Bye Mr.Mug」など収録11曲のすべてにリアレンジを施したもの。そのサウンドは、アルバムタイトルが示すとおり“60's”がテーマとなっている。

◆「A Littele World」ミュージックビデオ

アコースティックを基調としたライブ感のあるサウンドは生々しく、60'sならではのフレイバーが散りばめられたアレンジに思わずニヤリとさせられる。楽曲のアレンジを手掛けた奥田俊作のこだわりはレコーディング機材を含めた細部にまでおよんでいて、実に深い。また、音数の少ない楽曲構築が結果、川瀬智子のボーカリストとしての魅力をより浮き彫りにした。BARKSはこのアルバムに凝縮されたサウンドマジックを解き明かすべく、川瀬智子にロングインタビューを敢行。『THE SWINGIN’ SIXTIES』サウンド構築法、そして、「声が主役って感じで嬉しい」と語る同アルバムから、川瀬のボーカルスタイルに焦点を当てて訊いた。

■10何年ぶりに歌う曲ばかりなんですけど、特に違和感もなく
■歌詞に気恥ずかしさもないし、このブランクはなんだったのかって

──セルフカバーベストアルバム『THE SWINGIN' SIXTIES』が7月23日に発売されますが、まずリリースの経緯からお話いただけますか?

川瀬:the brilliant greenは2013年、デビュー15周年を迎えたんですね。このタイミングで、自分のソロも含めた3つのプロジェクトのアルバムを3枚出す予定だったんです。一番最初にTommy february6、次にTommy heavenly6、最後にthe brilliant greenという順番で。まず、Tommy february6のシングルを2月にリリースして、3月にアルバムをリリースする予定だったのが、1年にアルバム3枚は想像以上にしんどいなぁ……と(笑)。結局、Tommy february6のアルバムリリースは6月になったんです。その後、10月中にHALLOWEENアルバムを出したかったんですけど、間に合いそうになくて、それも11月末になって。

──波乱含みの15周年でしたね(笑)。

川瀬:ははは(笑)。計画が達成出来なかったことでテンションが下がりきってしまって。だって、2枚目のTommy heavenly6が11月末リリースになった時点で、年内にthe brilliant greenのリリースは無理じゃん……みたいになって。だから一度仕切り直すことになったんです。オリジナルアルバムを作る前にもう1枚、the brilliant greenのセルフカバーベストみたいなものを作ったらどうかと、それもアンプラグドっぽいイメージのものでとレコード会社のスタッフからご提案いただきまして。その後にオリジナルアルバムを出すほうが世界観が伝わりやすいんじゃないか?と。でも、私は最初、セルフカバーアルバムだけは絶対に嫌だと言っていたんです。

──えっ、なぜですか?

川瀬:絶対に昔のオリジナルと比べられるでしょ。それにオリジナルのほうがいいと言われるに決まってると思ったから。当時はまだまだCDバブルだったので、制作費やプロモーションも桁違いで。自分自身も苦手なこともいっぱい努力して、毎日余裕がなくて、泣いて頑張ってきた思い出が詰まってるんです。その宝物はもう開けたくないっていうか、当時の形がベストだからもう触りたくなかった。数十万枚も数百万枚もヒットさせることができた楽曲達なので、さらっとリリースしちゃってチープな印象になることも怖いし、絶対に避けたいという気持ちがあったので、なんとかやめれないかなという話し合いを何度もしました。

──サウンド的な面での葛藤も大きかったんですね。

川瀬:そうですね。the brilliant greenのデビュー当時はデジタルレコーディングが主流になる前で。スタジオの卓とかの状態も、まだぎりぎり良い時代だったんですよ。当時あったスタジオも今はなくなっていたり、あっても制作費の面で当時と同じように使うことは出来ない時代だから。それで、スタジオがクローズするタイミングに仕方なく1970年代初頭のオールド・ニーブ卓を買い取らせてもらって、うちのスタジオに入れているんです。だからthe brilliant greenに関しては今もテープを回して、全部アナログで頑張って録っているんですね。もちろん採算度外視です。やっぱり当時の音作りからかけ離れたくないので、努力はしていきたい。特に今回は音数が少ないアレンジなので、パソコン1台で気軽に録ってしまうと、聴いてても何も感じないカスカスな雰囲気にしかならないんです。同じアレンジでも、聴いてて飽きない音の力ってあると思うんですよね。ブリグリはそこに、絶対的ににこだわらなくちゃいけないような気がしてて。ただ、やっぱり卓の状態もどんどん変わってくるし、不安定。メンテナンスも異常に大変。メンテナンスをしてあげても不安定。締め切りに追われながらも作業が進められなかったり、気が狂いそうになりながら作ってたんですよ(笑)。

──そんな状況でも、制作することにしたのは?

川瀬:さっき言ったように、最初はなるべくやらなくていい方向に持っていくために、すごく話し合いをしたんですよ(笑)。ただ、オリジナルアルバムのリリースをやめるわけではないし、さらにもう1枚作れませんか?っていう良い話なので、気が進まないとはいえ、その部分はすごく嬉しかったんです。それとオリジナルアルバムをいきなりリリースするよりも、過去の代表曲をリアレンジすることでがっかりする人もいるだろうけど、改めて思い出してもらったり、知ってもらったりすることが、オリジナルアルバムを聴いてもらえるきっかけを作ると言われて、納得できました。

──セルフカバーアルバムのリリースを喜ぶ人は多いでしょうし、決断されて良かったです。

川瀬:やると決めてからも、いろいろ大変でしたけどね。ただ、歌い始めたら楽しくなりました。the brilliant greenは基本的にライブをしないので、もう10何年ぶりに歌う曲ばかりなんですけど、特に違和感もなく(笑)。普通にさらっと歌えたという。歌詞に関しても、別に気恥ずかしさもないし。このブランクはなんだったのかって。“ブレな過ぎだろ。というか成長してないの?オレ”みたいな(笑)。

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