【インタビュー】KIRINJI「ファンの人たちに向けての挨拶をこのタイミングでやるべきだなと思って作りました」

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KIRINJIサーガ第二章、いよいよ開幕。兄弟時代を経て6人組バンド編成へと進化をとげた新生KIRINJIの“ファースト”アルバム『11』は、堀込高樹の生み出す上質なポップでセンチメンタルでユーモラスな世界観をベースに、全員がボーカルを取りアレンジに参加するスタイルを取ることで、耳に届く印象は新人バンドのごとくフレッシュだ。今回はメンバーから堀込高樹、田村玄一、千ヶ崎学、弓木英梨乃の4人に、和気あいあいでありながら刺激にあふれた音作りの内幕を語ってもらおう。

◆KIRINJI~拡大画像~

堀込高樹(vo / gt)
田村玄一(pedal steel /steel pan/ gt /vo)
楠均(dr /per / vo)
千ヶ崎学(bass /syn/ vo)
コトリンゴ(pf / key / vo)
弓木英梨乃(gt / vl / vo)

■新しいバンドだという意気込みもあったので
■感傷的な曲は書く気になれなかったですね


 ▲『11』[初回限定盤]
 ▲『11』[通常盤]
──初々しいですねぇ。

堀込高樹(以下、堀込):そうですね(笑)。

──キャリアの長い人たちをつかまえて、何なんですけど(笑)。何でしょうこのフレッシュさは。

堀込:いろいろ、刷新しましたからね。あとやっぱり、若い人が入ったのは大きいです。

──はい。この人(弓木英梨乃)が。

堀込:コトリさん(コトリンゴ)もそうですけど。同じような年頃で気心も知れてという人ばかりだと、あんまりフレッシュな感じにはならなかったでしょうね。田村さん、楠(均)さん、千ヶ崎くんに関しては、長いこと一緒にやっていただいてるので、非常に安心してお任せできるんですけど。意外な展開というものを求めると、弓木さんやコトリンゴさんのように、音楽的な背景が我々とは若干違う、なおかつ性別も世代も違う人が参加してくれると、フレッシュな感じになりますよね。

──ですね。すごくいいムードを感じます。

田村玄一(以下、田村):基本なごやかですよ。

千ヶ崎学(以下、千ヶ崎):和気あいあいです。

田村:女性がふたりいるということもあるし、それによって高樹くんも、かなり優しい感じになっている。

堀込:はははは。

田村:兄弟でやってた時は、そこまで優しくはなかったです(笑)。言いたいことはきっちり言うし。それは今でもそうですけど、もっとピリッとしていたというか、そこはだいぶ変わりましたね。少し負担が減ったからかな。

堀込:まぁそれは…自分の曲に関して言うと、前はけっこうなところまで作りこんで、みなさんにお渡しして。細かいところまでリクエストしてたんですけど、こういうふうにバンドという形式になった以上、各メンバーの裁量に任せないと意味がないですから。

──はい。なるほど。

堀込:そういう時に、弓木さんやコトリさんのような、違う音楽的言語を持った人がいると、「あ、そういう方向に行くんだ」ということが起こるわけです。田村さんはもともと自由にやる人ですけど(笑)、そこはそう弾くんだ、というものもあるし、いろんなものの兼ね合いで面白くなるということを、バンドを組んでからすごい実感してます。

──高樹さんにとっても、初めてのバンド活動みたいな感覚なんですかね。

堀込:かもしれない。ライブアレンジする時にそういう傾向はありましたけど、それをレコーディングに持ち込んだのは今回が初めてかもしれないです。キャリアの中で。

──弓木さん。このバンドが持ってるバンド感、どういう感じですか。

弓木:とにかく楽しいです。私はバンドをやったことがなくて、初めてのバンドなので、バンド感がどういうものかもわからないんですけど。でも「これがバンドなんだ。バンドって楽しいな」と思わせてもらってるので、バンドなんだなと思います(笑)。

──バンドという単語がものすごくいっぱい出ました(笑)。楽しいですよね。

弓木:歳も離れてるし、経験も違うのに、そうやって思わせてくれる環境でやらせてもらえてるのがすごく幸せだなと思います。

──高樹さん。アルバムの曲は、いつ頃から作り始めていたんですか。

堀込:2013年の8月に<ワールドハピネス>に出ることになって、そこに向けて新曲を2曲ぐらい書いたんですけど、年末のワンマンに向けてもっといっぱい書こうと思って、6~7曲ぐらい書いたのかな。で、年明けに残りの曲を書いたので、なんだかんだ、10か月ぐらいはかかってますね。

──躍動感のある曲、多いですよね。

堀込:ふたりでやっていたキリンジのツアーが終わって、そこであまり休まなかったんですよ。体があったまっているうちに次に取りかかれたことと、新しいバンドだという意気込みもあったので、感傷的な曲は書く気になれなかったですね。必要以上に凝った曲もあまりやろうとは思わなくて、バンドでやって映える曲を考えていたし、ワンアイディアでいいものが出たらそれを広げるという。たとえば「雲呑(ワンタン)ガール」「ONNA DARAKE!」とかは、直感でひらめいたものを広げていくという作り方になってます。

──わかります。骨格がシンプルなので。

堀込:今までだったら、もうちょっと手の込んだ転調がいっぱいあるとか、構成が山あり谷ありとか、そういうものになったかもしれないけど。バンドでやると、そういう曲は自然と山あり谷ありになるんですよね。

──おお。そういうものなんですね。

堀込:プレーのいい感じとか、音色のいい感じとか、そういうものがあると、ワンアイディアでもちゃんと最後まで聴ける。それは実感しましたね。とにかく僕の気持ちが昂ぶってたから、自然と上向きな感じの曲調が多くなったんだと思います。

──順番で言うと、メンバーのもとには、まずデモが送られてくるわけですか。

千ヶ崎:はい。デモの感じが変わったような気はしましたね。前は細かいバランスまで高樹さんが計算して、バランスをとられたデモが送られてきてたので。ここはフレーズを変えたらまずいな、というものが多かったんですけど、ここ数年徐々に減ってきていて、バンドになって明らかに、バランスはみんなで取りましょうというメッセージが感じ取れるものに変化してると思います。

──なるほど。

千ヶ崎:あとはあんまりあれこれ考えずに、みんなで音を出していけば、自然とどこかに落ち着くんじゃないか?と思いながら、2013年の夏ごろはやってました。

──田村さんの印象は?

田村:うん、「fugitive」みたいな曲は歌詞が斬新だなとか、「進水式」は映像が浮かぶなとか、面白がってました。今回はビジュアル的に想像しやすいというか、わかりやすい曲が多いなと思いますね。「雲呑ガール」もそうだし。

──1曲ごとに全然ちがいますよね。せっかくなので、それぞれのお気に入り曲、聞いていいですか。

千ヶ崎:どれも好きなんですが、「心晴れ晴れ」かなぁ。歌詞が好きです。この曲、コトリちゃんがストリングスや管楽器のアレンジをしてるんですよ。ベースも、エレキベースとシンセベースをユニゾンで重ねてみたり、普段はやらないことを試せたので、新しいKIRINJIの面白さがいろいろ出てるんじゃないかなと思いますね。

──田村さんは?

田村:ペダル・スティールを一番はめを外して弾いてるのは、「シーサイド・シークェンス~人喰いマーメイドとの死闘篇」。サブタイトルも含めて、馬鹿馬鹿しくて気に入ってます(笑)。これはけっこう、じわじわ好きですね。

──わかります(笑)。じわじわ来ますよねこの曲。

田村:「雲呑ガール」の歌詞も、ちょっと馬鹿馬鹿しい感じのものをカッコよくやってるんだけど、とことん馬鹿馬鹿しいのはやっぱりこっちだろうな(笑)。歌も含めて。

千ヶ崎:エンジニアの柏井さんに、「リクエストがあったら事前に言ってください」と言われた時に、どの曲もお任せしますと言ったんですけど、「シーサイド・シークェンス~人喰いマーメイドとの死闘篇」だけはなぜか注文したんですよ。ほかのは普通にきちんと弾いてるんですけど、これは三味線のバチで叩くみたいにピッキングで弾いてるんです。あんまりていねいにミックスされるとそのニュアンスがなくなっちゃうんで、「そこをできるだけ残してください」って唯一伝えた曲ですね。そういえば。

──アルバムの中の、裏番みたいな曲ですかね(笑)。これは知る人ぞ知る、10年以上前にシングルのカップリングで出ていた曲のリメイクですけど、いつか蘇らせたかったんですか。

堀込:いや、別に(笑)。2013年のワンマンの時に、スタッフが“最近やってない曲”のリストを挙げてきた中に入ってて、確かにやってないなと。聴き返してみて、面白いけどちょっと変えようと思って、ギターのリフを作り直したら、サーフィンぽいようなぽくないような、よりおかしな曲になったかなと。弓木さんも一生懸命弾いてくれたし。

弓木:あ、はい。

堀込:まぁこの曲で、そんなに話を引っ張りたくないんですけど(笑)。

千ヶ崎:これが推し曲だと思われたら困る(笑)。

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