【ライヴレポート】MUCC、BUCK-TICKを迎えた<ARMAGEDDON>で「自分たちの原点を忘れない」

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MUCCが、2014年9月23日の国立代々木競技場第一体育館ファイナル公演を含め、足掛け7ヵ月間、全56本におよぶロングスケールのライヴプロジェクト『SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争-』を開催中だ。8月からは、毎公演ごとにビッグネームなゲストを迎えたツーマンツアー<Episode 6.「ARMAGEDON」>へと歩みを進めている。

◆MUCC×BUCK-TICK 拡大画像

“何故、そこまで過酷な道を選ぶのか”と、想像を巡らせることはさほど難しいことではない。キャリア15年以上を誇りながらも、現状に満足せず、貪欲に成長を目指すMUCCならではと、長年彼らを見守り続けてきたファンならば誰もが納得する道程なのである。

8月19日、Zepp Namba。この日のゲストバンドはBUCK-TICKだ。MUCCは、デビュー25周年を祝ったライヴイベント<BUCK-TICK FEST 2012 “ON PARADE”>に出演したほか、BUCK-TICKのトリビュートアルバムにも参加するなど、バンド同士の交流も深い。とは言え、MUCCにとってはBUCK-TICKが大先輩であることに変わりがない。そして当日の出演順は事前にBUCK-TICKが口火を切ることが明かされていた。イベントでも基本は“挑戦を受ける立場”でトリを務めることが多いBUCK-TICKが、この日は後輩バンドの先陣を切るという稀有なシチュエーションとなった。

19時、定刻通りに場内が暗転した。暗闇を照らす鋭く青い照明の中、5人がステージの上に姿を現す。その登場シーンのみで圧倒的な存在感を示すことができるのも、長いキャリアを誇るBUCK-TICKならではといえる。

ライヴは最新アルバム『或いはアナーキー』の1曲目を飾る「DADA DISCO -G J T H B K H T D-」にてスタートした。MUCC主催ライヴということもあり、初めてBUCK-TICKのステージを見たであろうオーディエンスも数多くうかがえる。しかし、妖艶な櫻井敦司のパフォーマンスに、ただただ溜息が出るばかりの圧倒的な様相だ。音空間を変幻自在な音色で鮮やかに支配する今井寿と星野英彦の鉄壁のギターチーム、それをどっしりと支える樋口豊とヤガミ・トールのリズム隊。結成から約30年、不動のメンバーが故に“阿吽の呼吸とは、まさにこのこと”と断言できるような演奏には、のっけから観る者すべてを飲み込む説得力があった。

この日のBUCK-TICKは、6月にリリースされたばかりのニューアルバム『或いはアナーキー』収録曲を中心に、キャリアを総括すべく組まれていた。そんな中、この日のハイライトシーンの一つとも言えたのは、セットリストの序盤に披露され、イントロ部分に「白鳥の湖」をフィーチャーした「キラメキの中で…」だ。

この曲がリリースされたのは、21年前の1993年。7thアルバム『darker than darkness -style 93-』に収録されている。個人的な印象ではあるが、このアルバムからBUCK-TICKの音楽性は、現在の形に向けて大きく変化していった感覚がある。事実、樋口豊がその時期を指して「それまでは(リズムが)タテ主体だったのが、ヨコを感じさせないと出せないような曲が増えてきた」とインタビューで発言していることからうかがえるように、バンドの音楽性に劇的な変化をもたらした時期に作られたこの曲が、現在進行形を表すニューアルバム収録の曲たちと全く違和感がなく溶け合っていることに驚きを隠せなかった。変化を恐れず、自分たちの信じたサウンドメイクを追求していった彼らならではのバンドとしての強さを見せつけた瞬間でもあった。

続くMCで櫻井敦司は、MUCCへの感謝を2012年のBUCK-TICK主催野外フェス時の逸話と共に述べていく。また、この日はドラムのヤガミ・トールの誕生日。櫻井曰く、「年齢を聞くような野暮なことはやめましょう」と、誰もが思わず笑みをこぼしてしまうような言葉も飛び出すアットホームな一幕も。

そんな空気を引き裂くかのように、怒涛の演奏がここから続く。切れ味鋭いギターリフと共に、煌びやかなメロディラインが光る「Alice in Wonder Underground」、そして、ゴスサウンドとは何か?を日本で最も体現してると言い切って過言でない「DIABOLO」を立て続けに披露、会場の空気を完璧なまでにBUCK-TICKの世界に染め上げ、万雷の拍手の中、彼らはステージを降りた。

BUCK-TICKが作り上げた緊張感を突き破るかのごとく、約15分のインターバルの後に最新シングル「ENDER ENDER」の激しい演奏でMUCCのライヴの幕が切って落とされた。キャリアに裏付けされた先輩の重厚感溢れるステージングに対抗すべく、冒頭からアップテンポな楽曲を連発していく。何せあのBUCK-TICKの後、である。並大抵のことではBUCK-TICKの創り上げた世界観を変えるのは至難の業。ある意味、MUCCにとって、ここまでのイベントツアーの中で、ずば抜けて冒険的な展開であったことは間違いない。

しかし、どんなイベントやフェスであろうとも、一気に会場の世界観を自分たち色に塗り替えるMUCCのパフォーマンスは、2014年の過酷なツアーによって熟練度を高め、自信に満ち溢れている。そんなステージに煽られるように、満員のオーディエンスの熱量は一気に急上昇した。このあたりはまさにMUCCの真骨頂だ。

そんな熱気溢れるパフォーマンスとは一転、溢れんばかりのBUCK-TICKへの感謝の言葉と、ファン気質丸出しの逹瑯のMCが秀逸でもあった。「だって、ずっとファンなんだからさ。お前らがステージに上がって歌ってるようなもんだぞ!」とオーディエンスに語り掛ける逹瑯の笑顔から、この日のメンバーの充実度の高さがうかがえた。

そして中盤にはYUKKEがアップライトベースを持ち、彼らのレパートリーの中でも最もゴスといえる「25時の憂鬱」が唐突にスタートする。悲鳴にも近い歓声が会場に巻き上がり、バンドの殺傷力満点のパフォーマンスにオーディエンスの集中力も高まっていく。聴く者をまさに憂鬱な世界観に導くバンドサウンド、そして感情を直接ぶつけてくるように歌う逹瑯のヴォーカリゼーションはただただ圧巻の一語に尽きた。このシーンが、この日最大にMUCCがバンドとしてBUCK-TICKの存在を意識した瞬間ではなかろうか。視覚的に訴える熱量を発するだけではなく、心中の激しさをサウンドに乗せてパフォーマンスする彼らの技量の高さをも証明するシーンであった。

「自分たちの原点を忘れないように」とのMCに続いて、なんと大阪スペシャル、BUCK-TICKのカヴァー「唄」が披露された。BUCK-TICKが1995年にリリースしたアルバム『Six/Nine』が少年期の逹瑯に与えた影響の大きさはMUCCファンならば周知の事実である。しかし、改めてこのカヴァーを生で聴くことによって、より音楽的な影響の大きさも体感できたのではないのだろうか。このようなシーンが飛び出すことも、今回の対バンシリーズならではの醍醐味と言える。

ここからMUCCはクライマックスに向けて一気呵成に激しい楽曲たちをフロアに叩きつけていく。「MAD YACK」ではメンバーとフロアの一体感をバンドの包容力の大きさで描き出し、そして「蘭鋳」でのカオティックなシーンへと一気に移行するさまも、音楽的な振り幅の大きい彼らのライヴならではの見せ場であろう。そしてラストは9月にリリースされるシングル「故に、摩天楼」でライヴの幕は降りた。

この日、2バンドに共通して感じたことは、双方とも“ロックの可能性を無限に追及するバンドである”という部分であった。ゴス、パンク、ポップス、テクノ、エレクトロ、ラウド、インダストリアルなどなど、ありとあらゆるロックのジャンルを全て呑み込み、それを消化しきった上で、自分達独自の最新スタイルを作り上げる緻密な頭脳と卓越した技術力を持ちあわせる。そんなとてつもなく精度の高いロックバンド同士の真正面からの激突だったと言えるだろう。日本発、世界規格、ここに極まれりの一日であった。

取材・文◎加藤龍一 撮影◎瀧本 JON...行秀

<Episode 6.「ARMAGEDDON」>
2014年8月19日@Zepp Namba
BUCK-TICKセットリスト
SE. THEME OF B-T
1. DADA DISCO- G J T H B K H T D –
2. SURVIVAL DANCE
3. ICONOCLASM
4. キラメキの中で…
5. メランコリア
6. 世界は闇で満ちている
7. ONCE UPON A TIME
8. 形而上 流星
9. LIMBO
10. 宇宙サーカス
11. Alice in Wonder Underground
12. DIABOLO

MUCCセットリスト
※後日掲載予定


■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Episode 6.「ARMAGEDDON」>毎公演異なるアーティストとの2マンTour
2014年8月06日(水) Zepp Nagoya VS [Alexandros]
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月09日(土) 新木場Studio Coast VS 氣志團
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月17日(日) 京都KBS HALL VS GRANRODEO
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月19日(火) Zepp Namba VS BUCK-TICK
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月20日(水) Zepp Namba VS シド
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月22日(金) 川崎CLUB CITTA' VS D'ERLANGER
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月24日(日) 大阪城野外音楽堂 VS ゴールデンボンバー
OPEN 16:00 START 17:00
2014年8月26日(火) Zepp DiverCity VS MICHAEL
OPEN 17:30 START 18:30
2014年8月28日(木) 恵比寿LIQUIDROOM VS geek sleep sheep
OPEN 17:30 START 18:30

■<SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- Final Episode「THE END」>
2014年9月23日(火・祝) 国立代々木競技場第一体育館
前売券¥5,569(税込) 当日券¥6,500(税込)
※全席指定、3歳以上のお子様はチケットが必要です。
チケット一般発売日:2014年8月2日(土)

◆SIX NINE WARS -ぼくらの七ヶ月間戦争- 特設サイト
◆チケット詳細&購入ページ
◆MUCC オフィシャルサイト
◆BUCK-TICK オフィシャルサイト
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