【インタビュー】エントゥームド A.D.、ヘヴィで速いヘッドバンギング・ミュージック

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スウェーデンのデス・メタルシーンを形作った先駆者エントゥームドが心機一転、“エントゥームド A.D.”として帰ってきた。バンド名を変えニュー・アルバム『バック・トゥ・ザ・フロント』を発表した彼らだが、そのサウンドはさらに激化したエクストリーム・メタルへと変貌を遂げている。

◆エントゥームド A.D.画像

『バック・トゥ・ザ・フロント』=“最前線への復帰”を果たしたボーカリストでありオリジナル・メンバー、L.G.ペトロフが、新作について語ってくれた。

──エントゥームドA.D.は新しいバンドでしょうか?それともエントゥームドの延長線上にあるのでしょうか?

L.G.ペトロフ:俺は同じバンドだと考えている。同じスタイルの音楽を貫いているし、メンバーの大半も同じだからね。異なっているのは、『バック・トゥ・ザ・フロント』は過去の作品を上回るアルバムだということだ。ソングライターの一人だったアレックス・へリッドがバンドを去ったことで、かつて彼が貢献していた部分はなくなった。それがプラスに働いて、より焦点の絞られた作品になっているんだ。

──『バック・トゥ・ザ・フロント』は約7年ぶりのアルバムですが、これだけ長いインターバルを挟んだのは何故でしょうか。

L.G.ペトロフ:それもアレックスが辞めることになった理由のひとつだけどね…要するに、バンドのこっち側はアルバムを作りたくて、あっち側は作りたくなかった。それだけのことだよ。アルバムを作ってツアーに出て、毎晩プレイするのはハードな仕事だ。でも、俺たちはそれを苦に思ったことはない。そう思うようになったら、そのメンバーはバンドを辞めるしかないんだよ。

──どんなアルバムを作ろうと考えましたか?

L.G.ペトロフ:いつもアルバムを作る前には、完成像をイメージしないようにしている。自分たちのイマジネーションを制限したくないからね。ただ分かっていたのは、メタル・アルバムになるだろうということだった。いわゆる“デス&ロール”ではなく、ね。俺はファストでブルータルな音楽が好きだし、このバンドで追求したいと考えていた。ヘッドバンギング・アルバムにしたかったんだ。

──初期のデス・メタル路線への回帰だともいえるでしょうか?

L.G.ペトロフ:俺は昔も今もデス・メタルが好きだし、あえて“回帰”したつもりはないよ。ただ、ファースト・アルバム『レフト・ハンド・パス』(1990)で使った機材を引っ張り出して、当時のサウンドを一部再現している。決して昔に戻ろうという訳ではないけど、あのアルバムのサウンドはすごく良いと思うんだ。それから20年以上経って、バンドの音楽性は変化してきたし、サウンドも新しいものになってきた。『バック・トゥ・ザ・フロント』では新旧のサウンドのベストな部分を融合させているんだ。

──『バック・トゥ・ザ・フロント』の曲は、前作発表後に書きためたものでしたか?あるいは新たに書いた曲ですか?

L.G.ペトロフ:いずれもレコーディングの2、3ヶ月前に書いたものだよ。どの曲も新鮮だし、レコーディングしていてエキサイティングだった。5週間スタジオに閉じこもって、このアルバムを作り上げたんだ。合宿していたから夜中でも、良いフレーズを思いついたらすぐに録音できる状態だった。俺たちはツアー中にサウンドチェックやホテルの部屋で曲を書くタイプじゃないから、長いあいだ曲を書くチャンスがなかったんだ。曲のモチーフがあっても、そのままくすぶっている状態だった。そんなフラストレーションが溜まっていたせいで、『バック・トゥ・ザ・フロント』は音楽が噴き出すように、一気にレコーディング出来たよ。ヴィクター(・ブラント)なんて、1日で全ベース・パートを弾いてしまったんだ。

──曲作りのプロセスは、以前と異なりましたか?

L.G.ペトロフ:特に変わらなかったよ。ただ、レコーディング作業は、かなり異なっていた。前回アルバムを作ったのは、もう7年前だからね。コンピュータが進歩していて、すごく楽だったよ。ただ、あまり楽をしないように自戒する必要もあった。スタジオでツギハギするのではなく、ライブのフィーリングを活かそうと考えたんだ。

──『バック・トゥ・ザ・フロント』は攻撃的な音楽性で貫かれていますが、中でも「ジ・アンダーマイナー」はブラック・メタルばりのブラスト・ビートをフィーチュアした曲ですね。

L.G.ペトロフ:そうだな。でも、音楽につけられた名札にはあまり興味がないんだ。デス・メタル、ブラック・メタル、スラッシュ・メタル…呼び名は違っても、ヘヴィで速いヘッドバンギング・ミュージックという点では同じだろ?「ジ・アンダーマイナー」はオーレ(・ダールステット)が書いた曲なんだ。いかにもドラマーが書いた曲らしく、凄まじいプレイがフィーチュアされている。中盤にはメロディアスなパートもあるし、とても気に入っている曲だ。

──「パンデミック・レイジ」には、かつてのデス&ロール色が残っているようにも聞こえますが、それは意識しましたか?

L.G.ペトロフ:うーん、そうかな?俺はそうは思わないけど…決して過去のサウンドを避けたわけではないし、意識せずとも、そういう部分が残っていたかも知れない。この曲は、アルバムで最も“聴きやすい”部類に入ると思うんだ。それでミュージック・ビデオを作ることになっている。いろんなタイプの曲が収められているけど、ひとつ言えるのは、どの曲も、自分が歌ってしっくりくるということだ。自分と合わないスタイルの曲を無理して歌う必要は、一度もなかった。もちろん楽はしていないし、アルバム全曲が自分にとってチャレンジだった。でも、「これは違うなあ…」と首を傾げながら歌うことはなかったよ。そんなフィーリングは、おそらくアルバムを聴く人にも伝わると思う。『バック・トゥ・ザ・フロント』は、1曲も飛ばさずに一気に聴きとおすことができる作品だと信じている。

──アルバムではニコ・エルグストランドがギターをプレイしていますが、今後は彼一人でギターを担当することになるのでしょうか?

L.G.ペトロフ:いや、アルバムを完成させてから、セカンド・ギタリストとしてヨハン・ヤンソンが加入したんだ。彼は既にバンドに溶け込んでいるし、クリエイティブな能力も持っている。おそらく世界中のファンを待たせることなく、次のアルバムに取りかかることになるだろう。エントゥームドA.D.として活動していくのが楽しみだよ。

取材・文:山崎 智之


【メンバー】
L.G.ペトロフ(ヴォーカル)
ニコ・エルグストランド(ギター)
ヴィクター・ブラント(ベース)
オーレ・ダールステット(ドラムス)

『バック・トゥ・ザ・フロント』エントゥームド A.D.
【通販限定CD+Tシャツ】¥4,000+税
【通常盤CD】¥2,400+税
1.キル・トゥ・リヴ
2.ベドラム・アタック
3.パンデミック・レイジ
4.セカンド・トゥ・ノン
5.ベイト・アンド・ブリード
6.ウェイティング・フォー・デス
7.エターナル・ウォウ
8.ディギトゥス・メディウス
9.ヴァルチャー・アンド・ザ・トレイター
10.ジ・アンダーマイナー
11.ソルジャー・オブ・ノー・フォーチュン
12.ゴスペル・オブ・ザ・ホーンズ(日本盤限定ボーナストラック)

◆エントゥームド A.D.オフィシャルサイト
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