【インタビュー】清木場俊介「余裕のあるどっしりとした楽曲が自然と生まれた」新作『MY SOUNDS』

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ソロデビュー10周年を迎えた清木場俊介のニューアルバム。3月にリリースしたベストアルバム『唄い屋・BEST Vol.1』と、それにともなうアコースティック・ツアーが過去と現在を見わたすものだとすれば、この新作『MY SOUNDS』は現在から未来へつながる布石となる作品だ。より柔らかな表現力を増した唄、30代ならではの人生観で、守ることと攻めることのバランスを洞察した歌詞。10周年を超えて清木場俊介が向かう方向が、どの曲にもはっきりと示されている。

◆清木場俊介~拡大画像~

■34才になってクソッタレばっかり言ってても駄目だ(笑)
■ただやっぱり言わなきゃいけないことは絶対にある


 ▲『MY SOUNDS』初回限定盤
 ▲『MY SOUNDS』通常盤
──『MY SOUNDS』って、春にやっていたツアーのタイトルと同じですよね。ベストアルバムの時の。

清木場俊介(以下、清木場):そうです、アコースティック・ライブ・ツアーの。今までの曲をアレンジし直して、ベストを作って、自分が伝えたいことはこれなんだなということがわかったので。それを踏まえて一発目に出すアルバムは、『MY SOUNDS』というタイトルがいいだろうなと。

──熱い曲もあるし優しい曲もあるし、あとでちゃんと触れますけど、冨田恵一さんのシャレたアレンジもあるし。

清木場:そうですね。いろいろ試してみています。

──全体のテーマみたいなものはあったんですか、今回は。

清木場:テーマは、34歳になったので、30代ならではの余裕感というか、あんまり攻めに行かない余裕感を出したかったですね。

──それはもう、普段の生活からそうなってきているという?

清木場:そうですね。30代って何なんだろうな?って考えながら、ずっと過ごしてきて。30代になってからアルバムを1枚出したんですが、その時はなかなか余裕感は出せなくて、20代をまだ引きずっている感があって、理想とする形がつかめそうでつかめなかった。そういうことを思い描きながら、日々気持ちも心も変化していった結果、今回みたいに余裕のあるどっしりとした楽曲が自然と生まれてきたんです。

──俊さんの場合、その時の気持ちがそのまんま曲になって出てくるから。

清木場:それが一緒じゃないと、自分としても表現しきれないので。生き方がそのまま唄になっていく感じです。ただ、曲が作れないということはあんまりないんですが、歌詞はけっこう煮詰まることが最近よくあるんですよ。

──あ、そうなんですね。それはなぜ?

清木場:20代の頃みたいに、何でも言えばいいというものでもなかったりするので。聴き手の気持ちというか、自分のことを言いながらも、相手を傷つけずに聴かせるにはどうしたらいいか?とか、そういうこともあったりするので。昔は歌詞のほうが、全然悩まなかったんです。

──ですよね。そういう話はよく聞きました。

清木場:今はちょっとね。34才になって、クソッタレばっかり言ってても駄目だしなって(笑)。そういうのも踏まえて、さじ加減は悩みますね。ただやっぱり、言わなきゃいけないことは絶対あるし。「REAL」みたいな曲とか。

──「REAL」はまさにその路線。自分を抑圧するすべてのものにNOという唄。

清木場:言うべきことは言っていきたいから。だから、貫くところと、一歩引くところと、どっちもないといけないなということが、30代になって学んだことですね。ただ「REAL」みたいな曲は、自分の一番核になる部分なので、そこが根っこになって表現している部分は大きいかもしれない。

──1曲目の「ROCK★STAR」も、言うべきことを言っていくタイプの曲でしょう。“ロックスターになるために”って。

清木場:「ROCK★STAR」は、30代になったからこそ、唄っていくべき曲だなと思っています。20代じゃちょっとまだ子供っぽく感じちゃうんですよ、曲調が。30代、40代になってこれを唄うと、よりロックスターっぽくなれるのかなという、自分の中の漠然としたイメージですけど。

──「Spirit」も、前は唄えなかったタイプの曲じゃないですか。

清木場:前作に入っている「ONE」とか「貴方の中に」とかを書き始めた頃から、こういうテイストの曲を唄えるようになったんです。“生きるために守っていくもの”みたいなテーマは、最近増えましたね。

──これも10代や20代じゃ…。

清木場:書けないです。「Spirit」はアルバムの中で一番最後に書いた歌詞で、アルバムができてみて、このアルバムが伝えたいことって何なのかな?と思ったら、“ブレない魂”ということだと思ったので。攻撃しながらも、守るべきものがたくさん見えてくるものなんだな、ということですね。

──「Spirit」はいい曲。40代、50代になっても唄ってる姿が見える。

清木場:そこが今は目標で、20代でしか唄えない曲をずっと作っててもしょうがないし、これから先、40代に向けて、唄わなきゃいけないメッセージや、自分の表現の仕方を今から探していかないと、40になって探そうと思っても、どんどん気持ちが丸くなって書けなくなっていくと思うんです。

──で、冨田さんアレンジの「ありふれた日々」は意外でした。軽やかな打ち込みの、シティポップスという感じで。

清木場:冨田さんのアレンジが好きで、前回ATSUSHIとのコラボの曲(「羽1/2」)を冨田さんにアレンジしてもらって、自分にはない感覚の人なので、すごくいいなぁと。この詞でこのメロディで、普通のミディアム・ロックバラードの感じで作っていたんですが、なんかこそばゆかったので。まったく違うアレンジにしようということで、今回やってもらったんです。ただ僕の中に引き出しがないので、すごい違和感がありました。最初に聴いた時は、嘘だろ?って(笑)。これはどうしようかなと思って、レコーディングに入っていったんですけど。今となっては、すごく気持ちいいですね。

──合ってますよ。バンドサウンドだけじゃなくても。ほかに、新しいことやったな的な曲は?

清木場:なんだろうな、「Honey」とか、今までにはなかった曲ですね。ただ自分の中では一番好きなテイストの曲です。作った時に、“できてしまったな”という感覚があったので。

──ものすごくシンプルなフレーズの繰り返しで、ボーカルもささやくような、じわじわと沁みてくるタイプの曲。

清木場:洋楽によくあるような、スリーコードぐらいで、ブルースに近いのかな。自分のルーツとしては、たとえば長渕(剛)さんだったら「順子」、尾崎(豊)だったら「シェリー」、矢沢(永吉)さんだったら「MARIA」みたいな、女性の名前をつけたような曲がほしくて、「Honey」というタイトルの曲をずっと書きたかったんです。弾き語りでも聴かせられて、バンドアレンジでも唄えるような曲を。作ったというか、降りてきたんですよ。リハーサルの最中か何かに、数分ぐらいで。降りてきたようにできちゃう曲って、すごくハマリがいいんです。

──しかもこの「Honey」、甘いラブソングじゃ全然ない。“もう駄目だね。”だから。

清木場:相当重いですよね。こういうほうが、唄っていてその世界に入れるから、表現するには楽なんです。

──ラストチューンの「One and Only」はどうですか。

清木場:「One and Only」は、34年間生きてきて感じたこと、言われたこと、曲げてきたもの、貫いてきたものを全部詰め込んだ1曲です。これも40代、50代になって唄うと、より説得力が増すと思うんで、そのために作ってみた曲です。やっぱり年々動じなくなってくるし、世の中に合わせてしまう自分がいたりとか、そういう中で、“違うな”と思いながら、それでも自分の道を貫いていかなきゃいけないみたいな、悶々とした思いを曲にぶつけてみました。俺はそうなりたくないんだ、という曲です。

──いつまでだろう、愛するヤツをこの全てで守れるのは。あそこの歌詞がすごくいいんですよ。

清木場:そこは響きますよね、唄っていても。ただ人を殴るのは絶対にしちゃいけないことだけど、たとえば自分の子供や、自分の好きな人が傷つけられた、その時に立ち向かう勇気があるかないかでは全然違うと思うし。その理由がどういうものなのか、そこで自分が絶対に許せないものに対して、どれだけ立ち向かうことができるのか、ということを唄いたかったんです。「Spirit」みたいに、“守るために頭を下げる”ということも必要だし、時には立ち向かって行くことも必要だという、両方わかってないと立ち向かう勇気もないだろうし。自分もそうやって生きてきて、本当にぶん殴ったこともあるし、立ち向かえなかったこともあるし、それを踏まえて、じゃあ何が男らしいんだ?と。何が潔いんだ?と思った時に、こういうメッセージが出てきたんです。

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