【インタビュー】谷山浩子、心をくすぐる演奏も歌もおしゃべりもすべてノーカットの40周年ライブ盤

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谷山浩子の最新ライブCD『デビュー40周年コンサートat東京国際フォーラム』がすばらしい。何がすばらしいと言って、CD3枚とDVD1枚(初回盤)にライブを丸ごと収録し、演奏も歌もおしゃべりもすべてそのまま。じっと聴いていると目の前にステージの風景が浮かび上がる臨場感の中で、40年間のキャリアの中から選りすぐりの名曲たちが次々と披露される。楽曲の解説や、当時の思い出を語るMCもとても興味深く、気がついたら3時間はあっという間。あらゆる世代の谷山浩子ファンの心を揺さぶる、永久保存必至の自伝的ライブ盤だ。

◆谷山浩子~拡大画像~

■大阪でトークの場所を間違えたんです。11(トラック)の場所で14のトークをしちゃいました
■“すみません、今のトークはこのあとでした”と言って、もう一回トークをし直したんです


 ▲『デビュー40周年記念コンサート at 東京国際フォーラム』【初回盤】
 ▲『デビュー40周年記念コンサート at 東京国際フォーラム』【通常盤】
──たっぷり3時間ですね。

谷山浩子(以下、谷山):はい、3時間です。

──特に初回盤は、MCも含めて完全ノーカット。

谷山:はい。休憩まで。休憩で1トラック取っています(笑)。それも、休憩時間に何かやっているわけでもなく、ただBGMが流れて、お客さんがざわざわしているだけ。

──思わず聴いちゃいましたけど、何かあるんじゃないか?と思って。何も起きないという(笑)。

谷山:すみません(笑)。

──そもそもこのライブ、開催は2012年の11月でしたよね。リリースが今になった理由というのは?

谷山:ライブ盤を出すという企画は、当初はなかったので。でも当時のマネージャーが“念のために”みたいな感じで録ってあったんです。2014年になって、新しいアルバムをどうしよう?という話になった時に、あれをそのままにしておくのはもったいないだろうという話になり、出すことになりました。

──どうですか。あらためて、ライブ盤をリリースすることについて。

谷山:こういう形のライブ盤って、初めてなんですよ。

──あれ。そうでしたっけ。

谷山:ライブやリハーサルの音源を集めたものは出したことがあったんですが、いわゆるライブ盤というのは初めて。でもこの時はとても調子が良かったので、無修正で出すことができました。無修正を自慢にすることができるくらい、ライブ盤って修正が多いですよね。

──うーん。確かにそういうことも。

谷山:だから、ほかのミュージシャンの人には聴かせていません。聴かせると、直したくなるから。

──バックのメンバーに聴かせてないんですか? 大丈夫ですか(笑)。

谷山:はい(笑)。特に傷がなくても、ミュージシャンって直したくなるものなんですよ。私も、歌い直しはしていません。だからアンコールの曲「意味なしアリス」は、通常盤には入ってないんですけど、歌詞を間違えたり譜割りを間違えたり、けっこうしてるんです。

──そこも無修正で。

谷山:ライブという感じがしていいかなと思って。本来ライブは一回性のもので、その場だけで聴くからいいというところがあるんです。繰り返し聴くと粗かったりするんですけど、でもそのぐらいのほうが、その場で聴いた時にはいいものだったりするんですよね。それをアルバムにして出すのもどうかな?とも思ったんですが、こういうふうに丸ごと出せれば、“こういうライブをやっています”という形が残るから、一度くらいはいいかなと思って。

──セットリストは、どうやって選んだんですか。

谷山:40周年なので、代表的な曲をかなり厳選しました。普段は制作の人から、“コンサートは2時間”と言われていて、でも今回はどうしても曲を削れないと言ったら、“じゃあ今回だけ3時間でもいいです”と言ってもらって(笑)。それでもだいぶ削ったので、トークの中でBGMとして流したり。

──あれも珍しいですよね。自分で曲紹介をしながらしゃべるという。

谷山:あれはつまり、入れられなかった曲なんです。それでもこぼれた曲は、休憩中にメドレーの形で流しているという。

──ああ~、そういうことだったんですね。中には、久しぶりに歌う曲もあったり?

谷山:一番最初の、7歳の時と10歳の時に作った曲に関しては、特に1曲目(「ほしのよる」)は完全に初演奏です。10歳の時の曲(「クリスマスツリー」)も、大阪のライブで半分ネタみたいな感じでやっただけなので、その2曲に関しては一生懸命思い出しながらやりました。その次の「天使のつぶやき」という曲も、あまりやらない曲ですね。でも「お早うございますの帽子屋さん」からあとの曲は、普段のライブでもまんべんなくやっているので。そういう意味では、いつもの曲です。

──ライブ中の、特に印象的なエピソードというと?

谷山:大阪で、トークの場所を間違えたんです。11(トラック)の場所で14のトークをしちゃいました。そのトークをひととおり全部してしまったあとに、“あれ?”っと思って、(斎藤)ネコさん、(石井)AQさん、山川(恵津子)さんの顔を見たら、“うん、うん”っていう顔をしていて(笑)。“すみません、今のトークはこのあとでした”と言って、もう一回トークをし直したんです。あれを東京でやっていたら、ライブ盤は出なかったかもしれない(笑)。

──あはは。でもそれも、ライブですよね。

谷山:お客さんは、間違えたほうがうれしいみたいです(笑)。極力ないようにはしてるんですが、やってしまった時は、珍しいものを見ていただいたということで、自分をなぐさめています(笑)。

──東京のライブは完璧でしたね。

谷山:はい、完璧でした。さっきお話したダブル・アンコール以外は。ダブル・アンコールは曲を決めてなかったので、いきなりやったので、いろいろ間違えました。

──このCD、初回盤は3枚組+DVDのボリュームで、パッケージもこんなにきれいで重厚で。絵本みたいです。

谷山:そうなんです。お金に余裕のある方は、ぜひ初回盤をお薦めします。持ってるだけでうれしいと思うんですよ。CDで、持ってるだけでうれしいものって、なかなかないと思うので。このイラストを描いてくれた大山美鈴さんは、ツイッターで知り合ったんです。

──あ、そうなんですね。

谷山:ツイッターに“夢は谷山浩子さんとお仕事すること”と書かれていて、それをお気に入りに入れておいて。8月に出た本(「Amazonで変なもの売ってる」)の打ち合わせの時に、彼女の名前を出して、それでアルバムもお願いしたんです。若いけどすごく人気のある方で、逆に美鈴さんのファンの方が私の本を買ってくれたりとか。うれしいです。

──40年間のどこかで、谷山さんの歌に触れたことがある人は、ぜひ聴いてほしいライブ盤だと思います。

谷山:東京、大阪でしかやらなかったので。来れなかった方も、雰囲気だけでも楽しんでいただければ。

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