【インタビュー】PENICILLIN、新作「SOL」に「人智から離れた壮大な力と哀愁を」

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PENICILLINが9月10日、ニューシングル「SOL」をリリースする。「これまでにない面に光が当てられた曲」と語るオリジナルナンバー「SOL」の完成度の高さもさることながら、同シングルはカップリングにカバー曲を据えた企画の第二弾となるもの。2013年にリリースされた「幻想カタルシス」では、昭和の女性ボーカリストの歌謡曲をカバーして話題を呼んだが、今作には山口百恵の「プレイバック Part2」、薬師丸ひろ子の「夢の途中〜セーラー服と機関銃〜」、中森明菜の「北ウィング」といったナンバーのPENICILLINバージョンを収録した。切ないメロディと色褪せない大ヒット曲の魅力をロックなアプローチで再生させる手腕はさすが。タイトル曲「SOL」について、そしてエピソード満載のカバー曲について、HAKUEI、千聖、O-JIROの3人に話を聞いた。

◆「SOL」ミュージックビデオshort ver.

■スパニッシュ→ラテン→南米と連想していって
■最終的にラテンアメリカ民謡っぽい雰囲気に──千聖

──カップリングで大橋純子さんや高橋真梨子さん、中森明菜さんのヒット曲をカバーした前シングル「幻想カタルシス」に続くニューシングル「SOL」は、カバー・カップリング企画の第二弾となります。またカバーをしてほしいというリクエストも多かったのでは?

千聖:前シングルのカバーの評判が良かったっていうのもあるんですけれど、もともとは女性が歌った昭和の歌謡曲をHAKUEIが歌ったらどうなるんだろう?っていうところから始まったもので。今回も基本のテーマは同じですね。まぁどちらかというと、僕らが子供の頃(昭和50年代)にヒットしていた歌謡曲をカバーしてます。

HAKUEI:何となく知ってる人は多いかもしれないけどね。前シングルではファンの人にも楽しんでもらえたんですけど、個人的にも面白かったし、もうちょっとカバーしたいっていう気持ちはありましたね。最初は女性シンガーの歌謡曲を男のロックボーカリストが歌うということに、かけ離れたイメージを抱いてたんですけど、やってみたら女性目線の歌詞も自然に歌えて、PENICILLINのオリジナル曲よりレコーディングが早かったぐらい(笑)。’70年代、’80年代にベスト10に入っていた曲って、レコードを持ってなくてもTVやラジオや有線で流れていたから覚えてるんですよね。

──身体の中に入っている曲なんでしょうね。

HAKUEI:そう。どこかに残ってるんでしょうね。

O-JIRO:前シングルでカバーしたときは初めてのことばかりだったので、チャレンジ的な気持ちもあったし、何もかも新鮮に取り組めたんです。けど、今回はすでに経験していることだから前作がたまたまよかったと思われたくなかったというのもあるし、アレンジしすぎて原曲の良さを壊したくなかったし、かといってコピーするのでは僕らがやる意味がない。

千聖:そうだね。

O-JIRO:PENICILLINがアレンジすることによって昭和の大ヒット曲が違う形で花咲くように……ってみんなですごく考えましたね。ほぼ、原曲と同じテンポにしてメロディや曲の雰囲気を受け継ぎながら、PENICILLINサウンドにするっていうのがザックリしたテーマでした。

千聖:中森明菜さんの「北ウィング」も、ベスト盤が出たばかりだからタイミングが良いよね。オリジナルと並行して聴いてもらえたら嬉しい。

──カバーの話はあとでじっくり聞かせてください。まず、タイトル曲「SOL」はイントロからして切なくて憂いのあるメロディと凛とした強さのある世界観にひきこまれますが、この曲はカバーがカップリングに収録されることを想定して作った曲ですか?

O-JIRO:そうですね。千聖くんが作った曲なんですけど、聴いているうちに、アンデス山脈みたいな広大な風景の中に独りでいるようなイメージが浮かんだ曲で。

千聖:前アルバム『瑠璃色のプロヴィデンス』のジャケットがちょっとスパニッシュなテイストだったんですけど、そのときに“SOL”(スペイン語で“太陽”の意味)という単語が自分の中に浮かんでいて。今、JIROさんが言ったようなスパニッシュ→ラテン→南米と連想していって、最終的にラテンアメリカ民謡っぽい雰囲気にもしたかったというか。

O-JIRO:フォルクローレっぽいイメージにしたいねって。

千聖:曲の出だしというか頭の方は、自分が家で作ってた段階でちょっと民族音楽っぽいアレンジがハマるかなと思ったので、さらにプリプロで前半はアンデス色を強くしたんです(笑)。みんなに聴いてもらったときは盛り上がりましたね。

HAKUEI:異国情緒のある世界と僕らなりのロックが融合した曲ですね。PENICILLINのメンバーでやると、らしいものになるのは当然なんですけど、そんな中にも掘り起こしていない部分や光を当てられていない部分はまだまだ無限にあると思っていて、新たなところに光が当てられた曲だなと思います。

──太陽という言葉からどう広げて歌詞を書いたんですか?

千聖:タイトルが先だったな。曲タイトルを先にくれとスタッフからいわれたんで、オレが候補をいくつか、HAKUEIに送った中の1つがSOL だったんだけど、それが採用されたという感じかな。ただ単に太陽というより、すべてを照らし出すとか明らかにするっていう意味の方向で解釈して欲しいんだよね。

HAKUEI:そう。あと俺はマンガの「AKIRA」(大友克洋)を思い出した。宇宙からレーザーを飛ばす“SOL”っていう兵器が出てくるんだけど、たぶん、太陽みたいな力を持っているという意味で付けられた名前なんじゃないかなって。人智から離れた壮大な力を連想したので、そういうことをテーマに歌詞を書こうって。あとは人生を哀愁たっぷりに描いて。

──どれだけ愛してもサヨナラだっていうサビが印象的です。

HAKUEI:地球がゆっくり回っていくようにどんなに傷ついても寂しいことがあっても元には戻れない、というテーマで書きましたね。

──PENICILLINは以前「太陽」というシングルを出しましたけど、情熱的なあの曲とはまったく異なるアプローチですね。

HAKUEI:あの曲はギラギラした太陽のイメージ。GISHOが脱退した後、最初に作った曲だったから、3人になった僕らがより力強い光を放つっていうエネルギーを込めたし、同じ太陽でも今回とは意味合いが全然、違いますね。

◆インタビュー(2)へ
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