【インタビュー】ななみ、引きこもり、いじめ経験からの音楽への道。「歌で世界中の生きて悩んでる人たちを救えたら」

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大分県出身のシンガーソングライター、ななみが、10月8日にシングル「愛が叫んでる」で、e-stretch RECORDSよりメジャーデビューを果たす。まっすぐ心に迫り来る力強い歌声。そこから放たれる、孤独感、葛藤、やりきれない思い。ななみが生々しくメッセージを届けるのには、確固たる訳があった。生い立ちから音楽ルーツ、これからの目標など、彼女が赤裸々に話す言葉から、その訳を解く。

◆日常に彩りがないから昨日も今日もわからないみたいな
ある意味ずっと眠りについてたみたいな感じだった


――ななみさんのメジャーデビューシングル「愛が叫んでる」は声が魅力的で歌にパンチがある。刺さってきました。

ななみ:ありがとうございます。

――BARKS初インタビューなので、まず、ななみさんが歌を歌い始めたルーツについて聞きたいのですが、「音楽に助けられたから、きれい事じゃなくて誰かを助けたいと思って人前で歌い出した」とか。どんな気持ちの時に音楽を聞いてどんな状況の時に助けられたんですか?

ななみ:誰々の歌詞に助けられた、とか誰々が好きだった、というのがキッカケで音楽に目覚められる方が多いと思うんですけど、私の場合は、ある意味音楽に刺激をもらったんです。14歳の頃、中学2年生の時に親が離婚をしてしまったんですけれど、多感でちょっとしたことでもすごく悩んでしまう時期だったので、親には「大丈夫だよ」って言ってたんですけど、やっぱり自分が思ってるよりもそういう事実を受け止められなかったんですよね。で、もともと学校でも団体行動が苦手だったこともあって、親の離婚をきっかけに同級生が楽しそうに笑ってる顔を見ると悔しかったり、幸せそうな顔見ると「なんであたしだけこんな想いをしてるんだろう」って、学校に行くのがすごく辛くなってしまったんです。それで中2で半年ぐらい引きこもって……。その頃は毎朝起きて寝て何もすることがなく部屋の中でじーっとしていたので、お腹もすかないし生きてる感覚がなかったですね。

――生きてる実感というか、現実感がないみたいな。

ななみ:そうですね。日常に彩りがないから昨日も今日もわからないみたいな。ある意味ずっと眠りについてたみたいな感じだった。やることないから、ずっとパソコンでYouTubeとか動画とか見てましたね。アニメも大好きなので、ずっと見てアニソン聴いたりとか。もともと音楽は好きだったので、特定のアーティストの曲に救われたとかではないんですけど、「この曲、いいな」とか、そういうちょっとした気持ちが湧いてきて。

――フリーズしていた気持ちが動いたんですね。

ななみ:そうですね。半年間気持ちが動いたことがなかったのでちょっと動いただけで嬉しくて、だんだん、音楽が自分の生きてる意味みたいな感じに変わってきて、自然と歌うようになって。最初は物真似みたいな感じで始めて部屋の中で歌ってました。そしたら、少しずつ心も開いていって、引きこもっていたのが外に出られるようになってきて、学校にもちょいちょい保健室登校みたいな感じで行けるようになって。

――自分から行ってもいいかなと思えるようになった。

ななみ:そうですね。まあ、学校は嫌いだったんですけどね(笑)。当時はお母さんと住んでたんですけど、母はすごく理解があったというか、「無理に行かなくていいよ」って感じだったので、私が音楽をしたいと言ったときは、何かをしたいって言ってくれること自体がすごく嬉しかったみたいで、全力で応援してくれました。そこから、オーディションをたくさん受ける日々が始まって、それが中3の初めぐらいですかね。

◆「音楽をしたい」ってひとりの友だちに言ったら、全員に広まって
「あいつ歌手になりたいらしいよ。なれるわけないじゃん」ってバカにされたんです


――じゃあ、わりとすぐですね。

ななみ:学校では勉強とかあんまり得意ではなかったので、評価されることがなかったんですけど、オーディションに出ると審査員の方がすごく評価してくれるのが単純に嬉しかった。「もっと出たい」と思って、(大分から)福岡の音楽スクールに毎週ギターを抱えて通っていました。レッスンを受けながら大分でライブ活動をしてオーディションを受けていましたね。

――ちょっと話は戻るんですけど、「愛が叫んでる」のミュージックビデオにいじめられている描写が出てきますよね。あれは、ななみさんの実体験を元にしている?

ななみ:ええ。学校に行かなくなってから、さらに孤立して、一日置きぐらいに行ってたんですけど、周りからは「また来たし」みたいな雰囲気になったりして。あと「音楽をしたい」ってひとりの友だちに言ったら、全員に広まっちゃって「あいつ歌手になりたいらしいよ。なれるわけないじゃん」ってバカにされるようになってしまったんです。「学校も真面目に来ないのに、歌手なんかなれるわけないじゃん」みたいな。保健室で勉強して教室に給食食べるときだけ戻っていたりしていたんですけど、机の中にゴミをいっぱい入れられていたりとか……。学校が中心の世界だし、仕方ないと思うんですけど、私は何を言われても「今に見とけよ」ってずっと思っていたから、それを糧に頑張ることができました。

――ちなみに歌を始めた頃は部屋の中やオーディションでどんな曲を歌ってたんですか?

ななみ:最初は絢香さんのオケをカラオケで録音して流しながら歌っていました。その後は洋楽が多かったかな。アリシア・キーズとか。声が低いので、女性の方の音域にあまり合わないんですよ。だから、カラオケに行くと尾崎豊さんや桑田圭祐さんの曲を歌ったり。

――ギターを弾き始めたのはいつ頃ですか?

ななみ:楽器は13歳ぐらいですね。当時YUIさんがちょうどデビューした頃ぐらいでギター女子がかっこいいみたいな雰囲気があったんですよね。おじいちゃんのクラシックギターが家にあったから音もわからず、“弾けてる感”を自分で楽しみたくてずっと弾いてました。福岡のスクールに通いだしてから基礎を学んで作詞作曲をするために弾いたんですけど、自分の中では楽器でカッコいいことをしようというよりは、ボーカルを支えるためのギター、曲を作るためのギターという感覚ですね。

――なるほど。シングルの話を聞く前にもうひとつだけ聞きたいんですけど、嫌なことがあったり悲しいことがあったりして、自分の想いを歌にして吐き出すタイプのアーティストもいると思うけど、誰かを助けたいとなぜ、思ったのですか?

ななみ:引きこもりの時期を乗り越えた後、オーディションをたくさん受けて夢に向かって行く過程で学校に行ってなかったからか、平日遊べる友達が学校に行ってないコしかいなくて。ちょっとヤンキーというか、そういう子たちとつるんだ時期があったんですよ。そのコたちも家庭でうまくいってないかったりとか、いろんな悩みを抱えていて。そこで人間って愛がないと生きていけないんだなってことに気づいたのは大きかったですね。引きこもりでヤンキーだったけど、私はこんなに今、歌を歌って変われている。最初はもちろん、誰かにわかってほしかったし、誰かに誉められるのが嬉しくて歌っていたけど、だんだん自分が存在しているっていうことで誰かを助けられるんじゃないかなって。いろいろ経験したからこそ、それをメッセージにして歌にして誰かを助けたいなって。“あのコは昔、いじめられていて引きこもりで、ヤンキーだったって。じゃあ、あたしも変われるかも”って自分の歌を聴いて、何かきっかけになってくれたらっていうのがあるので、それがイコール、“救い”に変わればいいなと思いながら歌っていきたいと思ってます。10代で引きこもり、いじめ、ヤンキーと3つも経験してきたこと、自分の過去の人生を消すんじゃなくて、ちゃんと活かすような生き方をしたいんですよね。

◆過去がばれたときにとんでもないことになってしまうので(笑)
最初から「私はそんな綺麗な人間ではありませんよ」っていうのを出しておいた方がいい


――だからミュージックビデオにもそういうところを隠さずに出そうっていう。

ななみ:もしこの先デビューしたあとに「ななみちゃんは純白で何も汚れを知らない綺麗な女のコ」みたいなイメージがついてしまうと、後々、私の過去がばれたときにとんでもないことになってしまうので(笑)。だったら最初から「私はそんな綺麗な人間ではありませんよ」っていうのをちゃんと出しておいた方がいいかなと自分で判断をして作ったり、こういうインタビューでもちゃんと本当のこと言ったりとか。

――それはデビュー前から思ってた?

ななみ:過去はどうやっても隠せないので。

――(笑)。正直な性格ですね。

ななみ:よく言われます、素直すぎるって。でもそこが良さになればいいかなと思うんですけどね。

――では、2013年<Music Revolution>でグランプリを獲ったときはどんな気持ちだった?

ななみ:大分大会が第一次審査で、九州ファイナルが第二次審査。最終的に最後のグランプリがあるんですけど。初めて弾き語りでステージに出ようって思って出たオーディションだったんですよ。今までずっとボーカルだけだったんですけど、一か八かと思っていつも作詞作曲のために使っているギターを持って出てみたら、とんとん拍子にいきなりグランプリまでいったので、自分の中ですごく自信になりましたね。自惚れるような自信ではなくていい意味で。そこから積極的に曲を作ってYAMAHAさんに「曲作りました。ライブしてます」って。「私本当に音楽やりたいんです」ってその一年はがんばった記憶がありますね。

――その後、ギターを持って1人で全国武者修行ツアーに出たことが今のスタイルに繋がってるんですか?

ななみ:弾き語りの人生的にはそのあたりからなので、まだ荒削りというか、そんな時期だったと思います。

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