横浜アリーナ2daysとマディソン・スクエア・ガーデンというX JAPANのライブを控える9月某日、SUGIZOと話する機会を得た。2011年、世界ツアーを経験したX JAPANは、これまでにない最強レベルまで達していたと、SUGIZOは明言していた。

◆SUGIZO画像

X JAPANというバンドのポテンシャルの凄さは、世界ツアーでより研ぎ澄まされたが、そのまま3年近くの年月が経っている。初期のX JAPANサウンドをそのまま今に再現し、最新のX JAPANの音楽をクリエイトするSUGIZOの目に、X JAPANはどのように映っているのだろうか。LUNA SEAからX JAPAN、ソロに至るまで多忙を極めるSUGIZOに、直撃した。

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──LUNA SEAとX JAPANを並行して活動するなんて、ちょっと無茶じゃありませんか(笑)?

※2011年@<a-nation'11>
SUGIZO:手首は完全にギターの弾きすぎ、肩はパフォーマンスのしすぎ(笑)で傷んでて、身体はボロボロです。だからテーピングもしているし、ちゃんとケアをしながら演っていますよ。昔みたいにライブが終わった後に酒を浴びるように飲むようなこともしないですし。ぶっちゃけ、ライブの後って身体がムチ打ち状態になっているんです。ムチ打ちの時は絶対お酒のんじゃダメだから。

──え?…身体がボロボロなのはYOSHIKIだけじゃないのか。

SUGIZO:(笑)、ぼくも何年もずっとこうだね。

──だからといって手を抜く人じゃないし。

SUGIZO:そうですね。ただ、パフォーマンス重視で演奏のクオリティが下がるのはイヤなので、あくまで音楽を届けることにフォーカスはしていますけどね。それがあった上でのパフォーマンスやステージングだと思うので。まあ…そうは言っても、ステージ上では僕はどっちかといえばマーシャル・アーティスト(≒武道家)やもしくはダンサー的な気分ですけど。

──X JAPANのライブが近づいてきましたが、今回のライブではどんなところに注目して欲しいですか?

※2011年@<SUMMER SONIC 2011>
SUGIZO:僕としては、1990年代の楽曲…つまりHIDEさんが弾いていたパートを僕が担う時には、僕の個性やスタイルというのは「無」でいいんです。もう、ただただ1990年代の良きX JAPANの王道を今に再現したい。なので、そこに僕の個性は不要で、ひたすら当時書かれた音符を余すことなく演奏したいんです。ただ、その中でもクラシックで言うカデンツァのような部分(即興的な独奏部分)では自分のスタイルを出しますけど、基本的にはそれこそクラシックの演奏家のようなつもりでやっています。

──なるほど。SUGIZOの美学だ。

SUGIZO:反面、新曲に関しては完全に僕のスタイルであり、YOSHIKIさんが期待するSUGIZOのギターが必要なので、僕はプレイヤーとしての自分のスタイルを出します。でね、そこで大きなことに気付いたんです。

──ん?

SUGIZO:烏丸さんはご存知だと思うんですけど、基本的に僕はギタリストとしてはシングルコイルの人なんですよね。もしくはP90/ソープバー。

──そうですね。SUGIZOは、ハムバッカー:ギブソン系ではなく、シングルコイル:フェンダー系のサウンドを操るギタリストですね。

※2011年@<a-nation'11>
SUGIZO:ハムバッキングは基本使わない。ですが、X JAPANの古い曲はハムバッキングじゃないと再現ができないので、X JAPANに参加するようになってからは、1990年代に作った自分のESPのハムバッキングのギターを持ちだして、それをもう一度カスタマイズして使ってきたんです。

──ESPエクリプスとか…

SUGIZO:そう、あとホライゾンとかですね。実はあのギターって、もう僕のスタイルではないんです。今はフロイド・ローズも基本使わないし、ハムバッキングも使わないし。

──今のSUGIZOのスタイルとは実は大きなギャップがある、と。

SUGIZO:あれは20年近く前のものです。

──当時のギターを引っ張りだしてX JAPANを再現しているんですね。

※2011年@<SUMMER SONIC 2011>
SUGIZO:そうじゃないと、X JAPANの音にならなんです。なんだけど、また大きな盲点…「ああ、しまった」ということがあったんです。基本的に僕のギターはボディー材がアルダーで、HIDEさんはマホ(マホガニー)だったんですよねぇ。どうしても近づかないポイントがあった。僕の音は抜け過ぎちゃう。HIDEさんのような、なんていうのかな…

──ウォームな感じ?

SUGIZO:コクとでもいいのかな。そういうところが違った。だからね、今回、実はX JAPAN用にメインギターを新調していまして、全てマホガニーで作りました。

──ほお、それは凄い。

SUGIZO:マホバック/メイプルトップ・ボディーにハムバッキングPUを載せた新しいSUGIZOモデルです。

──それは楽しみですね。

SUGIZO:より1990年代のX JAPANの音を意識した新しいギターなので、多分かなりいいんじゃないかなと思います。新曲に関しては今の僕のスタイルなので、基本アルダーのギターでいきます。

──今のスタイルは、フェンダーのヴィンテージに代表されるような質感でしょうか。

SUGIZO:そうですね。ストラトにP90とアルニコのPUを載せているので、ストラトなんだけどストラトを超えた凶暴性がある感じが、今の僕のスタイルです。

──しかし、1990年代のX JAPANの再現のためには、人知れぬ苦労があるんですね。

※2011年@<SUMMER SONIC 2011>
SUGIZO:「X」とか「紅」とか昔の曲の場合はトレモロユニットのセッティングも変えています。1990年代のX JAPANのギター・スタイルが全く僕のスタイルとは違うんですよね。ただラッキーだったのは、高校生くらいからメタリカをはじめ、メタルはさんざんコピーしていたので、その回路は僕の中にずっとあったんですね。自分の自己顕示欲が前に出ちゃうとやってられないと思うんだけど、ギタリストとして今までできなかったことができるという、むしろティーンエイジャーの時に本来僕が好きだったもの、ヘヴィメタルを弾きたいという欲求もどこかにあったりするわけで、その欲求がX JAPANで思う存分発揮できるというのは、プレイヤーとしては凄くラッキーな事。とても楽しいし、ありがたいとも思います。

──そもそも喜び・楽しさ・嬉しさがないと、ダメですよね。

SUGIZO:苦しいだけになっちゃうよね。だから僕は、HIDEさんの存在をしっかりと敬い継承しつつ、昔の曲でいうと「HIDEさんだったらこう弾いただろうな」ということをできるだけ愛情を持って再現することに徹しています。それはそれですごく重要な役割なので。しかも10年前だったら想像もしなかったような役割だから。

──自分の確固たるスタイルを持ちながら、X JAPANのスタイルもカバーできるキャパシティって、実は普通のギタリストの2倍のキャパシティがないとできませんが。

SUGIZO:たまたま自分にその回路があったわけだけど、ね。

──しかも、テクニック的にも相当なスキルが必要ですし。

SUGIZO:そうだね、X JAPANは素人は弾けない。初心者は無理だね。同時にドームクラスの経験がないと、あのキャパシティのパフォーマンスについていけないですね。そう考えると、客観的にみても…

──SUGIZOじゃないとダメでしょう、今のポジションは。

SUGIZO:まあ、今となってはこれはひとつの運命として受け入れています。X JAPANは全く自分のスタイルではないけど、逆にそれを楽しんでいるし、それがまたすごく勉強になる。X JAPANから学べることは凄くあるので、アーティストとしてはとてもありがたいことです。

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自らのギター・スタイルやアーティストとしての音楽性を何ら阻害することなく、X JAPANというモダン・クラシックを完璧に再現するSUGIZOだが、同時に彼は、まだ見ぬ新たなX JAPANの可能性を切り開く、フューチャリスティックな脈流を生み出す極めて重要なキーマンでもある。

X JAPANのポテンシャルを極限まで高め、未来への創造性に加速を付けるSUGIZOの存在は、横浜アリーナ、マディソン・スクエア・ガーデンでのライブにおいても重要な位置を示すことだろう。ライブまでもう間もなく。X JAPANファンよ、気合いを入れろ!

text by BARKS編集長 烏丸哲也