【インタビュー】今の華原朋美だからこそ表現できる歌。「人に必要とされる、求められる華原朋美になること」

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華原朋美が、前作『MEMORIES-Kahara Covers—』に続くカバーアルバムシリーズ第2弾として、10月1日に『MEMORIES 2-Kahara All Time Covers—』をリリースした。今作には、華原朋美自らが影響受けた楽曲から、新たな“記憶”を創り出すべく、これまでに歌唱したことがなかったジャンルにもトライしている。収録曲には、LUNA SEA の 「ROSIER」、GLAY の「HOWEVER」、シェネルの「ビリーヴ」などを収録している。また、『MEMORIES 2』では、彼女の過去の経験をそのまま映すような楽曲「難破船」を歌い、アルバム後半の「いい日 旅立ち」では愛おしそうに歌う。そして最後には、母が歌う子守唄のような温もりある声で「見上げてごらん夜の星を」を――。これは単なるカバーアルバムではなく、ドン底だった暗闇から再びポジティブに生きる自分へと辿り着いた、今の華原朋美だからこそ表現できる楽曲が詰まった、人生讃歌作品だ。

◆当時はどれだけ大人たちに任せっきりにしていたのかというのを
今、痛感しながら、日々いろんな発見をしています(笑)


――まずは現在開催中の全国ツアー<TOMOMI KAHARA CONCERT TOUR 2014~MEMORIES~>について。9年ぶりのツアーですが、各地を訪れてみて、いかがですか?

華原朋美(以下/華原):今回は普段はなかなか行けない地方を選んで組んでもらったツアーでもあるので、そういうところでファンの方に会えるだけでうれしいです。私、もともとキャンペーン大好き人間なんですね(笑)。直接行って、直接握手をして、直接皆さんの目の前で歌うという、“直”が大好きなので、今回のツアーも直接私の歌を届けられる、それだけでうれしいんですよ。あと、私は復帰するまでのブランクも長かったですし、全国ツアーも9年ぶりですから、華原朋美として新たなスタートを切っているんだ、ということをこのツアーを通して、自分自身で再確認しているところもありますね。

――ここが新しい華原朋美としての再スタート地点ということですか?

華原:そうですね。今回、“そうそう、あのツアーのときはこうしてたな”って思い出すことがひとつもないんですよ。だから、今は周りのスタッフにいろいろ教えてもらっているんです。ステージ下手、上手の意味も、最近やっと理解しましたし(笑)。

――えっ!?……今までそういう基本的なことを知らないでやっていたんですか?

華原:はい(きっぱり)。知らないことだらけのままやっていましたから。だから、当時はどれだけ大人たちに任せっきりにしていたのかというのを、今、痛感しながら、日々いろんな発見をしています(笑)。

◆普通に歌えた訳ではなく……
ちゃんと歌えるまでに、喉を潰したこともありましたし


――では、今回のアルバム『MEMORIES 2-Kahara All Time Covers—』の制作で発見したことはありますか?

華原:今回GLAYさんの「HOWEVER」、LUNA SEAさんの「ROSIER」という、男性の歌を歌わせてもらっているのですが、まず「HOWEVER」ほど高いキーを歌っことが今までなかったんですよ。

――「I’m proud」や「I BELIEVE」、「save your dream」なんて、相当キーが高いと思いますけど。

華原:いえ、実はここまで高くはないんですよ。なので、まず新しい発見は「まだ(ハイキーが)出るんだ!」ということ。これは私を含め、スタッフの皆さんもびっくりしていました(笑)。でも、これも普通に歌えた訳ではなく……ちゃんと歌えるまでに、喉を潰したこともありましたし。

――なるほど。では、「ROSIER」はいかがでしたか?

華原:最初は(ビートに合わせて)頭振るぐらいしかできませんでしたが(一同笑)。私が自分の曲としてきちんと歌えないと、(LUNA SEAの)ファンの方々に失礼だなと思ったんですね。だから、何度も何度も原曲を聴いて、実は服装まで変えて、歌に臨みました。

――レザーのライダースジャケットを着た姿がツイッターにあげていらっしゃいましたね!

華原:あれ、ちゃんと買ったんですよ! ブーツも買いましたし。

――そういうスタイルも含め、ロックという新しいジャンルに挑戦してみての感想は?

華原:まずはなりきることが大事だなと思いました。だから、これらの曲を歌うとき、私は“ロックを愛しているんだ”というテンションで臨むんです。「HOWEVER」はすでに今回のツアーで歌っていまして、歌が天井を突き抜けて広がっていくようなイメージ。この曲は歌っていて本当に気持ちよくて仕方がないんですよ。自分の視界、世界が広がって突き抜けていく曲というと、これまで「I BELIEVE」が自分にとってはそういう存在だったんですけれど、今回、「HOWEVER」がその存在を抜いちゃいそうなくらい。

◆2013年の『FNS歌謡祭』に出演したときに、“なぜ自分は被害者ぶっていたんだ”
“(相手に対して)申し訳ない”という反省の気持ちがすごく出てきたんです


――では、中島美嘉さんの「雪の華」はどうでしたか? オーガニックなアレンジと華原さんの声が相まって、すごく柔らかで温かみのある「雪の華」に仕上がっていました。

華原:皆さんが私のことをよく分かってくださっているので、歌声が優しく聴こえたのは、すべてアレンジャーの皆さんが作ってくれた部分だと思っています。

――そのトラックがこのような歌声、歌い方を引き出してくれた、と。

華原 そうだと思います。これが悲しいトラックだったら悲しく歌っていたと思います。

――柴咲コウさんの「かたち あるもの」も原曲とはまったく違うアレンジで。この曲もすごく優しい歌に仕上がっていましたね。

華原:そう聴こえるのは、コーラスの影響も大きいかな、と思います。柴咲コウさんは私にないものをたくさんもっていらっしゃるアーティストなので、私はどうやってそこを補おうかと考えたとき、コーラスが必要なんじゃないかなと思って、今回入れてみたんです。あと、歌に関しては、これは切ない曲ですけど、優しく歌いたいというのが自分の中にテーマとしてありました。

――切ない曲を“切ないよ~”という感情をぶつけて歌うのではなくて?

華原:切ないのは歌詞やメロディーから十分伝わってきますよね。そこをさらに切なく歌うと、押しつけがましいかなと思って。こういうことを考えて歌うようになったのも、本当に最近なんです(微笑)。昔はそんなふうには思えなかったと思うんですね。私は、自分が何かをされたと被害者ぶっていた時期が長くありまして、それが自分自身をおかしくしていったと思うんです。

――被害者ぶっていた、と。

華原:はい。これまでいろんなことがあって、歌手として復活をして……2013年の『FNS歌謡祭』に出演したときに、“なぜ自分はこれまで被害者ぶっていたんだ”、“(相手に対して)申し訳ない”という反省の気持ちがすごく出てきたんです。そしてさらに、もっと、歌というカタチで伝えていきたいというところに辿り着けたんです。被害者ぶって人を責めることに、いいことはない。そんなことをやるよりも、自分を育てることの方が大事。だからこそ、切ないときに“切ない 切ない”って歌うのは違うのかなって。

◆切ない曲を聴きたくなるときって、切ないからこそ、どういうふうにして癒してくれるか、
優しくしてくれるのかな、という“期待”もあると思うんです


――そういうのはいらない、と。

華原:そこをわざわざ主張するのは、聴き手をさらに追い込んで苦しめるだけだと思ったんですね。切ない曲を聴きたくなるときって、切ないからこそ、そこをどういうふうにして癒してくれるか、優しくしてくれるのかな、という“期待”もあると思うんです。

――うんうん、ありますね。

華原:今の華原朋美は、そういうところを歌っているんです。

――だから「雪の華」や「かたち あるもの」などは、華原さんが曲を受け止めた後、いったん優しい歌へと昇華してくれる。だからからこそ、切ない曲なのに聴いていて癒される、温かみを帯びた曲へと変化していたわけですね。じゃあ、今作のなかでもっともディープな情念ソング「難破船」もドン底感が出ないように、というアプローチもあったのですか?

華原:いえ。この歌は別ですね(笑)。以前、加藤登紀子さんとお会いしたときに、「この曲はね、私が経験したからこそ書けたの。朋ちゃん、「難破船」を経験した女は強いのよ」と言われまして。“あぁ確かに”と思ったんですね。でも同時に寂しいなとも思ったんです。こういうことはなるべく女性なら経験したくないですから。でも、それを経験しちゃった華原朋美というのは、隠していないので、皆さんすでにわかってらっしゃる。それなら、この歌に関しては、そこを素直に伝える歌を歌うべきだと思いました。なぜなら(経験してしまった自分は)この曲すべてに共感してしまったので。

――ですよね(苦笑)。

華原:こういう経験を今している女性もたくさんいらっしゃるんですよ。私のファンのなかにも「朋ちゃんと同じ経験して、私はまだ彷徨ってます。朋ちゃんはどうやってそこに辿り着いたの?」というお手紙をくれる方が多いんですけど。そういう女の子の本当の気持ちをまさに代弁している曲でもあるんですよね。

◆インタビュー(2)へ
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