去る10月1日、ロチェスターを皮切りに、最新アルバム『贖罪の化身(REDEEMER OF SOULS)』に伴う北米ツアーを開始したジューダス・プリースト。そらからまだ間もない10月9日、ニューヨークでの公演を目撃する機会に恵まれた。会場はブルックリンにあるバークレーズ・センター。NBAのニューヨーク・ニックスのホーム・コートとしても知られる巨大アリーナだ。

◆ジューダス・プリースト画像

今回のツアーでスペシャル・ゲストに起用されているのは、スティール・パンサー。異色な顔合わせだと感じる読者もいるかもしれないが、実はこのバンドのギタリストであるサッチェルには、かつてロブ・ハルフォードが組んでいたファイトの一員(名義はラス・パリッシュ)として活躍していた過去もある。当時からの縁がここで結実した、という言い方もできるかもしれない。「きょうの仕事をちゃんとやらないと、ギャラの75ドルがもらえないんだ」とか「うちのボーカルは66歳で、顔のたるみをのばす整形手術を6回もしてる」とか、例によって真実であるはずもない発言を連発しながらオーディエンスの笑いをとり、確かな演奏力と大人向きの下世話さで喝采を浴び、場内の空気を暖めるという最重要な任務を見事に完遂していた。

スティール・パンサーの演奏終了から30分ほど経過した頃、場内に鳴り響いたのはブラック・サバスの「ウォー・ピッグス」。曲が途切れ、場内が暗転すると、聴こえてきたのは『贖罪の化身』に収められていた「進撃の咆哮(BATTLE CRY)」のイントロだ。そしてステージを覆っていた幕が振り落とされると、やはり最新アルバムの冒頭に収められていた「ドラゴノート」が炸裂。客席には怒号にも似た歓声が渦巻いた。

ステージ・セットや演出のあり方についても1970年代から先駆的存在だった彼らだが、今回のセットは一見するととてもシンプルなもの。しかし、その背景はほぼ全面がLEDスクリーンと言っていいほどで、さまざまな映像を用いながら各楽曲の持つ世界観が強調されていく。いわゆるパイロの類についてはこの公演では用いられていなかったが(会場や地域によって規制のあり方も異なるため、この日の演出内容がすべてだとは限らないのだ)、そこに映し出される炎の映像があまりにもリアルで、本当にステージが火の海と化したかのような錯覚をおぼえるほどの場面もあった。

演奏内容について特筆すべきは、まず、あくまで最新アルバムを軸に据えた構成になっている事実だろう。別掲のセットリストをご参照いただければ明らかであるように、いわゆるSEとしての使用を含めれば、この夜のライヴでは『贖罪の化身』から全6曲が披露されていたことになる。古い歴史を持つバンドの新作に伴うツアーの場合、新曲が登場すると場内の熱気が冷めたり、「新曲はもう要らねえぞ!」といった野次が飛んだりすることも少なくなく、筆者も欧米では幾度もそうした場面を目撃してきた。が、この夜のオーディエンスについてはまったくそうしたことはなく、むしろ最新作からのナンバーを一緒に歌っている観客の姿が目についたほどだった。ロブ・ハルフォードがMCで、「君たちは最高のヘヴィ・メタル・ファンだ」とまで絶賛するのも当然だろう。さらに彼は客席に向かい、「長年のご愛顧に感謝するよ。我々にアルバム・チャートの最高ランキングをもたらしてくれてありがとう」とも語りかけた。そう、『贖罪の化身』は全米チャートで初登場6位(カナダではさらに上をいく5位)を記録しており、これはジューダス・プリーストにとって過去最高順位でもあるのだ。始動から40周年を迎えているバンドがそうした記録を打ち立てたという事実は、もっと広く注目されていいはずだ。

また、2014年の今年は、1984年にリリースされた『背徳の掟(DEFENDERS OF THE FAITH)』にとっての30周年の年でもある。それにちなみながら、同作からも3曲が登場。他にもこの夜はさまざまな時代の楽曲が顔を並べていたが、緩急を描きながらも一貫性を感じさせるその流れは、いわゆる“バラエティ豊かな構成”といったものとは一線を画するものだった。しかもこのツアーにおいて、彼らはいまのところ「ペインキラー」も「エレクトリック・アイ」もプレイしていない。が、それでも何かが欠けているといった印象が皆無だったこと、そして前回の来日時にも新旧のファンからポジティヴな反応を獲得していた新ギタリスト、リッチー・フォークナーの存在感がさらに強まっていた事実を付け加えておきたい。

このツアーはこれから先もまだまだ続く。2012年2月以来となる来日公演実現についてもそろそろ具体的な噂が聞こえ始めているが、一刻も早く、このツアーを日本で体感したいところだ。

文・撮影:増田勇一

<JUDAS PRIEST@BARCLAYS CENTER, Brooklyn NY 2014.10.09>
SE:BATTLE CRY(※)
1.DRAGONAUT(※)
2.METAL GODS
3.DEVIL’S CHILD
4.VICTIM OF CHANGES
5.HALLS OF VALHALLA(※)
6.LOVE BITES(※※)
7.MARCH OF THE DAMNED(※)
8.TURBO LOVER
9.REDEEMER OF SOULS(※)
10.BEYOND THE REALMS OF DEATH
11.JAWBREAKER(※※)
12.BREAKING THE LAW
13.HELL BENT FOR LEATHER
-encore-
14.YOU’VE GOT ANTHER THING COMING
15.LIVING AFTER MIDNIGHT
16.DEFENDERS OF THE FAITH(※※)
SE:BEGINNING OF THE END(※)

※=『贖罪の化身』収録曲
※※=『背徳の掟』収録曲