【インタビュー】KAGERO 萩原朋学「自分の好きな音楽を聴くときって100均のイヤホンでも良いんですよ」

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◆どのパートが重要なのかっていうのが最初の段階でさっぱりわからないんですよ。
あたしの考えてることと白水の考えていることはだいたい違うんで。

──その、投げてくる状態というのは具体的にはどういう形なんですか?

萩原:いや、それこそさっき言ったアコギで弾いてくるとか。あとは歯笛が送られてくるとか(笑)。

一同:(笑)。

RUPPA:それを智恵ちゃんが譜面にしてくれるっていう。

──あ、曲は全部譜面に起こしてるんですか?

萩原:全部じゃないよね? 全部してんの?

菊池:してない。歯笛パートだけ。でもそれはRUPPA君も書いてるもんね?

RUPPA:うん……ちょっとね、ツラいんですよね。聴けないんですよ歯笛の音が。「一回聴いたから智恵ちゃん譜面にしてくれないかな?」って(笑)。

──それはなかなか普段知ることができない制作過程ですね(笑)。

萩原:そうですね(笑)。だから(白水が)メロディとコード進行を持ってきて。割と他の作る人より具体的な注文が多いと思います。

──白水さんのイメージがあってそこに近づけていくような感じでしょうか。

萩原:最初はそうですね。でもそこで止まっちゃうと結局そのイメージの上にはいかないから、そこはみんなあがくんだろうけど。

RUPPA:「こういう感じでやりたい」って言ったことと、白水がやってること自体がベースだけになったときに違うじゃん、という話をよくするんですね。「でも、他のパートがこうなったら自分はこれで良いはずだから、今は違うかもしれないけどこうやってみて」という。

萩原:そうだね。それは凄く多いね。

RUPPA:曲が複雑になってきたというか、知っている感じで突き進むことが減ってきたと思うんですけど。その中で割と誤解を生みやすいんですよね、曲を作っている間に。

──誤解、ですか?

RUPPA:うん。どのパートが重要なのかっていうのが最初の段階でさっぱりわからないんですよ。あたしの考えてることと白水の考えていることはだいたい違うんで。

一同:(笑)。

RUPPA:お互いそれをわかっているので、無理なので。

──寄せて行くのが無理?

RUPPA:寄せると変な所に寄りそうだから、それは避けたくて。で、ハギと智恵ちゃんが仕上がってくるのを待つ。

──そこからまた変わってくるんですか?

RUPPA:「だからあたしはこっちだって言ったじゃん」ってなったり、そうなるならこれでしょ、とか(笑)。でもこうなったけどサックスはこれで良い、となったらそれはそれで良いし。それで録音してライブになったらもうちょっと寄せようか、とか。リズムの出し方だったりとかある程度ずらした(ものになる)。白水とハギ対あたしと智恵ちゃんという構図で録音したものは、もうちょい寄り合うというか。

萩原:そうだね。

RUPPA:ライブになったらこの形が伝わるかわからないから、もうちょっと寄せてひとつものとしてやってみようかとか。それは場合によりけりなので。

──今回のアルバムを聴いた人がライブに行ったら……

RUPPA:もう変わってる。

萩原:もう変わってますね(笑)。

菊池:ははははは!

──ベスト盤もアレンジし直しているのにライブでまた変わっているとおっしゃってましたよね。

萩原:そうですね、それは今回も同じですね。伝統芸能で(笑)。

一同:(笑)。

RUPPA:昨日もスタジオに入ってて、新しいキメをやって白水が「これが大事だ」とか言ってたけど(笑)。

萩原:作ってるときに、最初に曲のタネを持ってきている人はそれが咲いたら何色になるかのかある程度見えてると思うんですよ。で、そうなって欲しいと思ってやってると思うから。普通の人だったら、4人でそれをすり合わせるときに、ある程度こちらに寄せてくると思うんですけど、あの人(白水)は寄せないから、絶対。もう自分が出来上がってる状態で、俺らがそれをわかる所まで行かないと、それまでが凄くしんどいんですけど。さっきRUPPAさんが言ったように、「なんでこの曲でそのベースになるんだよ」っていう瞬間が多々あるんですよ。でもそういう色々を経てゴールに行ってみると、形になるんだなって。

──その時は最初に白水さんが思い描いた色の花が咲いてるわけですか?

萩原:たぶん、結果はどうでも良いんだと思うんですよ。最初に見えていた色であろうがそうでなかろうが、それが良ければ良いと思うんですけど。たぶん曲を作る人はみんなそう思っているんだろうけど、白水さんは作る過程で「こうなるはずだ!」というのが人より強いんだと思います(笑)。

RUPPA:(笑)。

萩原:でもそれがそうならなかったとして、別の形の良い物であればたぶんそのままやってますね。

RUPPA:一回やめている曲もあるし、作り直している曲もあるし。

萩原:だから「Pile Bunker」と「13 -Thirteen-」は大変だったんじゃないですかね。

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