若き天才ミュージシャン、ジェフ・バックリィ誕生への軌跡を描いた映画『グッバイ・アンド・ハロー~父からの贈りもの~』の10月18日公開を記念し、<Jeff Buckley Night>がGibsonのショウルームで開催された。中川五郎と高田漣をゲストに迎え、映像とともに『グッバイ・アンド・ハロー~父からの贈りもの~』の魅力が熱く語られるとともに、ミニアコースティックライブも行われ、貴重な一夜限りのイベントが催された。

ジェフ・バックリィの名盤『Grace』の対訳やライナーノーツを書いている中川五郎と、ジェフ同様に偉大な父を持つ高田漣は、和やかに話し始めた。

中川五郎:こんばんは。僕はティム・バックリィもジェフ・バックリィも大好きでまさか2人のこんな映画が出来上がるなんて思ってもみなかったです。今日はこんな素敵なイベントに呼んでもらえてとても光栄です。宜しく御願いします。

高田漣:そんなに偉大だとは思いませんが親子で音楽やっています。今日は宜しく御願い致します。
──早速ですが、ジェフやティムの魅力についてお願いします。

中川五郎:僕は1960年代のジェフの父のティムの音楽が好きでアルバムを全部聴いていたんだけど、その息子がアルバムを出すと聞いて『Grace』を聴いたんだけど、多分、ティムもジェフも共通する大きなミュージシャンだったと思う。ジェフがこうしたいと思った音楽は結果的に父に近いものになった。彼は天才のボーカリストであり、歌や声がすごい人。今日はそんなジェフの曲を僕にやってくれないかと、無茶振りがあって。僕はそんな事はできない不器用な人間なんです。どんなに素晴らしい日本のミュージシャンでも、結果としてマネする事ができない唯一無味のメロディ、ストーリーで出来上がっているのは、ジェフ・バックリーだなと思いました。彼の存在はすごいと思います。

高田漣:すごく音楽的に古いものをただ演奏するんじゃなくて、さっき五郎さんも言っていたけど、何か奥底から出してくるようなものが、結果としてすごく印象的でした。

──中川さんは、これまでジェフ本人に会ってインタビューした時の様子はどうでしたか?

中川五郎:はい。3度ほど会ってインタビューの経験があります。ジェフが『Grace』を出す前後に僕はNYで“ウエットランド”というライブハウスでまだデビューするかしない頃のジェフ・バックリィのバンドのステージを観て、それはすごく印象的なステージでした。NYの小さなライブハウスで観た時には、本当にすごかったけれど、ちょっとはずすとライブが退屈な感じになる。でも、それだけ自分自身のやっている音楽に正直で、あまり器用ではないかもしれない。それでも一度、彼の魂に火がついて自分の世界に入り込んだりすると、聴いているだけで鳥肌が立ってしまう…そんな音楽をする人。世界中の人が聴いても言葉がなくても、人を動かすような人なんだと彼のステージを見る度に思いました。

──ステージを離れたジェフは?

中川五郎:スケベでしたよ(笑)そしてあんまりインタビューしてもしゃべってくれない人です。彼の場合、自分の心を吹き出して作曲を作る人に対して理屈ばかり並べても、ダメなんですね。わかってはいるんですが…(笑)

──高田さんは偉大な父を持つというので共通点があるかと思いますが…。

高田漣:ジェフとの違いは長く両親と一緒に暮らし、一緒に演奏する機会もあったので、彼の両親と音楽に対して接し方は全然違うと思います。単純にうまく言葉では伝えられないし…でも、時々血とか感じる時があってどうしてこういう曲を歌おうと思ったのか言えないんですが、導かれるように気が付くとそんな事をしている…というのはありますよね。

──中川さん、父親からの視点から見た時に高田さん親子と何か比較する部分はありましたか?

中川五郎:本当に羨ましい。すばらしい親子だと思います。渡ちゃんは漣君のやる事に対して喜びを感じていたし、小さい時からくっついて来て色々な楽器を演奏していたんだけど、それがまた嬉しそうだった。

──この映画は父と息子の関係が深く見られると思ったんですが、感想含めてどうでしたか?

中川五郎:単純にいちジェフファンとして観ていたけど、それだけではない。もっと映画として書こうと思えば書けたと思うけど、限られた時間の中で描かれていて良かった。逆にジェフ・バックリィをちゃんと聴きたくなったし、どうだったか調べたくなるような不思議な映画でしたね。映画を観てこの人絶対もてただろうなというのもすごく描かれていて良かった。

──ティムの追悼が行われる日に焦点を当てて描かれていますが、映画の中のジェフを演じたペン・バッジリーのパフォーマンンスはどうでしたか?

中川五郎:ペン・バッジリーが歌を歌ったり似せて演じているけど、それはやっぱり別なもの。だけど、うしろ姿やちょっとしたしぐさ、傾き具合とかそっくり。僕は過去にコンサートやインタビューで彼をまじかで見た事があるけれど、ジェフのたたずまいとか印象に残る歩き方とかそっくりだった。多分、ペンは過去の彼の映像などを見て研究、観察して似せたのかもしれないけど、もしかしたら持って生まれた共通する何かがあった2人なのかもしれない。ジェフのファンがこの映画を観て自分の中のジェフ像が壊わされるとしたら観たくないと思うかもしれないけど、過去に本人に会った事のある僕がみてもそっくりで衝撃をうけました。

高田漣:ペンはジェフを演じた事について違和感はなかった。昔、伝記映画のロックスターを描いたものはどうしてもファンであればあるほどどれ位似ているか歌が違うとか観ちゃうんですが、あんまりそんな事を考えずに観てしまいました。演奏も含めて多分、今思うと本人と同一化していると思いました。

中川五郎:でも、本当ひどい男ですよね?だって奥さんいるのにさ…(場内笑)ちょっと悔しい。(笑)

──この映画の見どころについてはいかがでしょうか?

中川五郎:見どころというか、ジェフがギターを弾くシーンも、ギターが弾ける人が観てもちゃんと弾いてるとわかるし、当時本人達が使っていたギターも同じブランドのものを使ってたり、細部にわたる部分にこだわりを持って作ったんだなぁ~というのがわかって楽しかったです。

10月14日(火)@Gibson Brands Showroom TOKYOにて
【ゲスト】中川五郎、高田漣
中川五郎さん:ジェフ・バックリィの歌詞・対訳や、『グレース』のライナーノーツを担当。フォークシンガーとして現在も精力的にLIVE活動中。「父に対する息子の恩讐を描くと同時に、音楽をないがしろにすることなく、どちらをも重視しているところが、この作品を傑作へと導いている」
高田漣:マルチ弦楽器奏者で、数々のミュージシャンのレコーディングやライブで活躍中、日本を代表するフォークシンガー・高田渡氏の長男。「90年代に青春を過ごした僕にとってジェフ・バックリィがいた数年間は天国のような時間でした。この物語は天才と呼ばれた親子の時空を超えた物語であり、同時にただの家族の物語でもある。今こうしてティムとジェフにグッドバイとハローを言える映画に出会えて本当に嬉しいです。」




映画『グッバイ・アンド・ハロー~父からの贈りもの~』
1991年、無名のミュージシャンだった24歳のジェフ・バックリィ(ペン・バッジリー)。ニューヨークの聖アン教会で開催される、フォーク・ロックの伝説的ミュージシャンだったほぼ面識のない父ティム・バックリーの追悼コンサートに呼ばれる。コンサートまでの日々、ジェフは立ちはだかる自己喪失感や亡き父の存在に葛藤するが、コンサートの仕事を手伝う魅力的な女性アリー(イモージェン・プーツ)による愛情のこもった助けのもと、ステージに立つ勇気を得る。そして、父の曲を歌う魂を揺さぶるような歌声は、観客を魅了するのだった…。
出演:ペン・バッジリー「ゴシップガール」、イモージェン・プーツ『ニード・フォー・スピード』、ベン・ローゼンフィールド
監督・脚本:ダニエル・アルグラント
2012年/アメリカ/104min
(C)Buckley Greetings, Inc.All Rights Reserved.
10月18日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国順次ロードショー