“作家の音楽棚、ミュージシャンの本棚”をテーマに、ポルノグラフィティのギタリスト新藤晴一と小説家の百田尚樹が対談を行なった。

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百田尚樹は放送作家として『探偵!ナイトスクープ』など人気番組の構成を手掛け、50歳の時に『永遠の0』で作家デビュー。その後も次々とヒット作を生み出し、『海賊とよばれた男』で本屋大賞を受賞した。最新作となる『フォルトゥナの瞳』は、本屋大賞受賞後初の長編小説であり、人間の運命を描いたものだ。ほぼ毎日クラシックを聴いているという百田氏は2013年、「運命」や「白鳥の湖」などの不朽の名曲から、『永遠の0』『海賊とよばれた男』を執筆中に聴いていた曲まで計26曲を紹介した『至高の音楽 クラシック 永遠の名曲』を発表するなど、音楽通としても知られている。

一方の新藤晴一は、言わずと知れたポルノグラフィティのギタリストであり、幾多のヒット曲の作詞を担当する作詞家でもある。最新曲「ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~」は“聞きんさい”をテーマに制作された寒くなる時期に聞いてほしいバラードナンバーだ。また、2010年には自身執筆による処女作『時の尾』で小説家デビューも果たしている。クラシック音楽のエッセイを執筆した作家と、小説を執筆したミュージシャンの対談では、果たしてどんな言葉が飛び交うか。初対面のふたりが「よろしくお願いします!」と笑顔で交わした挨拶の後、クラシック音楽について質問を切り出したのは新藤晴一。

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■言葉はまず直接頭に訴えかけますよね
■音楽の場合はまず最初に心にきます──百田尚樹

新藤:『至高の音楽』を読ませていただいて。今、このガイドに沿ってちょうど家でいくつかCDを買って聴いてるところです。

百田:ありがとうございます。

新藤:その中にも“いい音楽は誰がやってもいい”みたいなことを書かれているじゃないですか。

百田:そうですね、“名曲は誰が演奏してもいいんだ”と。

新藤:やっぱり家では古いものを聴かれることが多いんですか?

百田:けっこう古いです、はい。

新藤:めちゃくちゃ持ってらっしゃるんでしょう?

百田:ええ、2万枚ぐらい(笑)。

新藤:2万枚! 直接のインスピレーションというものではないかもしれないですけど、やっぱり何か背中を押されるみたいなことを音楽から受けるということですか?

百田:ありますね。音楽の力ってほんとに大きいと思います。歌曲とかオペラは別ですけど、特にクラシックの場合は基本的にインストゥルメンタルじゃないですか。器楽曲なだけにイメージを固定しないんですけど、強烈に心に刺さってくる感じですね。頭に刺さってくるんではなくて心にくるという。言葉はまず直接頭に訴えかけますよね。それから頭を通して心にくるんですが、音楽の場合はまず最初に心にきますね。

新藤:ああ、もっともっと本能的な。

百田:そんな感じがします。晴一さんの本棚はどんな感じでしょうか? 私自身、作家として興味があります。

新藤:僕は中学生ぐらいから小説を読み出したんです。その頃、まあまあ怖い先輩たちがいっぱいいて。目が合うと絡まれるので、机の下でずーっと本を読んでたのが始まりなんですけど(笑)。

百田:ははは(笑)。

新藤:田舎だったんです、広島の……。

百田:因島ですよね。

新藤:はい。だったので、やっぱり本の中で見せてもらえる世界、例えば村上春樹さんの都会的な、ちょっとクールに恋愛してっていうのがすごくカッコいいと思ったり、そんなところから始まって。やっぱりずっと小説が多いですね。

百田:晴一さんも小説を書かれてますよね。

新藤:そうなんですよ。また書きたいんですけどね……なかなか難しいですね!

百田:晴一さんが書いた『時の尾』、なかなかこれだけの厚いものを書くのって大変なことですよ。

新藤:いや、もう……恐縮です。

百田:時間かかったでしょう?

新藤:ライヴの後とかによく書いてましたね。頭が冴えてる時に。

百田:へぇ~!

新藤:自分で書いてみても思うんですけど、もう書き上げるって執念に似た何かですよね。

百田:そうですね。これが書き終わらないと、この苦しさからは逃れられないので。だから変な話ですけど、私の場合は早く逃れたいと思って頑張って書く感じですね。

新藤:もちろん詩や俳句みたいな短いものも推敲を重ねて長い時間苦しむものなんでしょうけど。やっぱり表現するのに、まず最初はパッションみたいな塊があって、それを形にするには、小説とか1時間もあるようなクラシックの交響曲ってもう執念の世界ですよね。

百田:そうですね。ほんとにパッションの持続が大変ですよね。

新藤:そうそう、そう思います。

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