【インタビュー】AREA51「極限まで詰め込める本場の人たちのプレイで強力に進化できた」

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海外でも評価の高い技巧派・様式美メタルユニットAREA51が、4作目となるフルアルバム『Judge the JOKER』を11月12日にリリースする。メロディアスでありながらテクニカルなプレイ、日本語の歌詞を乗せたポップなメロディというAREA51のサウンドは、ドラムにSoilworkのDirk Verbeuren、ベースにSymphony XのMike LePond、キーボードにJames LaBrieバンドのMatt Guilloryという、世界屈指のテクニシャンたちを迎えたことによってさらに研ぎ澄まされ、完成度を高めている。新作『Judge the JOKER』のことからAREA51の音作りの方法、そしてギターテクニックの秘訣まで、Kate(Vo)と石野洋一郎(Gt)に大いに語ってもらった。

◆AREA51~拡大画像~

■AREA51の当初からのコンセプトとしてサウンドとしてはガッツリとメタルをやるのが第一
■キャッチーにするためにソロを短くしたり速弾きをしないという妥協は絶対にしない


AREA51:
Kate Cain(Vo)
石野洋一郎(G)
Additional Musicians:
Dirk Verbeuren(Dr.Soilwork)
Mike LePond(Ba.Symphony X)
Matt Guillory(Key solo.James Labrie)

――AREA51という名前からは、米軍の施設だったり野球のイチロー選手だったり、色々連想しますけど、どんな理由でこの名前を?

石野洋一郎(以下、石野):アーテンションというバンドの曲名からとったんです。その曲がそれほどすごく好きというわけでもなかったんですけど、数字が入ってるのもよかったし、文字の見た目もいいからって、まあなんとなくですね(笑)。

――これまでの3枚のアルバムは2~3年間隔でリリースしてきましたが、今回は前作から4年半と、ちょっと長いブランクですね。

石野:じっくり作りたいっていうのもあったんですが、実は1年半ほど前には出せそうになっていたんです。でも自分でレーベルを作ってそこから出そうってことになって。

――AREA51ではどのように曲作りするんですか?

石野:最初に、大まかなデモを僕が作るんです。浮かんだリズムとかリフとかコードの動きとかを打ち込んで、ある程度アレンジもする。このときは作曲家目線で作るんで、ギターも持たないんです。もちろんギターフレーズありきで作る曲もありますけど、どんなギターを弾こうかと考えるのは、デモにギターを入れる段階になってからですね。

Kate:曲については私はノータッチで、デモをもらってそれを聴いて歌詞をつける、その時に最初のインスピレーションを大事にしています。この曲は重たいなと思ったら重たいテーマのシナリオを自分の中で作る、メロディがポップだったら明るいとか前向きな感じにするとか。曲にインスパイアされて物語を作って、それを歌詞にしていくんです。石野さんからは、歌詞に関する要求はまったくないんですよ。私が勝手に考えたことを勝手に歌詞にしていいよってことなんで(笑)。

――音を作る担当と、その音のイメージを言葉にする担当の完全分業なんですね。

石野:そうそう、そんな感じです。ただヴォーカルを録る段階で、もう一音付け足したらリズムが良くなるよ、とか提案したりはします。それでその場で歌詞が変わることはありますね。Kateは語彙が多いので、すぐに別の言葉が出てくるんです。

――AREA51のサウンドの特徴というと、テクニカルでハード、クラシカルで壮大、かつポップということですよね。もっと具体的に言うと、インペリテリやイングヴェイのサウンドに、ポップな女声ヴォーカルが乗っているという。

石野:まったくその通り(笑)、間違いないです。

――その中で、今回とくにどんな音の世界を目指したんですか?

石野:まさに今の話の通り、サウンドとしてはガッツリとメタルをやるのが第一。キャッチーにしたり聴きやすくするために、ソロを短くしたり、速弾きをしないでメロディアスにしたりとか、そういう妥協はしない。その代わり、キャッチーにする部分は全部歌に任せる。そういうのがAREA51の当初からのコンセプトなんです。それにプラスして、今回は本場のプレイヤーに演奏をお願いしてサウンドをより強力に進化させ、歌のポップさも同じくらい進化させるという。今までのコンセプトをさらに強力に前進させるというのが、今回目指したところでした。

――Kateさんの歌詞については?

Kate:今回は曲調がバラエティに富んでいたので、全体のイメージを先に作るのではなくて、まずそれぞれの曲調に合う歌詞をつけて、そこから各曲のタイトルへ、さらに全体へとつないでいくという感じでした。歌詞はいつもは抽象的な表現が多いんですが、今回は初めてメッセージが強い歌詞も作ってみました。演奏がハードに激しくなったので、それに触発された部分もあると思います。

――しかし今回はまたスゴいメンバーを揃えましたね。この世界では知る人ぞ知るテクニシャンばかり。

石野:世界の本場の人たちとやりたかったんです。もちろん、これまで聴いていてすごいなあと思った人から選んだんですけど、そうはいってもやっぱり、コンタクトがとれそうとか、ある程度やってもらえる可能性があって、僕らの曲に合う人、ということで。知らないのにいきなりマイク・ポートノイに頼むとか無理だし(笑)。

――AREA51に合いそうな人ってどんな人ですか?

石野:極限まで詰め込める人(笑)。それもいざというときに。僕らのテクニカルな部分って、終始やりまくるんじゃなくて基本は歌で、ここというときに演奏でガッツリ行くっていう感じなので。そんなイメージで、最初にSoilworkが頭に浮かんだんです。ドラマーのダーク(Dirk Verbeuren)は色々なプロジェクトをやってて幅も広いし、AREA51にも対応できるだろうと思いました。僕らの前のアルバムはスウェーデンでミックスしたんですけど、今回頼んだ3人はみんなそこで仕事したことがあるんです。だから“オレも前のアルバムそこで作ったんだけど”みたいな感じでダークに連絡してデモとビデオを送ったんです。すぐに返事をくれました。

――どんな反応だったんですか?

石野:“いいねぇ”って。曲も気に入ったからぜひやりたいと。最初は、ダークってブラストやデス以外もできるのか心配だったんですけど、彼の方から“オレにはブラストのイメージがあるだろうけど、プレイスタイルは曲に合わせられるよ”って言ってくれた。それでダークが決まって、あとは“ダークがやるって言ってるけど”って連絡したら芋づる式に決まりました(笑)。

――レコーディングはどんな感じで進めたんですか?

石野:それぞれのパートをそれぞれに重ねてもらうという。別々に録って重ねていく方法です。

――ではこの3人と一緒にスタジオでプレイしたわけじゃないんですね?

石野:そうです。実際に顔を合わせたわけじゃなくて。データのやり取りで作ったので。こっちで作ったデモに対して、どういう感じで叩くのかダークがデモを作ってくれて、さらにそれを聴いて意図と違うところは指示を出したり。大胆なアイデアをインプットしてくれて、それを採用した部分も多いです。ここは歌だからちょっと抑えるとか、作曲者の意図をすごくうまく汲み取った上でインプットしてくれるんですよね。

Kate:一緒にスタジオに入ってないのに、意図がちゃんと伝わっていて。なんかバンドのメンバーだったみたいな感じ、よくあるビジネスライクな感じは全然なかったですね。ただ、私はメタルのシーンを殆ど知らないので、以前ゲストで来てくれたインペリテリのロブも全然わからなくて恐縮でした。今回も、スゴいメンバーが決まったって石野さんは一人で興奮してたという(笑)。この温度差って贅沢だなと思いました。

――本作での彼らのプレイで聴きどころは?

石野:「Valkyrja」はいいと思いますね。ダークが参加してくれるのが決まってから、彼のプレイをイメージして作った曲です。

――超高速ナンバーですね。

石野:そうです。彼がバンドメンバーのように対応してくれているのがわかったので、それなら目いっぱい踏む曲を作ってやろうと(笑)。その次のバラード「No More Pain (why not me?)」は、まったく逆のダークですね。速いのを叩く彼はみんな知ってると思うけど、バラードの彼のプレイはすごく感情が溢れてて、ミックスすると聴こえなくなっちゃうくらいのスネアのゴースト(装飾音)も入れ方がすごくいい。それもやっぱり彼が曲をよく理解しているから、我を出さずに曲に必要な最小限のプレイで感情を出せるんだと思います。この2曲の対比はすごく面白いです。

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