【インタビュー】Salley、アイリッシュな響きとダンサブルなビートにせつない恋物語が強く胸を打つ「冬が来る」

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デビュー1年目の集大成アルバム『フューシャ』から約半年を経て、次のステップへと踏み出したSalleyから届いた冬の贈り物。ニューシングル「冬が来る」は、Salleyの象徴であるアイリッシュな響きとダンサブルなビートに乗せ、記憶の中のせつない恋物語が強く胸を打つドラマチックな1曲。カップリングにしておくのはもったいないほどの名バラード「冬が咲く」とともに、上口浩平(G)のメロディメイカーとしての才能と、うらら(Vo)の歌声の無垢な輝きを堪能できる最高の冬シングルだ。

◆Salley~拡大画像~

■リズムは、うららに歌ってもらうことでイメージが変わったんです
■いつもの自分の音で弾いちゃうとラテンの熱いおじさんたちが出てきちゃう


▲「冬が来る」初回限定盤
▲「冬が来る」通常盤

──お久しぶりです。ファーストアルバムが出て、ツアーをやった時以来なので、半年ぶりですか。この半年間は、主に制作を?

上口浩平(以下、上口):そうですね。アルバムのツアー以降は、制作に重きを置いてました。

──新曲「冬が来る」も、その時期に作った曲?

うらら:いえ、これはもともとデビュー前に作っていた曲です。たぶん夏ぐらいだったんですけど、デモをもらった時に“これは冬だ”と思ってしまって、勝手に冬の曲にしちゃいました(笑)。上口くんは、そのつもりはまったくなかったらしいんですけど。

上口:自分的には、熱い感じの曲になるのかな?という感じで、“こんな曲できたよ”ってうららに送って。それが「冬が来る」になって帰って来たので、最初は戸惑いがありましたね。かといって、曲の最終的な形は、ふたりのセンスが合わさったものになればそれでいいと思うので、全然ありだなと。

──この曲は、ナンバリングでいうと?

うらら:あ、私この間、対応表を作ったんですよ。

──それは助かります(笑)。(*ファンの方はご存知の通り、Salleyの楽曲には制作順にナンバリングが振られている)

うらら:たまたま、“ラララ38”が見つからないという話になって、探してる時に、“もしかしてタイトルが変わって違う曲になってるのかな?”と思って、“ラララ3=赤い靴”とか、対応表を全部自分で作って。で、「冬が来る」は28ぐらいだったんです。もっと古いと思っていたんですけど、「愛の言葉」とか「青い鳥」よりも全然あとだった。28ということは、デビュー前にできていた最後の曲ぐらいですね。

上口:最初にこの曲をディレクターに聴かせた時に、ちょっと違う感じだねということで、一回お蔵入りしたというか。

──もしかして、『フューシャ』に入れようという話もあったり?

うらら:一瞬ありましたね。でも入れたくないなって心のどこかで思っていたら、自然と入らなかった。入れたくないです、と言ったわけでもないんですけど。

──シングルとして陽の目を浴びさせたい曲だった。

うらら:そうですね。そうなったらいいなと思っていました。

──そもそも、この曲のどのへんに冬を感じたんですか。メロディライン?

うらら:メロディラインです。最初のデモには四つ打ちとギターだけが入っていたんですけど、メロディがすごくせつないなと思って、冬にしちゃった。アレンジが出来上がってから、“あ、そういう感じだったんだ”って(笑)。

──リズム、ラテンぽいですよね。そこだけ聴くと、確かに熱い感じもある。

上口:それも、うららに歌ってもらうことでイメージが変わったんですよ。ギターの音も、歪みを足して。いつもの自分の音で弾いちゃうと、ラテンの熱いおじさんたちが出てきちゃうので(笑)。

──あはは。マラカス振りながら。

上口:そうならないように、熱すぎないように。さじ加減が面白かったです。

──それにしても、せつない歌詞ですよね。この次に「冬が咲く」があってよかった。「冬が来る」だけじゃせつなさの行き場がないというか。

うらら:冬を嫌いになりそうになる(笑)。

──そこまでは言わないけれども(笑)。でもセツナ度は相当高いですよ。

うらら:シングルにするとなった時に、もうちょっとぐっとせつないほうがいいんじゃないかということで、二番のサビの歌詞をちょっと変えたり、言葉を入れ替えたりしてるんですね。もともとメロディ的にも、幸せな感じじゃないと思ったし。だからといって、今離れていく恋人にすがって、“行かないで~”という感じでもないなと。

──ああ、確かに。ちょっと前の話ですよねこれ。せつない恋の思い出を思い出すという。

うらら:季節の変わり目が来た時に、ふと思い出して胸が痛くなるような。失恋してもう歩けないという感じではなくて、それでも前を向いて、気づいたらここまで来てたな、という感じにしたかったので。

──ちなみに、実話度何パーセントですか(笑)。

うらら:うーん…15パーセントぐらい?

──微妙なラインだ(笑)。あるといえばある。

うらら:まったくないとも言いきれない(笑)。でも私は基本、過去を思い出す時に“そんなこともあって、今があるんだな。今が楽しいな”と思うタイプなので。それを、無理矢理引きずってる感を出したというか(笑)。

──サウンド的には王道じゃないですか。Salleyのシングルらしい曲。アイリッシュっぽいギターや、ティン・ホイッスルのような音も入って。

上口:まあ、そうですね。

──1stアルバムを出したあとの一発目のシングルなので、次にどこへ向かうのか、すごく注目してたんですけども。得意なものをまっすぐ出してきたなと思いました。サウンド的なテーマは、何かありました?

上口:次にやりたいことも見定めつつ、「冬が来る」は前からあった曲なので、それを今の自分の解釈でどう表現するか。特にミックスやマスタリングのやり方なんですけど、今回は2ミックス(ステレオ2チャンネルにミックスしたもの)をそのまま使っているんです。今まではマスタリングで音量(レベル)を稼いだり、ハイ(高音域)を稼いだり、いろいろしてくれたんですけど、たとえばシンバルのハイの部分で、ナチュラルじゃないところをブーストさせてしまったり、無理矢理持ち上げています感があって。

──ああ~。はい。

上口:今までの自分だったら、音量を稼いだほうがいいのかな?って思っていたんですけど。でも結局は長く聴いてもらいたいから、あんまり音をパンパンに詰め込むと耳が疲れちゃうし、音の余白があったほうが生々しくて音楽的だなと思ったんで。「冬が来る」は曲自体はアップテンポなんですけど、楽器の音色はナチュラルな感じになっていて、今までの「赤い靴」とかシングルの曲に比べると、入力のレベルは下がってるんですけど、そのぶんシンバルとか、うららのブレス、歯擦音(しさつおん)とかの余白に余裕があって、ミックス的には好きなんですよね。

──すごくナチュラルな聴こえ方です。

上口:最近は、それが一番やりたいことなので。周りと比較してどうとかじゃなくて、今自分が出したい音をちゃんと作っていかないと、周りと同じになっちゃうし。次の作品も、もっとそれを反映させたものにしていきたいなと思っています。

──繊細な音の聴こえ方の良し悪しが、これからのテーマ?

上口:そうですね。自分たちが好きなアーティストのCDを聴いて、“この音カッコいいな”と思うものを、今自分たちが体現できているか?というところで、もっと考えなきゃいけないということを、アルバムを作った時に感じてしまったので。いろいろやりたいなと思っています。

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