【イベントレポート】リッチー・ブラックモア、「考えれば考える程、希有な唯一無二な人」

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11月15日(土)タワーレコード渋谷店5Fイベントスペースにて、書籍『ブラックモアの真実』出版記念トーク&サイン会が開催され、BURRN!編集長の広瀬和生とANTHEMの柴田直人が登壇し、リッチー・ブラックモアを語り尽くすトークが繰り広げられた。

◆書籍『ブラックモアの真実』画像

BURRN!編集長 広瀬和生:このイベントのお話があった時に、世の中で僕と一番リッチー・ブラックモアの話をしているのは柴田さんなのでトークのお相手をお願いしました。今、丁度ANTHEMはニュー・アルバム『ABSOLUTE WORLD』のツアー中で。

ANTHEM 柴田直人:真っ只中です(笑)。今は、仙台、札幌、福岡、広島を終えた所で。

広瀬:この後は?

柴田:22日大阪、23日名古屋、29日川崎と。

広瀬:どうですかバンドの状況は?

柴田:楽しくやってます。

広瀬:森川さんはどうですか?

柴田:森川さんもとても上機嫌で(笑)、みんな仲良くやってますので、このままツアーを乗り切れればと。で、実は2000年以降、ずっと、とある場所で広瀬さんと夜な夜な集っては飲んで話してるんです。ANTHEMや日本のロック・シーンの話が2割くらいで、あとはリッチーの話(笑)。今回のお話は、あの居酒屋のノリでいいんでしょうか?

広瀬:いいと思いますよ。ま、言えないことも多々有りますが(笑)。僕達っていつも、リッチー・ブラックモアってヘンな人ですよね…って話をしてますよね、もちろん敬意をこめて、ですけど。あの人って、僕がBURRN!の編集長になって、自分で何度もインタビューするようになるまで、謎があまりに多かったんです。ヒストリーを書いてても、今でこそ僕が明らかにしたことが多々ありますが、当時はわからないことがたくさんあった。「デイヴ・カーティスっていうのはベーシストなのか、ヴォーカリストなのか?」なんて基本的なことから、「この時期ロジャー・グローヴァーはレインボーにいたの?」とか、もう本当にわからないことばかり。そこで、いろいろなミュージシャンに直接僕が話を聞いて、謎を明らかにしていったインタビュー・シリーズを、ものスゴく愛読してくれたのが柴田さんでした。

柴田:僕は基本的にリッチーが作る音楽が大好きで、最初聴いたときに“なんだコレは?”って雷に打たれたようになって、そこから今の自分があるわけなんです。いろんな文献その他を読むと、常に変わった人間だとか、インタビューも嫌い、気まぐれで…みたいなことが書かれているんですよね。でも、僕はずっとなんか違うような気がしてたんです。それで広瀬さんとリッチーのいろんな話をするようになって、広瀬さんの一連の関係者インタビューを僕の中では「検証シリーズ」と呼んでいるんですが、ディープ・パープル、レインボー、今のブラックモアズ・ナイトに至るまで、世の中に伝えられてないことがたくさんあるし、リッチー本人にしても「本当はどんな人なのか?」とかという疑問が常にある。一般的には、すぐメンバーの首を切るとかってことばかり言われてきましたけど、実際にはユーモアもあるし人間的にすごく豊かな人なんだろうなと思っていて。でも、誰もそこを掘り下げてくれなかったんです。例えば「あの時は本当はこうだった」というのをリッチーに聞き、その話をロジャー・グローヴァーに聞き、さらにグレン・ヒューズに聞き…といったように、いろんな角度で聞いた話を全部並べてみて、あ、本当はこうだったんだっていうのが見えてくるようなインタビューをされる方が、広瀬さんがやるまでは世界中に誰もいなかった。それで広瀬さんは実際に、ブラックモアやメンバーそれぞれにインタビューをされ、その貴重なお話を僕はいつもにナマで伺っていたので。

広瀬:夜な夜な、居酒屋でね(笑)。だから今では柴田さんも誰より真実に精通してますよ(笑)。

柴田:この本『ブラックモアの真実』はもちろん僕も何度も読みました。これが最初BURRN!で記事になった時も読んでますし、それより先に話を聞いていたりするのですけど、やったインタビューって、この本の4~5倍はあるんじゃないですか?

広瀬:そうなんです。だから当然、一度では入りきらなくて。今回なぜジョー・リン・ターナーは入ってないの?という疑問もあると思いますが、彼は2月に出る『ブラックモアの真実2』に載りますし、イアン・ギランやジョン・ロードとかも続編に載せる予定です。あと、グレン・ヒューズも今回はちょっとしか載せなかったんですけど、ホントはすごく長いインタビューがあるので、次が本領発揮だと思います。

柴田:それは楽しみですね。楽しみです。


■リッチー・ブラックモアとの信頼関係

広瀬:リッチー・ブラックモアにインタビューした延べ時間も回数も、日本人だと多分、僕が一番多いんです。一番最初のインタビューは来日の時で、その時はちょっと雰囲気もよくなかった。よくリッチーって、ミステリアスな存在だって言われますけど、あれはスゴく演出をしてるんですね。インタビューをしたいんだったら此処に来いとか、部屋を暗くしようとか。僕が最初にやった時はイベンターの方とかも部屋の中に大勢いて、いろんな人が見ている中でやったので、僕も緊張してましたし、その後、何度もやるようになってから、リッチーが「カズは最初に会った時は、ちょっとオーラが良くなかった。でも、その後、海外へインタビューしに来てくれた時には、すごく雰囲気が良くて、こうして親しくなってからはとてもオーラが良いので、気持ちよく喋れる」って言ってくれたんですよ。

柴田:リッチー・ブラックモアに会ってインタビューするっていうことは、僕から見ると広瀬さんの使命みたいなものだと思うんです。僕はとてもじゃないけど会えないです。怖くなかったですか?

広瀬:最初に至近距離で見たのはツバキハウスというところで。お客さんとして来た彼が、黙ってサッカーゲームをやって帰って行ったのを見ただけですけど…。

柴田:リッチー・ブラックモアがツバキハウスに来たんですか?

広瀬:来たんですよ。で、ステージ見るとすごく大きく見えるのが傍で見るとそんなでもない。でも目がデケェ!って(笑)。それで、最初にきちんと喋ったのは来日のインタビュー。それはさっきも言ったような感じだったんですけど、その後、初めてニューヨークでインタビューした時に、リッチーの中のテストにパスしていたみたいなんですよ。彼ってインタビュアーを試すんですよ、わざと嘘を言ったり、英単語で存在しない言葉を言ってみたり、実在しない人間を実在するかのように言ったり。で、「それはないですよね」という反応をすると、「おっ、わかっているね」って感じになったりする。そういうのがいくつかあって。インタビューする時に大事なのは、好きだからって知っている事を全部言えばいいってもんじゃなくて、ちゃんと質問をしなきゃいけない。僕は常に「リッチーにはこれが聞きたい」というのがあって話をしていたというのがありましたから。一番ビックリしたのは会社で早朝仕事をしていたら国際電話がかかってきて、キャンディス・ナイトだと、で、リッチーが話がある、と。で、代わって「今、ディープ・パープルのヒストリーを書いてるんだって?」って言うから、そうですって言うと「何か聞きたいことってある?」って(笑)。でも、今そんなこと言われても山ほどあるので、今度会った時に聞きますって言ったら、「何聞いてもいいよ」って言われたんです。それでやったインタビューがこの本『ブラックモアの真実』にも入っている3本目のもの。それと、ブラックモアズ・ナイトの2回目の来日の時かな、衛星放送でリッチーのドキュメンタリー番組をやるのでインタビューを撮りたいって話になって。その時、番組スタッフに対して、カズ広瀬がインタビュアーだったらやるって言ってくれて。だから、僕は自分の名前も声も出さないで、BURRN!としてではなく放送用のインタビューをしたんです。「そんな事を言ってくれるんだ」っていうのがありましたね。

柴田:それは余程信頼されてるんですね。

広瀬:まあ、僕が一番多く会っていたからかもしれないですけど。この間、伊藤政則さんと話をさせてもらった時、伊藤さんに「ボン・ジョヴィとは最初から仲がいいですよね」って言ったら、「だって、あいつらさ、最初に日本に来た時、会ったことある日本人って俺だけだったし」って。「ボン・ジョヴィと仲がいいって言っても、一緒にパーティしようとか、メシ食いに行こうって仲じゃなくて、基本的に新譜の時とツアーの時しか会ってないわけでね」って、それは確かにそうですけど、やっぱり伊藤さんって特別じゃないですか。そう考えると、僕も日本にいて、リッチー・ブラックモアと日常的にメシ食いに行ったりするわけじゃないけど、何かある時にコイツだったらって思ってもらえたんだなっていうのは嬉しかったです。


■第三期メンバーへの拘り

柴田:広瀬さんがリッチー・ブラックモアのインタビューをして、僕はそれほどの時差無くナマでその話を聞いたりしてるわけですけど、いつも本当に凄いなって思ってるんです。僕、以前、音楽誌でグレン・ヒューズにソロ・アルバムのインタビューをする役目を仰せつかったことがあるんです。その日は10件を超えるインタビューの一番最後で、グレン・ヒューズもだいぶ疲れてて、目的はソロ・アルバムのプロモーションなんですけど、僕が聞きたかったのはディープ・パープルの第三期の事ばかりで…。もちろんアルバムは聴いて質問は用意して行ったんですけど、広瀬さんがおっしゃるように、本当に聞きたいことに気が入るっていうか…。で、時間を追う毎にグレン・ヒューズの機嫌が悪くなってきたんですよ(笑)。もちろん有名なアーティストの方ですから露骨には出ないんですけど、30分くらい経過して「もういいかな、ちょっと外に出るね」って言って出て行って、そのまま帰ってこなかった。それでインタビューは終わりになったんですけど、僕はず~~~っと緊張してたんで、家に帰って緊張が解けた瞬間、気持ち悪くなって吐いちゃいました。だから、リッチーに会うと目の前で吐いてしまいそうで(笑)絶対会えないです。もしくは倒れるんじゃないでしょうか。少なくとも、リッチー・ブラックモアにそういう印象を持たれるのはイヤなんで、会えないです(笑)

広瀬:グレン・ヒューズは、僕は緊張しないですね。ヒューズ・ターナー・プロジェクトのライブが終わった後にイタリアン・レストランに行ったら、「腹減った、腹減った、今すぐパンを食べないと死ぬ」とか言ってたりする姿を見ましたから(笑)。

柴田:そういうのは、うちのバンドにもいますね(笑)。

広瀬:第三期ってことで言うと、次のBURRN!がデイヴィッド・カヴァデールの表紙・巻頭なんです。で、デイヴィッドにインタビューしたんですけど、「1984年のDVDの話しかしちゃいけない」って言われてたのに自然とリッチー・ブラックモアやジョン・ロードの話になったんです。そうしたら、2012年ジョン・ロードが亡くなった時に、初めて「人生は短い、変なことに拘っていないでリッチー・ブラックモアと話そう」と思ってリッチーに電話したんですって。その話は僕も人伝にも聞いてたし、デイヴィッドがジョンが亡くなった時にメッセージをくれたっていう話はリッチーからも聞いてはいました。2012年にブラックモアズ・ナイトのライブDVDが出た時、僕はリッチーに電話インタビューをしようとしたんです、で、当時のEMIを通じて連絡をとってもらったら、マネージャーからあらかじめ質問を送ってくれって言われて。で、彼女曰く「ただし、デイヴィッド・カヴァデールのことは聞くな」と。「えっ? 別にそんなことは聞かないよ」って思ったんですけど、実は、これは次のBURRN!にも載りますけど、デイヴィッドから「ジョンの追悼の意味で、第三期のメンバーでライブをやらないか」って話がリッチーに来てたそうなんですよ。で、キーボードはキース・エマーソンがいいって。

柴田:僕、キース・エマーソンは好きですけど

広瀬:要するに、ジョン・ロードの代わりが務まるのはキース・エマーソンしかいないって、それはどうかな?って

柴田:いやぁ、もうスゴい話で、今トリハダがたちました…。

広瀬:リッチーっていうのは話をしていて面白い人なんですよ。だからインタビューが終わっても、もうちょっと飲もうよって飲んだことがあって。「お前ギター弾けるよな」ってギター渡されて一緒に弾いたりしたこともあります。その時の写真はパネルにしました(笑)。

柴田:もしそこに僕がいたら、横で吐いてます(笑)。

広瀬:リッチーって話し上手なんですよ、基本おしゃべりです。で、話し上手だから、聞いてると説得力があるんですけど、あとで考えるとあれ??ってこともあります(笑)。

柴田:リッチー・ブラックモアって物を考えているのかどうかわからないような突飛な所も有りながら、でも実はいろんな事をものすごく冷静に踏まえて…。

広瀬:割り切るのが上手いんですよ。

柴田:だからリッチーはスゴすぎてあの真似はできないですよ。バンドをやる人間にとって、僕もいろいろ見聞きして来ましたけど未だにリッチー・ブラックモアは大師匠なので、何を言っても何をされても納得できてしまう唯一のミュージシャンです

広瀬:本当に天才ですね。例えば、ジミー・ペイジって凄い人ですけど、まともな人ですよね、レッド・ツェッペリンの遺産というのを大事に考えているしファンに対してもこういう物を提供しようと考えている。それこそキッスとかエアロスミスとかも自分たちのイメージって言うのを考えるじゃないですか。でもリッチー・ブラックモアっていう人は、それを全く考えることなく、自分の思う通りに生きていく。メンバー交代の割り切り方とか、バンドに対する拘りのなさとか、本当に考えれば考える程、希有な唯一無二な人なので、とにかく長生きして、今後ハードロックをもうちょっとやって欲しいなと思っています。といったところで、今日はありがとうございました。

柴田:ありがとうございました。

この日は、メンバー交代にまつわる半分本気、半分はギャグのようなリッチー・ブラックモアのエピソードの数々も披露され、その不可思議な拘りや、天然ともいえる思考回路に場内には笑いと驚きの声が上がっていた。

書籍『ブラックモアの真実』
B6判/304頁/本体価格2,000円+税
ISBN:978-4-401-64068-3
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