「VOCALOID4」登場、唸るような歌声表現&歌声のブレンドで表現力アップ、発表会には巡音ルカの浅川悠が登場

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ヤマハは、VOCALOIDの3年ぶりとなる新バージョン「VOCALOID4」を発表した。クリエイターやアーティストにより豊かな歌声表現とより使いやすい制作環境を提供する3つの新製品「VOCALOID4 Editor」「VOCALOID4 Editor for Cubase」「VOCALOID4 Library VY1V4」を12月下旬より発売する。11月20日行われた発表会では、クリプトン・フューチャー・メディアやAHSのVOCALOID4製品も紹介された。

「VOCALOID4」では表現力を増すための機能が2つ追加された。いずれも歌声編集ソフト「VOCALOID4 Editor」で使用できるもので、1つめは声を激しく振るわせ唸るような効果が得られる「グロウル機能」。ブルースやロックなどをはじめ、喉を震わせるような歌唱表現が求められる場面で活躍するもので、VOCAOID4ライブラリが必要。もう1つの「クロスシンセシス機能」は、2種類の歌声ライブラリをブレンドし、歌声ライブラリ間で自由に音色をコントロールできる機能だ。ブレンド具合を時系列で調節できるため、たとえば、優しい声からパワフルな声への変化などを滑らかにつけることができる。こちらはVOCALOID3ライブラリでも使用可能だが、ブレンドできるのは同じシンガーの声のみとなっている。また、ピッチの変化を視覚的にわかりやすく表示する「ピッチレンダリング機能」を新たに搭載。これまでピッチやビブラートのかかり具合を示す表示はアイコン的な簡易なもののみだったが、「VOCALOID4 Editor」ではこれらをグラフで描画、ピッチ変化を聴くだけでなく視覚的に把握できるようになり、より効率的に作業が行える。また、音のつながりをあえてなめらかにせず階段状にするいわゆる「ケロケロボイス」をオーディオデータに書き出すことなくカンタンに作れる「ピッチスナップモード」も備える。


▲発表会ではヤマハの剣持秀紀氏が登場、VOCALOID4では「さらに表現力が高まります」「さらに使いやすくなります」と説明。発売は12月下旬、クリスマス前には発売したいとコメント。ボカロ曲がカンタンに作れるボカロネットも紹介した。


▲グロウル、クロスシンセシスは従来のパラメーター同様、時間軸での変化を描くことでコントロール(写真左)。ピッチレンダリングでは、音程の変化を視覚的に把握することが可能に(写真右)。


▲グロウルに対応するのはVOCALOID4ライブラリのみ。クロスシンセシスはVOCALOID3ライブラリ以降、ピッチレンダリングやVOCALOID Editor for Cubaseのリアルタイム入力はVOCALOID2ライブラリでも使用できる。
スタインバーグのDAWソフト「Cubase 7」シリーズに「VOCALOID4 Editor」の機能を組み込める「VOCALOID4 Editor for Cubase」では、これらの機能に加え、外部MIDI機器から入力されたMIDI情報をリアルタイムにエディット画面に反映する機能を搭載。より効率的にデータ入力ができるほか、MIDIキーボードからリアルタイムで歌わせることも可能となっている。また、パッケージ版には「Cubase AI」を新たに同梱。歌声制作のみならず、作曲・録音・編集・ミックス機能も備えた「Cubase AI」との組み合わせにより、購入したその日から音楽制作をはじめることができる(ダウンロード版には「Cubase AI」は付属しない)。

「VOCALOID4」の性能を最大限に引き出せる日本語の女性声の歌声ライブラリとして、ヤマハからは「VOCALOID4 Library VY1V4」も同時に発売される。「グロウル」「クロスシンセシス」の性能を最大限に引き出すことができる「Normal」「Soft」「Power」「Natural」の4つライブラリが同梱される。使用には「VOCALOID Editor」または「VOCALOID Editor for Cubase」が必要。また、VOCALOID4歌声ライブラリには「Tiny VOCALOID Editor」は付属しない。

発売にあわせて、既存のEditor製品、ライブラリの購入者を対象としたアップグレードキャンペーンも実施される。「VOCALOID3 Editor(SE)」「VOCALOID Editor for Cubase(NEO)」「VOCALOID3 Library VY1V3(SE/NEO)」の購入者は、「VOCALOID4 Editor」、「VOCALOID4 Editor for Cubase」もしくは「VOCALOID4 Library VY1V4」を、公式オンラインサイトVOCALOID STOREで5,400円(税込)で購入できるというもの。また、11月10日(月)以降に「VOCALOID3 Editor(SE)」「VOCALOID Editor for Cubase NEO」を購入したユーザーには「VOCALOID4 Editor」もしくは「VOCALOID4 Editor for Cubase」を、2015年6月末まで無償で入手できるキャンペーンを実施する。

新規購入の際の価格については、「VOCALOID4 Editor」「VOCALOID4 Editor for Cubase」「VOCALOID4 Library VY1V4」ともにオープンプライスとなる。20日に行われた発表会ではV3製品よりも多少アップするとだけアナウンスされたが、翌日の楽器フェアのVOCALOIDブースで聞いたところ、いずれも10,000円前後(税別)になりそうとのこと。

■クリプトン、AHSからもVOCALOID4製品が登場

11月20日に渋谷PARCOの2.5Dスタジオで行われた発表会では、これらヤマハ製品の説明に加え、VOCALOIDライブラリをリリースしているサードパーティからのVOCALOID4への対応もアナウンスされた。

クリプトン・フューチャー・メディアからは「巡音ルカV4X」が登場(2015年2月下旬リリース予定、税込17,280円)。名称に付けられた「X」は「eXpression:表情豊かなこと」「eXtended:拡張されていること」「X:道である場合にとりあえずつけられる名前」と紹介。搭載データベースは日本語がHARD、SOFT、英語がSTRAIGHT、SOFTを用意する。注目はVOCALOID4の新機能に加え、E.V.E.C.(イーベック)という新機能を搭載すること。音符一つひとつに「強い/弱い/囁き」といった声の表情を付けられるVoice Color、フレーズの語尾に吐息を加える(長い/短いから選択)ことができるVoice Release、子音の長さを伸ばして滑舌をコントロールできる子音拡張機能の3種の独自機能が加えられている。これらは製品付属のPiaproStudioでコントロール可能だ。機能が多く一見複雑そうだが、直感的に操作できるよう調整が進められているという。


▲初音ミクの開発者である佐々木渉氏が「巡音ルカV4X」の新機能を紹介、当初はVOCALOID3対応タイトルとして開発を進めていたのを途中からVOCALOID4に切り替えたと説明(写真左)。ゲストとして巡音ルカの声を担当した声優の浅川悠さんも登場(写真右)。開発に際しては「どの息の成分がセクシーか、どの成分が小娘的か」といったところを時間をかけて議論したという。初音ミクのVOCALOID4も検討中とのこと。また、ルカV4XのインストールでPiaproStudioに機能が増えて、初音ミクV3、MEIKO V3、KAITO V3がパワーアップすることも示された。

AHSは、VOCALOID2のライブラリとしてリリースされた「ボカロ小学生 歌愛ユキ」「ボカロ先生 氷山キヨテル」「SF-A2 開発コード miki」「猫村いろは」の4製品をVOCALOID4ライブラリとしてリリースする(発売時期は未定)。これらVOCALOID2ライブラリがMac用の「VOCALOID Editor for Cubase」では使用できないことからVOCALOID3での開発がまず決められ、その後VOCALOID4対応としてリリースすることになったという経緯も紹介された。これに加え、VOCALOMAKETSの企画・制作によりVOCALOID3ライブラリとしてリリースされている「結月ゆかり」のVOCALOID4版が登場。「結月ゆかり 穏」と名付けられたウィスパー系ボイスも登場する。やわらかい、ささやくような歌い方を究極まで追求して開発が進められており、グロウルにも対応。発売は2015年第一四半期を目指す。


▲AHSからは尾形友秀氏がVOCALOID4ラインナップを紹介(写真左)。4つのVOCALOID2ライブラリをVOCALOID4対応として生まれ変わる。結月ゆかりは新音源追加でオリジナルとウィスパー系の2種によるクロスシンセシスやグロウルのデモ音源を披露。同社が発売しているDAWソフト「Music Maker」のVOCALOID4対応も進めるとした。


▲インターネットの村上社長はビデオメッセージで登場(写真左)。VOCALOID3ライブラリ「メグッポイド」「がくっぽいど」の各ライブラリでクロスシンセシスが可能、「ABILITY」「Singer Song Writer」とVOCALOIDの連携を可能にするVOCALOID ReWireでVOCALOID4も使用できるとコメント。IA PROJECTのVOCALOID3ライブラリ「IA」はクロスシンセシスのデモが流された(写真中)。Sweet Ann、BIG-ALなどをリリースしているPOWER FXのビル氏は新機能、特にグロウルに盛り上がり楽しみにしているとコメント。


▲発表会では英語でのスピーチも披露した浅川悠さん、ヤマハの剣持秀紀氏、クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏、AHSの尾形友秀氏(写真左)。写真右はパッケージ3種とともに用意されたデモ機。

◆VOCALOID4 Editor
価格:オープン
◆VOCALOID4 Editor for Cubase
価格:オープン
◆VOCALOID4 Library VY1V4
価格:オープン
発売日:2014年12月下旬

◆VOCALOID4 Special site
◆VOCALOID公式サイト
◆VOCALOID STORE
◆ヤマハ
◆BARKS 楽器チャンネル
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