【イベントレポート】ガールズバンドの宴、大盛況

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2014年8月に赤坂BLITZで開催され、大盛況に終わった<GIRLS ROCK SUMMER SPLASH!!2014>、その第二弾となる<GIRLS ROCK SPLASH!!-2014 AUTUMN>が、11月30日Shibuya eggmanにて開催された。今回も“ロック魂”を根底に据えながら活動するガールズアーティスト達が集合、葵ミシェル、がんばれ!Victory、Caramel、Draft King、ORESKABANDの5組が白熱したステージを繰り広げた。


●葵ミシェル

アコースティックギター1本を抱えて、勇ましい侍のごとく登場したのは、オープニングアクトを務める葵ミシェル。まだ熱を帯びる前のフロアの空気を「Liberty」というタイトルの通り、彼女の自由を求めるような伸びやかな歌声がスッと切り裂いていく。オープニングアクトとは思えない貫録ある出で立ちに、グッと引き込まれ、言葉を失う観客。そんな空気感に動じることなく「ありがとう」と呟くと、そのまま2曲目「Hold onto me」に突入。弾き語りでありながらも、バンドに負けないパワフルかつソウルフルなパフォーマンスで、聴く人の背中を強く押していった。

しかし、柔らかなアコースティックギターの音色がフロアへ漂い始め、ゆったりとしたラブソング「Will you still love me tomorrow?」へ流れ込むと、“あたしの全て受け止めて”と女の子らしい恋心を歌うキュートな姿もチラリ。ギャップというものはその振り幅が広ければ広いほど胸を打つものだが、葵ミシェルも相当パンチ力のあるギャップを強気な眼差しの裏に隠していた。

そして、MCで改めて自己紹介をした後は、ラストナンバー「Look for…」を披露。再び、体中から絞り出すように全力で歌い上げると、たくさんの温かな笑顔と拍手が彼女に注がれた。

また、ライブ後のトークタイムでは、MCの上々軍団・鈴木啓太と大好きなモーニング娘。の話で盛り上がる無邪気な一面も。そんな風に次々に表情を変えていく彼女に、興味をそそられた人も多かったことだろう。


●がんばれ!Victory

レトロなSEに合わせて、トップバッターを務めるがんばれ!Victoryが登場。可愛らしい笑顔とヴィジュアルに油断していたら、“しまってこうぜー!”というVo.AYAKIの一声から、エッジの効いたギターロック…その名も「ろっく」に突入するという急展開に度肝を抜かれた。唸りをあげるツインギターに合わせて、フロアからも“オイ!オイ!”と野太い掛け声が挙がる様は圧巻。2曲目「I Go Everyday」に入ると、ずっしりと重厚なサウンドと躍動感あるステージング、その中を突き抜けていくAYAKIのストレートな歌声に煽られ、観客のボルテージもより一層高まっていった。

そんなかっこよさ満載の前半戦を終えた、がんばれ!Victory だったが、MCではアイドルらしさを前面に出し、“絶対生音主義バンドルのがんばれ!Victoryです!”と可愛く自己紹介。まだ地元・佐賀から上京してきて間もないということで、佐賀弁訛りのちょっとボケボケなトークで観客の笑いを誘っていた。

後半戦は、“三々七拍子!”という変わった煽りから新曲(タイトル未定)がスタート!彼女達の若さを象徴するハジけるような青春ポップサウンドに、観客も拳を突き上げながら心地よさそうに揺れる。そして、一体感のある手拍子から疾走感溢れる4曲目「KGSD」へ。切なさの漂うメロディックなロックチューンが、アイドルとは一線を画した“バンドル”の存在感を見せつけていた。

実は、11月26日にリリースされたニューシングル「ふらいはい!!!」の売り上げによってメジャーデビューできるか否かが決まるという、ターニングポイントに立っている彼女達。そんな想いも込めて、最後は、メンバーと観客との「かっとばせー!Victory!」のコール&レスポンスが印象的な「ふらいはい!!!」を披露。テンションが上がるごとに高まる「はい!はい!はい!」の声も、ラストに向けてどんどん加速していった。まさに、キラキラと輝く青春の光を全身から放出しながらのライブ。いつの間にかフロアは、冬を忘れさせるほどの熱気に包まれていた。


●Caramel

「みなさん、タオルの準備はいいですか?回せ!」

登場するや否や、そんなVo.るみの一言から始まったのは、Caramelのライブの定番アゲアゲナンバー「tkmkセンセーション」。自然と溢れ出す掛け声と宙を舞う無数のタオルが、いたいけな女の子の恋心を歌うポップロックチューンを熱く高めていく。次に演奏した「スナイパーガールZ」も含め、“絶対妹宣言!”と謳っているとは思えないほど鋭く尖ったサウンド&ボーカルが、平均身長149cmの小柄な体から放たれる様子に、冒頭からただただ圧倒された。

また、“冬と言えば、恋をしたい季節ですよね。恋してますか?(笑)”と、Caramelの王道とも言える、叶わない恋の歌「LoversMoment」も披露。はしゃぐだけでなく、学生時代の恋をセンチメンタルなメロディに乗せて熱唱する姿は、もはや“妹”のイメージとはかけ離れた存在。小柄な4人がひと際大きく見え、大人びたその出で立ちにハッとさせられた。Caramelは、11月9日に、ソールドアウトしなければ解散というワンマンを大成功で終了したばかり。その厳しい課題を乗り越えたことが、ファンとの絆を強くし、メンバーのバンドに対する意識も高めたのだろう。この日のステージからも、心地よい緊張感と自信が窺えた。

そして、後半は前半よりロックに、打ち込みを駆使したクールでカッコイイ「恋愛少女2」で全力疾走!“恋したいんだ!命がけ!”と強気な女の子像を突きつける4人。そして、音のレーザー光線が次々に胸に突き刺さる四つ打ちナンバー「恋愛少女」で、畳み掛けるようにクライマックス!ライブ後のトークでメンバーが“酸素が薄いなぁ~”と漏らしていたが、それほどまでに白熱したステージが繰り広げられていたのだ。

普段は路上でライブをしていたり、巨大なフェスに出演したりと、小柄ゆえか弱そうに見えるヴィジュアルに反して、“ライブバンド”として精力的に活動している彼女達。その小さな体に秘めた貪欲さと負けん気の強さが、今回のイベントでも確かに感じられた。


●Draft King

3バンド目は、2013年に結成されたバンドDraft King。もうすぐで結成2年の新しいバンドでありながら、ex.ステレオポニーのNOHANAとSHIHOを中心に結成されたというだけあって、その一体感は確かなモノ。安定した演奏にVo.ericaの元気いっぱいの歌声を乗せて、1曲目「誓いの歌」から駆け出すと、観客もノリノリでジャンプ!ポップなラブソング「Hey My Love」でも、アットホームな雰囲気と大迫力のステージングで自分達のペースに引き込んでいった。

また、“廻れ舞われ夜が明けるまで”という韻を踏んだサビやドラマティックな展開が魅力の「真夜中メリーゴーランド」では、芯に感じる力強さと透明感のあるセクシーな高音とのギャップで魅了したボーカルはもちろん、ギター・ベース・ドラムのソロで各々のパフォーマンスを披露する一幕も。続く「エレクトリック」では、コーラスとの見事なハーモニーも披露し、カッコイイ大人の女性の魅力を盛大に見せつけた。

“がんばれ!VictoryやCaramelみたいに若々しさはないんですけど、こんな感じでやってます(笑)”

そんな自虐も挟みつつ、安定したベテラン感満載のMCを挟んだ後は、“みんなが少しでも笑ってスタートできるように、こういう曲をカバーしました!”と海援隊の「贈る言葉」をDraft King流の青春パンクテイストにアレンジして披露。衝動を突き動かす軽快なリズムに、Draft Kingを初めて見た人までも巻き込んでハチャメチャに盛り上がる。その勢いを追い風にして、ラストナンバー「アブラカタブラ」まで汗にまみれたとびきりの笑顔で駆け抜けた。

12月17日には、同じくShibuya eggmanにてワンマンライブを行うことが決定しているDraft King。本編への期待はもちろんのこと、ゲストには芸人のスギちゃんを呼ぶということで、はたしてどんなコラボが見れるのか…!?こちらも期待したい。


●ORESKABAND

イベントのトリを務めたのは、結成してから早11年。今もなお輝き続ける、ORESKABAND。バンドはバンドでも“スカバンド”という独特の編成の彼女達のステージは、この日も良い意味で異彩を放っていた。

関西弁バリバリの強烈な煽りから1曲目「PAPAYA」がスタート。バンドサウンド・キーボードに加えて、パンチの効いたトランペット&トロンボーンの音色が威勢よく突き抜けるのが、彼女達の最大の武器。まるでボーカルも楽器の一部とでも言うように演奏を全面に押し出したパフォーマンスに、思わず「カッコイイ…!」という言葉が漏れた。そして、10月にリリースした最新アルバム「Carry On!」の中から、「Carnival」を披露。iCasのソウルフルなハスキーヴォイスが、グイグイと観客を巻き込んでいく。

MCでも、コッテコテな関西弁で小芝居を交えたトークを繰り広げるメンバー達。“ダメ男に引っかかる女の気持ち。それも、わかるわ~”と「それは勝手な理論」に突入すると、SAKI&HAYAMIが楽器を置いて華麗なダンスを繰り広げ始めた。もはやバンドというより、パフォーマンス集団とでも言うべきか?その表現のバリエーションの広さに、驚きの連発だった。そして、“渋谷~の声が聞きた~い♪”と歌に乗せて煽るiCasに合わせて、観客も音の波に乗ってゆったりと横揺れ。ほんのりアダルティな香りが漂う「Walk」が、元気でパワフルなガールズバンドのイメージを塗り替えていく。

この11年、その形態を変えながら進んできた彼女達。メンバーも言っていたように、制服でバンドをしているイメージが強かっただけに、海外での経験などを経て確立された今の姿が新鮮に映った人も多かったことだろう。それでも、iCas曰く“初めて聴いても楽しめるスカミュージック”のめいっぱいの楽しさとキラキラ感を詰め込んだ最新曲「Carry On!」を披露すると、会場は再び1つに!続く「Brand New Day」やラストナンバー「ORESKA MUSIC」も含め、“共に叫び、リズムを感じ、踊る!”というシンプルな音楽のパワーを最大限に引き出したステージに、今のORESKABANDならではの輝きを見た。

「どれだけ楽しくてもこの時間は戻ってこんへんで?」

まるで自分に言い聞かせているように叫び、限られた素晴らしい時間を誰よりも満喫しようとするメンバー達の笑顔が最高に眩しい!アンコールでは南米の香り溢れる「Tequila」(カバー)で“これでもか!”と踊り倒し、ガールズロックミュージシャン達の宴は大盛況の中幕を下ろした。

次回開催は2月28日(土)を予定している。

Text:斉藤 碧
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