【イベントレポート】山崎あおい、きっかけはマグロ。「あいつらストイックだなーって」

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山崎あおいの2ndアルバム『12センチ』先行試聴会が、12月5日、所属レコード会社・ビクターエンタテインメントで行なわれた。

◆<山崎あおい セカンドアルバム『12センチ』先行試聴会> 画像、『12センチ』全曲試聴動画

先日立ち上がったばかりの山崎あおいオフィシャルFC「わさび部」の会員と、ビクター公式Facebook&山崎あおい公式Facebookから抽選で招待された70人を前に、イベントは、2015年1月7日にリリースが予定されている2ndアルバム『12センチ』の全曲試聴からスタート。集まったファンは、歌詞を片手に、山崎あおいの“勢い”を確かな感触として触れることができる、できあがったばかりの音源に静かに耳を傾ける。

12曲にわたって、様々なシチュエーション、物語、そしてセンチメンタルがメロディーとともに紡がれている『12センチ』。中には「この曲の“君”っていうのは、あおいちゃんの実生活に存在している“誰か”なのかな……?」と、ちょっとドキドキしてしまうような、そんな曲があるのも事実。しかし、ここ最近のクリスマス(の『彼氏と過ごすでしょ?え、あなた違うの?ドンマイ』みたいな風潮)について触れたTwitterやブログの内容を即座に思い出して、本当のところがどうであるかよりも先に「ああ、妄想か。」と確信してしまうのは、ファンの性というものである(そして多分、その確信は間違ってない)。

全曲試聴が終わると、会場中の視線が集まってしまうのは、前方に用意された2つの椅子。しかもひとつは、明らかにこの日の“主役”が座るであろうピカピカのスツール。

そして、ラジオパーソナリティとしてもおなじみ、間宮優希が会場に登場する。『12センチ』全曲試聴を終えて、いよいよ、(本番前にスクワットの動作で気合いを入れたらしい)山崎あおい本人を迎えてのトークセッション。大きな拍手に迎えられて、山崎あおいが呼び込まれる。


「(作りすぎた)ハヤシライスは水っぽかったです……。」という、Twitterネタを挟みつつ、『12センチ』のタイトルについて「12曲ひとつひとつにいろんなセンチメンタルが詰まってるということで、12個のセンチメンタル。」「私が今、21歳なので、ちょっとひっくり返してみて……無理矢理ですけど。」「12センチって短いような長いような、よくわからない中途半端な数字なんですけど、ひとつの心の距離とか、相手との距離が12センチっていう、ちょっともどかしい気持ちとか、いろいろな意味がありますね。」と、早速、解説がスタートしていく。

作品の曲順について「ライブだったらどういうふうに歌うかなって考えることが多い」と、山崎。本作も、1曲目にシングル曲を持ってきて、盛り上がるゾーンが続き、空気感を変える切ないゾーンを経て、最後は壮大な曲で締めるという構成。昨今、配信という形を使えば1曲単位で購入可能な楽曲だが、本人のそんな解説からは、CDアルバムという形で世に生み落とすことができたのだから、できればトータルで、最初から最後まで楽しんでほしいという想いが伝わってくる。

8月のバースデーライブでも歌われた「君のいない夏なんて嫌いだ」。高校生の頃に作った、「このアルバムの中でも一番古い」というこの曲は、オフィシャルサイトで先行公開されている歌詞を見てもわかるように、なかなか“エグい”失恋ソング。ということで、間宮優希からは「どういうタイミングで作ったんですか?」と、興味深い質問がなされる。これに山崎あおいは「……ご想像をしていただければ(笑)」と、明確な答えを避ける。北海道の地で、高校生の山崎あおいは何があってこの曲を作ったのか(まぁ、“そう”なんだろう)。

そして何気に一番気になる歌詞が綴られていたのは「Charade」。「今までになかったカラーじゃないですか? “夜のふたり”」と訊かれた山崎は、間宮の“夜のふたり”というワードで、何やら艶かしい方向に思考が飛躍してしまったのだろう。「ふっ……ふふふっ」と、笑みを浮かべ、間宮からすかさず「妄想しすぎ!」とツッコまれてしまっていた。

「クラスメイト」では、離れ離れになってしまう別れの瞬間を描く。北海道出身の彼女は、「上京していく友達を見送ったこともあるし、見送られたこともありますね」と、しみじみ語る。その話しぶりからは、まさにこの曲に歌われたような経験も、今の山崎あおいを構成している要素なのだろうと感じさせる。「どっちのほうが切ないですか?」と、間宮優希。誰もが山崎あおいのちょっとの切なさを含んだトークを期待していた。が、ここで山崎は、我々の期待の斜め上を行ってしまう。

「でも、その見送られた時も、見送る時も、一週間後に東京で会う約束してたので。すごい仲いい友達だったので、お互い「見送る、見送られるってイベントは、経験しといたほうがいいよね」って話になって。「じゃあ、うちらでやっちゃうか?」って、あくまで切ないモードで見送るごっこしてました。」

会場内、唖然である。

ちなみにその友達とは、互いにケータイの電源を切って、来るはずもない実家からの追っ手を気にしながら小樽旅行する「駆け落ちごっこ」もやったそうだ。今にも会場のそこかしこから「お、おう……」という声が漏れ聞こえてきそうであった。

<もうがんばれない>と歌いながらも、最後には未来に向けてがんばるという応援ソング「サカナ」については、「書こうとおもったきっかけは……回遊魚ってわかりますか? 止まると死ぬ魚。マグロみたいな。「あいつらストイックだなー」って思って。」と、ぽつり。当然、笑いが起きる客席。

そして、「なんか、止まると死ぬって聞いて、なんてストイックな奴らなんだって感動した覚えがあって。最近、私もがんばらなきゃいけないことがたくさんあったんですけど、なかなかがんばれないというか。ひとつ傷を作ってそれを治療しないと前に進めないみたいな自分が嫌になった時期があって、こういう時に回遊魚なら、死ぬから止まらないで進めるのかなって。魚になりたいなーってところから書いていきました。……私はマグロ、みたいな。」と、誕生のエピソードを明かす。

もっとも「サカナ」を作ったことで、「がんばれないって正直に言ってしまうことで、がんばりたい、がんばりたいって思って、切羽詰ってた部分が一回整理されて、がんばれないけど、がんばるしかないんだよなって気持ちに、前向きになれた。」そうである。

「センチメンタリズム」では、「恋愛したいんですけど、そういう面倒くさいイベント事は置いておきたいので、目をつぶって開けたら30年寄り添った夫婦だったらいいな」と、恋愛観を告白。また、「モシモボクガ」では、<歌えない自分>について、高校時代にホテルの宴会スタッフのバイトをしていた時に、あまりに挙動不審過ぎて周りに心配されていた話を紹介する。

そして「会いにゆくよ」。この曲について、山崎あおいから秘話がひとつ明らかにされた。

「友達に会いたくて、あの、具体的に言うと……言わなくていいか。今日だから言いますけど、「夏海」って曲があったんですけど、夏海は、なつみちゃんをモデルにして書いた曲で。(「会いにゆくよ」は)なつみちゃんに会いたいなーって書いた曲で。曲としては繋がっていないんですけど、対象は同じというか。大切な友達なので、母みたいな存在なんです。その娘の顔を見ると、「あー、帰ってきたなー」って気持ちになる。その娘に会いたいなーって思って書いた曲です。」

トークセッション終盤。イベント出演やツアーの告知が終わってそろそろ締めの雰囲気になりつつある会場。ところがここで、「ちょっと待ったー!」と、『ねるとん紅鯨団』もびっくりの“ちょっと待ったコール”が、山崎あおいから飛び出す(山崎あおいが『ねるとん紅鯨団』を知っているのかどうかは定かではないが)。

そして、試聴会に参加してくれたファンに感謝の気持ちを込めて、山崎あおい曰く「まぁ、リア充ですよね。羨ましいですねー。私の理想の恋愛です。」と語った「左手」を、生ギターと生歌で披露。さらに、Twitterで今日のことをつぶやいてほしいと、参加者からの写真撮影に応じたのだった。

なお、山崎あおいオフィシャルサイト(http://yamazakiaoi.jp/12cm/20141205.html)では、アルバム全曲の歌詞を掲載中。一方、レーベルサイト(http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A024006.html)では、全曲試聴がスタートしている。

また、2015年1月6日22時から、間宮優希がパーソナリティを務めるFM-FUJI『Slash & Burn』に山崎あおいのゲスト出演が決定。間宮優希と再度トークを繰り広げる(試聴会イベントの開始前に番組出演が急遽決定した)。

「ぜひ、1月7日に『12センチ』を手にしていただいて、じっくりと何回も聞いていただけたらと思います。今日はありがとうございました。」── 山崎あおい

text and photo by ytsuji a.k.a.編集部(つ)


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