【インタビュー】DIR EN GREY、バンドの“核”に迫った本能的な音を追求した最新アルバム『ARCHE』を薫が語る

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安住を嫌い、常に変革を追い求めるDIR EN GREY。構築美を追求した前作アルバム『DUM SPIRO SPERO』から3年4ヶ月、最新アルバム『ARCHE』で彼らが提示するのは、バンドの“核”に迫った本能的な音。そこには、5人がこれまでのキャリアで培った強靭さとしなやかさが大きく作用しており、1音1音が重く、聴く者に深く突き刺さる。現在新作に伴う全国ツアー真っ最中の彼ら。ギタリストで、メインソングライターである薫に聞いた。

◆DIR EN GREY『ARCHE』~拡大画像~

▲薫


■17年やってきたバンドが醸し出す雰囲気や色気が自然な形で出てくる
■自分たちならではのシンプルさを備えたものが作れたらいいなと


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──アルバムを聴いてまず感じた印象が「洗練されていて、芯が通っていて、潔いアルバムだな」というものでした。メンバー間のどういった会話の中からアルバムの方向性が定まっていったのですか?

薫:「SUSTAIN THE UNTRUTH」を作った時に「あまり考え込まずにプレイしたい」「シンプルな雰囲気がいい」といった言葉が出てきて。17年やってきたバンドが醸し出す雰囲気や色気といったものが自然な形で出てくる、自分たちならではのシンプルさを備えたものが作れたらいいかなという風になっていきました。メンバーが持っているものが自然に投影されるもの。あと、色々足していける余白があるもの、ですね。

──それまでは別々に録っていたのを、「SUSTAIN~」の時に久々にレコーディング前にバンド全員で合わせて演奏することによって、5人が本来共有するタイム感を得られたという話がありました。これは、今回のアルバム全体にも言えることですか?

薫:全曲ではないけど、半分以上は合わせました。前作にもあったような長尺の曲は、今回はないと思っていました。「明日録るからみんなで合わせよう」となった時に「いや曲を憶えられない、2,3日ちょうだい」というような曲は違うな、と。パッとみんなで合わせられるもの。そんな中、アルバムの方向性がなんとなく見え出したのかもしれないですね。

──あのタイミングであの曲が出てきて、アルバムの方向性を定めるに至ったというのは、それまで秘めてきた思いがあったからなのかな、という気もしますが。

薫:あったとは思うんですが、自分たちが何を求めているのかはまだ不確かだったというか。で、あの曲が出てきた時に、こういう方向なのかなというのを掴み始められたという感じで。もちろんその時点ではまだこの曲がアルバムにつながるものになるのかもわからなかったですけど。

──アルバムには未収録ですが、ミニアルバム収録の「Unraveling」がアルバムに方向性に与えた影響はどうでしょう。

薫:あったかもしれないけど、アルバムには収録しないと決めていたので。なんか空気が違うなと。グルーヴ感にしても、ああいうものではないっていう。今回は、リフで“ドスタスタ”って進んでいくものという感じではないのかなと思っていて。イントロでダーッとなったとしても、歌が入るところでは世界観がバッと変わっているとか。もう、LRがずっとユニゾンでひたすらウネってます、という感じではないんだろうなと。

──ここ最近のアルバムと比較して、アグレッシヴさという点では若干抑えた印象ですが、そうすることでよりバンドの本質的な、核の部分に近づいたように感じました。例えとして正しいかわからないんですけど、昔DIR EN GREYがメイクを落として素顔を露にした時のような潔さを、今回の音に感じました。より人間味が増したというか。

薫:アレンジを考えている時も、“5人が合わさってパワー感が出るもの”というのを考えていました。一瞬でもいいんで。『UROBOROS』『DUM SPIRO SPERO』『THE UNRAVELING』でやっていた雰囲気というか、ああいう感じって、もうメンバーが備え持ってしまっているんですよ。この間『GAUZE』のツアーをやった時も、明るい曲をやっても全然明るい雰囲気にならないし、ドシッとした雰囲気がメンバーに入っちゃっている。そこで、もっとバンド然としたもの、今のDIR EN GREYにしかできないものが出せたら、より強力なんじゃないかなと。今回ツアーを回る時も、このアルバムの曲に加えて今までの曲をやる訳ですが、そこでどういう曲を持ってくるかによって見え方がまったく違うと思うんです。その辺でおもしろくなるようなものを作りたいなって。

──今改めて前作『DUM SPIRO SPERO』とともに過ごした3年間を振り返ると、どう映りますか?

薫:『DUM SPIRO SPERO』では、曲そのものというより、ライブのステージに関しては割とおもしろいことがやれたかなと思っています。同時に、ある種行き着いた感もあるのかな、と。結構偏ったステージだったので。曲が呼ぶ雰囲気が“ライヴ”というより“プレイ”っていう感じの曲が多かった。俺はそういうのがやりたかったんですが、曲構成が複雑だったり、そういった曲に対する演出に対して、もっとガツガツいきたいという意見もあったので、次行くべきところはそういうところじゃないなと。京の喉のことがあって休んでいた間、それぞれ考えることがあったと思うんです。音楽的にもステージ的にも偏っていた分、やっぱりその反動がバンド内にあって、バンドのパワー感を出していく感じでやっていくべきかなと。そうしないと、バンドもおもしろい方向に転がっていかないので。

──すでに新作に伴うツアーが始まっているわけですが、お客さんの新曲に対する反応はどうですか? 期待していた反応になっていますか?

薫:そうですね。でもやっぱりアルバムにはミディアムで雰囲気のある曲も多いし、劇的に変わるわけではない。でも今回は新曲の中でも比較的イメージが掴みやすい、乗りやすい曲を多めにやっているので、反応はいいですね。

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