【2015年迎撃まとめ】いますぐ出会って欲しい女性アーティスト5選

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山崎ハコから松任谷由実、中島みゆき、川本真琴、椎名林檎、安藤裕子まで、素晴らしい曲を生み鋭い感性を持つ女性アーティストは、いつだって時代をズバッと切り取りながら、この世界を彩ってきた。音楽不況とうたわれている今だからこそ、そんな女性SSWの新しい才能と出会って欲しくて、注目のアーティストをラインナップするこの企画を贈る。中にはすでに広く認知されているアーティストも、まだほとんど知られていない原石もいるが、とにかくこのゴリ押し企画をきっかけにして、新しい音楽を知るということの楽しさも知っていただけたら嬉しい。

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【柴田聡子】

ここ1年くらいで名前をよく見かけるようになったし、何より、意外と攻撃的で肝が座っていて他愛無い彼女の歌が大好きでずっと気にしていた。音楽が身体から溢れ出てきたように直感的なようでいて、なんて構築美のある曲を作る人なんだろう、ジョニ・ミッチェルのようじゃないかと夢中だったのだ。それからやっと2014年10月に愛知県豊田で開催された入場フリー(!)のロックフェス<トヨタロックフェスティバル>で「柴田聡子とGofishトリオ」名義のライブを観てから、心底惚れることになる。音とメロディと歌声はどちらかと言えば軽やか弾みがあるので、本来は心地いいはずの音楽だが、彼女のライブは観ていて気持ちが軽くなるわけでは全くない。むしろ最終的にはな傷ついたような気持ちにさえなる。柴田聡子は、愛情も戸惑いもちょっとした敵意も、淡々と形にしていく人だ。歌の中では「本当のこと」を見抜いていて、言葉は悪いが、ズケズケと言い放つ。つまり歌が鋭い。容赦なく、媚びるところのない彼女の歌は、きっとあなたの一生ものになるはずだ。

1986年札幌市生まれ、2010年より都内を中心に活動をスタート。2014年5月21日に2ndアルバム『いじわる全集』を発売している。

【青葉市子】

小山田圭吾や細野晴臣らと共にタワーレコードのポスター「NO MUSIC, NO LIFE.」に登場してるくらいの才能の持ち主だし、その才能はすでに認知されているので、いまさら感があるかもしれない。でも、2014年12月にGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポーと共に「NUUAMM」(ぬうあむ)としてリリースしたデビューアルバム『NUUAMM』もとても素晴らしいので、ここで今一度、青葉市子を紹介。

1990年生まれ、京都で育ち17歳からクラシックギターを弾き始め、19歳の時に1stアルバム『剃刀乙女』をリリース。これまでに4枚のオリジナルアルバムを発表している。青葉市子に最初に一番驚かされたのは、声だった。まるで宮崎駿映画の主役の女の子のように清涼感のある声。心にふっと入ってきて、その柔らかい場所にもずっと閉ざされていた場所にも届く声。その神秘的な体験はまるで優しく頭を撫でられているように心地よくもあるし、冷たい水を浴びているような厳しさもある。どちらにしても、自分の真ん中が一瞬で捉えられる歌声だ。そして、彼女のギターには静けさとそこに同居する激情があり、アルペジオの音には永遠性と無常感が行ったり来たりしているように感じる。上のYouTube映像の「いきのこり●ぼくら」は、よしもとばななの最新作『鳥たち』でも歌詞が引用されているが、彼女は言葉でも、いっぺんに人間の中にある多角的な世界を描いてしまう。だからギター1本の弾き語りとは思えないほど、重くて深くて、でもとてもナチュラルに自分の音楽を表現をする音楽家である。

『NUUAMM』は、マヒトの声と青葉市子の重なりがなんとも相容れないというデュエットで、でもその不協和音に心が落ち着き、童謡のような歌に吸い込まれていく。こんなに純粋な音楽を今の時代に聴けることに幸せすら覚える。聴いてみて欲しい。


【カネコアヤノ】

1993年生まれ、神奈川県横浜市出身。2012年5月にミニアルバム『印税生活』を制作、2014年5月初の全国流通盤『来世はアイドル』をリリースしている。

「はっぴいえんど」「たま」に影響を受けギターを始めたというだけあって、世間の流行歌に乗らず、我が道を行く意識の高い姿勢が垣間見れて、才気がほとばしっている女の子だ。とっても可愛いビジュアルと堂々とした佇まいも相まって、カネコアヤノというひとつのジャンルを確立しつつあると思う。もちろん音楽面でも、AOR的で歌謡性の高い歌メロは、もっと彼女の存在が認知されれば一気に火がつくはずだ。そして、自分の欲や夢といった素直な気持ちを、そのまま世界にバッと投げ出しているような少しぶっきらぼうな歌い方も、こちらの感情を揺さぶってくる。不安定になったり急に太くなる声の抑揚が、生々しくってクセになる。

【あいみょん】

兵庫県出身の19歳。まず、直喩過ぎ!と言えるくらいストレートな物言いをしている歌詞のインパクトが強い。実際、そのどれもが身勝手な言い分だ。彼女の雰囲気からもそういった奔放さを感じるだろう。だけど、あいみょんに期待を寄せる理由は、そういった過激さではなく、歌のよさだ。特にメロディは、端々にSuperflyの楽曲のようなスケールの大きさがある。だだっ広いアリーナ級の場所でも、ひとり立ち歌うあいみょんの姿が想像できてしまう。だから彼女には、自分の内面をぶっちゃけるこういうタイプの女性SSW特有の刹那的な匂いが感じられない。そこが一番の魅力であって、彼女にはポップシンガーとしての可能性を感じている。今のところの代表曲「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」を初めて聴いた時、この極端な歌詞以上に、なんて音楽的にキャッチーな歌なんだろうと感心した。

現在はまだ音源のリリースはないが、関西と関東でライブ活動をしており、2015年の年明けには東京での公演が決まっている。2015年1月28(水)には渋谷CHELSEA HOTELに、1月29日(木)には下北沢SHELTERに出演。絶対に観に行く。

【Cettia】


Cettia(せてぃあ)は、1997年生まれの現役高校生だ。バンドサウンドの楽曲も多いがデスクトップ・ミュージックを使用し作詞作曲アレンジまで全て一人で行っている。2014年に、UK.PROJECTが主催するオーディションで特別賞を受賞し、2015年2月にRX-RECORDSよりデビューミニアルバム『he(a)re』のリリースを控えている。

まず、この年代の音楽として、とても実直な表現だと思う。Cettiaの音楽に強く感じられるのは、憧れ、孤独感、焦燥感だ。それはどれも、社会に関わったり人間関係を築かなければならなくなったことで無条件に生まれる感覚であり、幼かった頃はここまで肥大化していなかった感覚である。だから、そんな感覚を表現する彼女の歌はメロディの強度も歌唱もとても強く、今回紹介するSSWの中で一番ロックなアーティストだと思う。多感な現在地点がパッケージされた、まぶしさがきっと感じられるだろう。『he(a)re』というアルバムタイトルには、「今ここで、わたしの歌を聴いてほしい」という意味が込められ、音楽漬けだったという高校生活の集大成となる作品だ。「自分」という、厄介で果てしなくて未知なる存在を、彼女は今どのように人に伝えようとし、そしてどこまで自由に表現しているのか、期待している。

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text by RYOKO SAKAI

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