【インタビュー】サイロシス、現代社会に向けた怒り『ドーマント・ハート』

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サイロシスはイギリスの若手ヘヴィ・メタル・バンドであり、ジョシュ・ミドルトン(G、Vo)が率いるこのバンドは4作目となるフル・アルバム『DORMANT HEART』を完成させた。スラッシュ・メタル、デス・メタル、プログレッシヴ・メタル等々、多種多様なメタル・サウンドからの影響を取り込んだその音楽にはかねてより高い評価が寄せられてきたが、彼らはこの新作においては今まで以上にアグレッシヴなサウンドを追究することを意識したとのこと。テクニカルなギター・プレイと、スクリームとメロディアスな歌唱の使い分けにも定評のある若きリーダー、ジョシュが取材に応じてくれた。アメリカ巡業中、機材車が大破するも、幸いにも死者や重傷者が1人も出なかった2013年の交通事故のことから訊いてみた。

◆サイロシス画像

――2013年の9月末、アメリカ・ツアー中にあなた方の車が交通事故を起こしてしまい、ツアーを途中で切り上げる必要がありました。死者や重傷者が出ず何よりでしたね。どういう状況だったのでしょうか?

ジョシュ・ミドルトン(以下J):運転していたのは別の人で、俺達は後部にいたから正確なことは判らないんだけど、ドライバーが車線変更をしようとしたら、その車線にステーションワゴンがいたんで、元の車線に戻ろうとしたら、そこに大きなトラックみたいなのがいた。多分、時速60マイルか70マイル(時速97~113km)で衝突したんだと思う。事故そのものは本当に大きなものだった。俺達が乗っていた車は完全に破壊されたから。それに、車が衝突した箇所が少しでもずれていたら、俺達はもっと酷い怪我を負っていたかもしれない。衝突の大きさを考えると、比較的軽い怪我で済んだのは幸運だったよ。だから、移動手段を失って、経済的にもツアーを続けるのは到底不可能だったから、ツアーは早めに切り上げるしかなかった。1ヵ月以上も早く終わることになったから最悪だった。幸いにも深刻な怪我はなかったから。もっと酷い事故に遭ったバンドはいる。BARONESSのように。広い視野で見たら、俺達はかなり幸運だった。

――大ごとにならず良かったです。音楽の話をしましょう。新作はあなた方が作ってきた中で最も怒っていて、攻撃的で、強烈な仕上がりだと自負しているようですね。そして、それは歌詞の内容と関係しているとか? 自動操縦的に生きている人々や社会、不正に無関心や冷笑主義を決め込む社会のあり方に対しての怒りをテーマにしているのだとか? 具体的に説明していただけますか?

J:ああ、人は年齢を重ねるにつれて、自分の身近な世界の外にある、もっと広い世界に注意を向けるようになって、社会や政治、環境問題のことなんかもより理解を深めていくことになる。でも、深刻な問題について敢えて考えようとしない人達が大勢いると思うんだ。俺も大差はないけれど。世界で起こっていることに気付かない振りをして、心配しないでいる方が楽だから。でも、同時に、誰もがそうだったら、何も進展しないし何も変わらないと思う。

――アルバム全体のテーマはそういうことを扱っているのでしょうか?

J:ああ、ひとつテーマとして挙げるとするなら、今言ったことだと思うよ。

――サウンド面であなたが理想だと思えるアルバムはありますか? こういう音のアルバムは好きだ、いずれこういうものを作りたいと子供の頃に思い描いたものはありますか?

J:そうだな…。俺達の好みは年月と共に変わってきたと思う。それに、俺達がコピーしたいと思うサウンドのアルバムというのは、特にないかな。子供時代にオールドスクールのMETALLICAのアルバムを沢山聴いて育ったけど、彼らの初期のサウンド・プロダクションみたいにしたいとは思わないよ。中にはちょっと時代遅れのように聞こえるかもしれないものもあるし、最近のものはそれほどへヴィではなかったりするしね。でも、非常にライヴ感のあるサウンドだったり、とてもオーガニックに聞こえたりして、当時のアルバムには他にはないヴァイブが確かにあったよ。例えば『RIDE THE LIGHTNING』は、凄く自然なサウンドで、独特の雰囲気がある。俺達は主にオールドスクールのバンドからインスピレーションを得ているし、それが当時のレコーディングのやり方だったから、俺達も俺達のアルバムで雰囲気を作り出したいと努めている。それが大事なことだよ。

――プログレッシヴと呼べるアレンジもこのバンドの持ち味です。SYMPHONY X、CYNIC、OPETHといったプログレッシヴなタイプのバンドもお好きだとか? そういったバンドのどういったところに惹かれますか?

J:えっと、SYMPHONY Xは誰が言ったのかな…。もしかしたら以前いたメンバーの誰かかもしれないし、別の誰かが言ったのかもしれない(笑)。でも、ああ、OPETHとCYNICのようなバンドの殆どからは大きな影響を受けているよ。プログレッシヴな音楽にどっぷり浸かるのはとても興味深いことだと思う。映画を観ているような感じで、旅に連れていってくれる。長くて面白い曲の構成でいつも魅力的だよ。具体的な理由はわからない。でも、人生のファンタジーっぽい面の方に惹かれてしまうからなのかもしれないな。


――新作の日本盤にはSMASHING PUMPKINSの「Zero」のカヴァーが収録されています。意外な選曲ですが、彼らのことは好きなのですか? ヘヴィ・メタル・バンドではありませんが。

J:うん、子供の頃にとても好きだったんだ。俺がギターを弾き始めたのが1990年代半ばで、へヴィなものなら何でも好きという感じだった。グランジだろうとメタルだろうと。それに、俺達が選んだ「Zero」は、かなりメタルなサウンドだよ。音楽的には、METALLICAがレコーディングしてブラック・アルバムに入れたとしてもとてもよく合ったんじゃないかと思える。ボーカルとプロダクションが、違うタイプの、かなりグランジーなサウンドに仕上がっているだけでね。俺達は、その背景にメタルのプロダクションを持ってきたら、かなり…。ほら『ブラック・アルバム』時代のメタリカの曲っぽくなるんじゃないかと思ったんだよ。へヴィなボーカルを入れたいとも考えたよ。うん、全体として、SMASHING PUMPKINSとしては、かなりメタルな曲だと思う。それに俺達は、あまり変えないでやっている。ほぼ忠実にプレイして、ボーカルをちょっと変えた程度だ。よりスクリーミングが多めという感じにしてね。


――歌詞について、話しておきたい曲はありますか?

J:いや、すぐに思いつくのはないね。俺は歌詞を別の何かでドレスアップするような感じにするのが好きだ。俺が何の話をしているのかが通常は誰にも判らないようにしておきたいから。特にニュー・アルバムはそうだ。歌詞のテーマが社会や政府などについてだから、俺の意見を他の人達に押しつけたくないんだよ。だから、メタファーなどを使って、歌詞が本当に意味していることを隠そうとしている。皆、それぞれに決めてくれればいいんじゃないかな。

取材・文:奥野高久/BURRN!



サイロシス『ドーマント・ハート』

2015年1月14日発売
通販限定 / CD+DVD+Tシャツ 5,500円+税
通販限定 / CD+Tシャツ 4,500円+税
初回盤CD+DVD 3,500円+税
通常盤CD 2,400円+税
1.ホエア・ザ・ウルブズ・カム・トゥ・ダイ
2.ヴィクティムズ・アンド・ポーンズ
3.ドーマント・ハート
4.トゥ・ビルド・ア・トゥーム
5.オーヴァースローン
6.リーチ
7.サーヴィトゥード
8.インドクトリネイティド
9.ハーム
10.マーシー
11.キャラス・ソウルズ
12.クワイエスセント
13.ピラーズ・エロード*
14.ゼロ(スマッシング・パンプキンズ・カヴァー)*
*初回限定盤CDボーナストラック
初回限定盤DVD収録内容
・スタジオ・インタビュー(日本語字幕付き)
・ライヴ・イン・スタジオ(スタジオ・セッション・ライヴ映像)(約13分)
1.トゥ・ビルド・ア・トゥーム
2.マーシー
3.リーチ

【メンバー】
ジョシュ・ミドルトン(ボーカル/ギター)
アレックス・ベイリー(ギター)
カール・パーネル(ベース)
アリ・リチャードソン(ドラムス)

◆サイロシス・オフィシャルサイト
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