2015年新春企画として、音楽フェスというキーワードをひとつの軸にしながら2014年~2015年の音楽シーンの新人を紹介したい。そもそも、ここでなぜ「フェス」なのかというと、単純にその開催数がとても多いからだ。フェスは数年前から過渡期にあると言われながらも、その存在は影を潜めていくどころか、もはや音楽ファンのものだけでなく一般層にまで確実に普及している。たとえばイオンのバーゲンが「夏フェス」と謳われたり、全国の鍋料理を集めたグルメイベントが「鍋フェス」と謳われている。これは明らかに音楽フェスが量産されている影響ではないだろうか。

聞こえてくる音楽フェスに対する意見としては、「乱立し過ぎて飽和状態にある」「どこも出演者のラインナップが似通っている」「開催目的やフェスとしての指針がイマイチ見えてこない」「フェスで盛り上がることが“音楽”にとって本当に大事なことなのか」といった、割と否定的な見方も生まれている。だが、現在の音楽シーンのバロメーターの機能を果たしていることに間違いはない。売り出し中のタイミングであればどんどんフェスへ出演し、より有名なフェスへの出演を望むアーティストは多いだろう。もしくはその逆で、敢えてフェスには出演しないアーティストもいる。つまり、人々は音楽フェスを無条件に意識しているのだ。

もちろんリスナー側も、春も夏も年末年始もフェスが開催される状況にある今、1年中フェスのアナウンスに注目していると思う。前年度からのステージのランクアップにそのアーティストの成長を確認し、チェックしていた新人がどこかのフェスのオープニングアクトを務めることになったら「やっぱキタ!」ってガッツポーズする。フェス用にパーカーや長靴を揃えたくなるだろうし、持ってくマフラータオルでセンスを見せたい気持ちもきっとある。フェスの種類もより多彩になっていて、各地のイベンター、地方自治体、テレビやラジオなどの放送局や雑誌媒体の他にも、くるりの<京都音楽博覧会>、10-FEETの<京都大作戦>、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの<NANO-MUGEN>といったアーティスト主催フェスはたくさんある。さらに、やついいちろうの<YATSUI FESTIVAL! >や小籔千豊の<コヤブソニック>といった芸人が主体のフェスも開催されている。LITHIUM HOMMEといったファッションブランドによるフェス<LITHIUM ROCK FESTIVAL>も開催されているくらいだ。

ここ1~2年では、[Alexandros]、KANA-BOON、キュウソネコカミ、大森靖子らは、フェスという舞台を見事にセルフプロデュースし自分達の世界観を全面に表現することで、各所に爪痕を残してきた。それがすなわち、邦楽シーンに台頭してきたことに直結していると言える。今回の企画は、そうしたフェスで勝ち続けたアーティスト陣からさらにニューフェイスへとフォーカスを絞った特集だ。2014年という1年を振り返ると共に、2015年いち押しアーティストと出会い、ここで青田買いもしていただけたらと思う。それではまず、2014年のフェスを彩った素晴らしい新たな才能から。

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【ゲスの極み乙女。】
改めてここで紹介するのも躊躇うほど、2014年最も旋風を巻き起こしたバンド、ゲスの極み乙女。。音楽性は、プログレ、ジャズ、ヒップホップなど玄人好みの要素を真ん中に置きながら、メンバーのそれぞれに立ったキャラクター含め、「独自のポップ」を本当に描いてしまった。その存在感は早くも各所に知れ渡っていて、Mステや『王様のブランチ』などのテレビ出演も多数。最新作『魅力がすごいよ』では、川谷絵音の心がそのまま音楽へと昇華された曲が多く、ゲスらしい巧みなバンドアンサンブルと心象風景の表現が高いレベルで融合している。なお、ゲスの極み乙女。が2014年に出演したフェスは、<ARABAKI ROCK FEST.14>、<SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2014>、<JOIN ALIVE 2014>、<TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2014>、<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014>、<RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO>、<MONSTER baSH 2014>、<Sky Jamboree 2014>、<RUSH BALL 2014>、<COUNTDOWN JAPAN 14/15>など。

【SHISHAMO】
この「君と夏フェス」のミュージックビデオでは、実際に出演したフェス<VIVA LA ROCK>の風景が盛り込まれている。けいおん!以降のガールズバンドの筆頭者であり、既にオールナイトニッポンRでパーソナリティもつとめている、「SHISHAMO」。だが彼女達にとって2014年は、7月という絶好の時期にシングル「君と夏フェス」をリリースしながらも9月にはベース交代という、怒涛の1年となった。2015年も、そんなタフな3人に注目して欲しい。一見かわいらしいい3ピースガールズ・バンドという印象だが、「フェス」という旬なワードをフィーチャーしたり、続いて「量産型彼氏」という名のシングルをリリースする、鋭い着眼点&批評性による楽曲を作るのだ。

【爆弾ジョニー】
シンプルな言葉で人生観や社会観をあっけらかんと、だが、ぶ厚く綴っている歌詞、グッドメロディ、そしてこのスケールの大きなバンドサウンドは、ブルーハーツを想起させる。爆弾ジョニーは、映画『日々ロック』に「終わりなき午後の冒険者」が主題歌として起用され、2014年の夏フェスにも出て行った。現在は、Vo&Gりょーめーの体調不良のため活動休止状態にあるが、「少しのあいだ時間をください。必ずなんとかします。」とオフィシャルサイトの本人からのコメントにあるように、瞬間的に心臓を掴まれるあの音楽をまた聴ける時を今はゆっくりと待っていたい。

【森は生きている】
ここ最近、バンド名のインパクトとその芳醇な音楽性から注目度が高まっている6人組。カントリー、ソフトロック、アンビエント、エキゾチカ、ジャズ、ブルース、クラシックといった色んな音楽嗜好を持つ6人によるサウンドのハーモニクスは、絶大だ。1曲の中で様々な表情を展開するものの、いわゆる「派手さ」とは真逆の音楽性だが、音楽的な刺激にとても溢れている。その一音一音の繊細さはため息が出るほど贅沢で、音楽家による強いこだわり──というか狂気すら感じさせる。ceroと共に、こうした音楽性でシーンを引っ張っている彼らは、ナチュラルな空気感を醸し出しながらも音楽の素晴らしさを力強く説くバンドだ。「音楽」に対する貢献度が高い、ミュージシャン・オブ・ミュージシャンのような存在。

【HAPPY】
京都府綾部出身の5人組であり、日本のサイケデリック・ロックの最前線にいるHAPPY。このドリーミー&ポップな音楽性と人懐っこいメンバーのキャラクターの登場は、また日本の音楽業界に希望を抱かさたほどの衝撃だった。2013年にはフレイミング・リップスの来日公演のオープニングアクトもつとめ、2014年は米国テキサス州の大規模フェス<SXSW14>を含むUSツアーを行うなど、その実力はすでに認められている。そして2015年。正直なところ、シーンにおける立ち位置云々抜きに、この若者たちが世界をどんな音楽で彩るのかが純粋にとても楽しみ。誰が聴いてもカッコイイし楽しいし気持ちいい、これほどポップなロックバンドの出現は奇跡だ。

【The fin.】
彼らの音楽の特徴としては、シンセポップ、シューゲイザー、USインディー、チルウェィヴが挙げられるが、一番の魅力は、こんなにも「サウンドスケープ」を描いていることだと思う。つまり、本来は目に見えない音というもので風景を見せることができるのがThe fin.。以前、今はなきバンドGirlsのクリストファー・オウエンスから、「僕らは、ロウソクも灯らないような酷い場所に、それでも明かりをもたらそうとしているんだ」と音楽を作る動機を聞いたことがあるが、The fin.に出会った瞬間にそれを思い出した。桃源郷を描くのではなく、これが本来の世界の美しさなんだと提示するかのような精度の高いライブパフォーマンスも素晴らしい。2015年3月17日(火)~22(日)に行われる<SXSW 2015>への出演も決定している。

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上記に挙げさせてもらったアーティストが、2014年に頭角を現していたラインナップだ。ここからは、バンド、ソロ、問題児的音楽集団、とジャンルはバラバラだけど今から知っておいて欲しい22組を一挙紹介する。

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【Shiggy Jr.】
2015年の大本命。オフィシャルサイトに「都内で活動中のポップでポップなバンドです」と自己紹介しているように、全力のポップネスが魅力のバンドだ。一聴しただけで、「あぁ、この音楽はみんなのものだ」と直感できる。2012年に結成し、2013年に行われたmona recordsのオーディションでグランプリを受賞。エレポップ、ディスコ、渋谷系、シュガーベイブ、いろいろな解釈をしそうになるが、この振り切れた明るさが最大の特徴。ところで、ライブ会場ではしゃぐ人々ってどれほど普段から人生を楽しんでいるのだろう? 日常の憂さ晴らしをしに来ているのか、自分のテンションを共有したくて集まったのだろうか、なんとなく面白そうだからとりあえず足を運んでみたのか。Shiggy Jr.の音楽は、そんな人々を一緒くたにしてしまうポップミュージックを表現しているのだ。Shiggy Jr.の音楽って、なんて器がデカイのだろう! かっけぇ!

【Yogee New Waves】
オフィシャルサイトによると、はっぴいえんど、松任谷由実、山下達郎、サニーデイサービスなどの影響を受けている自分達の世代ならではのポップミュージックをという指針を持っているバンドだ。東京を中心に活動中の4人。前述した偉人達がもたらした「ポップな歌」を継承していて、ひと世代上のバンド「踊ってばかりの国」の歌のように存在感が大きい。だが、都会の夜と早朝にある喧騒と哀愁と焦燥が、淡くもったりとしたタイプのサイケデリックなサウンドで表現されており、そのロマンチックでセンチメンタルな世界観は彼らオリジナルだ。音楽ってロマンがあるからいい。それに彼ら、ライブだと音源にあるゆるさではなく、Vo角舘の衝動が全面に表出してくる。そして彼らのどこか危なっかしい雰囲気も何かやらかしてくれそうで好感が持てるはず。The fin.による<Days With Uncertainty Release Tour>の出演も控えている。

【ROTH BART BARON】
中学校の同級生であった中原鉄也と三船雅也の2人からなる東京出身のユニット、ROTH BART BARON(ロットバルトバロン)。2010年に自主制作による1st EP『ROTH BART BARON』をセルフリリースし、2014年4月に1stアルバム『ロットバルトバロンの氷河期』を発表している。バンジョーやマンドリンといった原始宇宙を感じさせるサウンドが、幸福感とともに厳寒な感覚ももたらす、あまりにも深遠な音楽。この感覚はまるで、いま自分が森や大聖堂にいるよう。奥が深そうだがその存在は自然。心地いいが何度となく圧倒されるこの感じ。芳醇なアコースティックサンドによって和製Fleet Foxesと評されることが多いが、彼らは、何かの焼き増しではない。日本語で堂々と綴られた凛とした言葉の数々は、世界の不条理や未知なる自分という難問と静かに向き合っていて、神羅万象を自分の目で見定めようとする勇気が見受けられる。怒鳴られるより静かに諭されたほうが胸に届くのと同じで、2人の意志はこの牧歌的な音楽を通じて表される時にとてもエモーショナルに響く。彼らのそんな強さが、すでに2度もUSツアーを成功させるというワールドワイドな音楽活動を実現させるのだと思う。絶対にフジロックで観てみたくて、その瞬間を妄想している。

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