【インタビュー】フェイス・ノー・モア「リユニオンはもう過去のこと、未来に興奮している」

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いよいよ2月、実に1997年以来となるFAITH NO MOREの通算5回目の来日公演が実現する。具体的な新情報がほとんど届かないこともあって、このバンドを取り巻く現状についてはなかなか見えにくいところがあったが、今回は、オリジナル・メンバーのひとりであるドラマーのマイク・ボーディンが、メールでの取材に応じてくれた。

◆フェイス・ノー・モア画像

「日本でプレイすることを、いつも楽しみにしてきたよ。今回、なかなか実現せずにいたことが幸運にも実現することになって、とても嬉しいし、楽しみにしているんだ」

彼はまず、そう述べている。そして過去4回(1991年、1993年、1995年、そして1997年)の来日時のオーディエンスの印象について尋ねてみると、「日本のファンについては、すごく集中して俺たちがやっていることを観ているっていうイメージがあったな」との回答が得られた。もちろん視覚のみならず、受け手側がすべての感覚をステージに集中させざるを得なくなるようなライヴを披露しているのは彼ら自身であるわけだが。

1982年、アメリカ西海岸のサンフランシスコで産声をあげたFAITH NO MOREは、1998年に解散し、2009年にリユニオンに至っている。ボーディン以外の現在のラインナップは、マイク・パットン(Vo)、ビル・グールド(B)、ロディ・ボッタム(Key) 、そしてジョン・ハドソン(G)という顔ぶれだ。以降、フェスなどを中心に比較的コンスタントなライヴ活動を行なってきたが、もはや復活から丸6年以上を経ているだけに、“再結成バンド”というような意識は彼ら自身のなかにも皆無であるようだ。ボーディン自身も当然のように、「すでに新しい音楽の準備も整っているし、リユニオンはもう過去のことで、今の俺たちは未来について興奮しているんだ」と答えている。また、2009年以降の時間経過のなかでの感覚の変化ついて訊いてみると、次のような回答が返ってきた。

「2009年、俺たち全員が元の場所に戻ってきた。当初はどうなるかわからなかったけど、実際にやってみたらとても良かった。なによりも15年の間、俺たちの音楽をサポートし続けてくれたファンの支えがあったからね。俺たちはお互い、まず面と向かって座ることから始めて、ひとりひとりがどう感じるかを確かめながら幾つかのステップを重ねていって、そうしながら全員が納得する方法を探していったんだ」

彼自身の言葉からも察することができるように、バンド内の関係性はより有機的なものになり、実はすでに、オリジナル作品としては『ALBUM OF THE YEAR』(1997年)以来となるニュー・アルバムが完成に近付いており、2014年末にはそれに先駆けて「MOTHERFUCKER」と題されたシングルも配信リリースされている。

ボーディンは「新しい楽曲はかなり出揃ってきているし、リリースはもうすぐだよ。長い間、真剣に制作を続けてきたし、出来栄えにはとても満足している」と語る。すでに米『ローリング・ストーン』などでは、ベーシストのビル・グールドが新作のプロデュースを手掛けていると報じられているが、それについて確認を求めると、「ビルはほとんどのサウンド・プロダクションとエンジニアリングを担当していて、もうかなり追い込んでいるよ」と認めてくれたが、「アルバムのタイトルや発売日は、まだ教えられないかな」と、肝心の情報については見事にはぐらかされてしまった。

また、前述の「MOTHERFUCKER」1曲だけではニュー・アルバムの作品像を想像することは難しいが、そのように伝えると、彼は「これだけは自信持って言えるよ。正真正銘のFAINTH NO MOREのレコードだってことはね」と語っている。そこでさらに、過去のFAITH NO MOREと現在のFAITH NO MOREの違いについて尋ねてみると、彼からは次のような回答が得られた。

「変わったことといえば、メンバーのなかには家族を持って知識を得て、いろいろな経験をしてきた人間もいるし、それぞれが違うことで成功を収めてきた。そのことによって、気兼ねなくFAITH NO MOREに戻る気になれたんだと思う。ただ、変わっていない部分ももちろんある。それは音楽やショウに対する情熱、強さやユーモアかな」

FAITH NO MOREといえばサンフランシスコのバンドというイメージが当然のように強いが、今現在は各メンバーの拠点が散らばっているという。ボーディンによれば、「メンバーのなかにはフルタイムでこっちに住んでないやつもいるけど、全員で会ったり仕事をしたりするのは相変わらずサンフランシスコだ」とのことで、メンバー個々がこのバンド以外にも活動の場を持っている現実についても、「摩擦を避けるのにはいいんじゃないかな。だけど俺たちは実際、好きでここにいるわけだからね」と語っている。

かつてFAITH NO MOREが音楽シーンに登場した当時、その音楽をどう呼ぶべきか、誰もが困惑したものだ。ハードコア、オルタナティヴ、ミクスチャー…いずれも彼らにとっては必要十分な呼称ではなかった。ボーディン自身も「俺たちは音楽にいろんな要素を取り込むからね。カテゴライズをあんまり気にしたことはないけど、敢えて言うなら“FAITH NO MORE ミュージック”かな」と語っているが、彼らのような先鋭的なバンドが、時代の流れのなかでクラシック・ロックのように見られるようになりつつある傾向というのもある。ただ、それについても彼は肯定的で、「時代が変わっても音楽が残されて評価されるのであれば、それは光栄なことだよ。なんと呼ばれようとね」と答えている。

実は筆者は、2009年、英国のダウンロード・フェスティヴァルでの彼らのパフォーマンスを目撃しているのだが、まず度肝を抜かれたのがPEACHES & HERBの1978年のヒット曲、「REUNITED」のカヴァーが披露されていたこと。この選曲がリユニオンに引っ掛けての洒落のであることはお察しいただけるはずだが、なにしろ原曲は彼らとはあまり縁のなさそうなソウル・バラードだ。もちろん彼らは往年からCOMMODORESの「EASY」(こちらは1977年のヒット曲)をとりあげるなど、カヴァーひとつをとっても非常に洒落っ気があった。そう伝えると、彼は「ありがとう。カヴァーをするときの選曲は場合によっていろいろだけど、とにかく素晴らしい曲で、良いメッセージかもしくは楽しさのある曲を選ぶようにしている。楽しいことはいいことだよ。それを忘れちゃ駄目だ」と答えている。新しいオリジナル曲ももちろんだが、今後、彼らがどんなカヴァー曲を引っ張り出してくるかというのにも注目しておきたいところだ。

ところで前述の通り、彼らは2009年以降、コンスタントにツアーを行なってきたが、欧州や南米を積極的に回ってきたのに比べ、北米ではあまり多くの公演本数をこなしていない。その理由について説明を求めると「新鮮さや自分たち自身を見失わないようにするためにも、一回のツアーは2週間までということにしたかったんだ。これまでにも西海岸や東海岸ではプレイしてきたけど、どういうふうに残りの90%のアメリカをツアーすればいいか、正直、わからなかったんだ! 今年は…できるかな?」との回答が得られた。そしてその言葉を裏付けるかのように、ごく最近になって彼らのオフィシャル・サイト上には、4月から5月にかけて行なわれる全15公演のアメリカ/カナダ・ツアーの日程が発表されている。

そして最後に、その全米ツアー実施を前にして、久しぶりの再会を果たすことになる日本のファンに向けてのメッセージを求めると、彼からは次のような言葉が返ってきた。

「FAITH NO MOREはストロングで、まっすぐで、BLACK SABBATHやBLACK FLAGに勝るとも劣らない価値のあるライヴ・バンドだ。とにかく期待していてくれ。ANTEMASQUEと一緒の日程があるのも楽しみだな。彼らが俺たちや俺たちの音楽を、世界中へ連れてってくれるんだ。待ちきれないね! 俺たちは狂喜しているし、準備万端な状態にあるから、みんなも用意していてくれ。昔からのファンのみんなには“また会えることを幸せに思う”と伝えたいし、俺たちを初めて観ることになる新しいファンには“会場で会おう。そこに来て、しっかりと自分を見つけてくれ!”と言いたいね」

ボーディンの言葉にもあったように、今回の来日公演はTHE MARS VOLTAのオマーとセドリックを核とするANTEMASQUEとのカップリングという形式で、2月17日と18日の両日、東京・新木場STUDIO COASTにて開催される。年明け早々から要注目の来日公演が続いているが、このステージもまた、絶対に必見である!

取材・文:増田勇一


<FAITH NO MORE/ANTEMASQUE来日公演>

supporting act:LE BUTCHERETTES
2月17日(火)東京・新木場STUDIO COAST
2月18日(水)東京・新木場STUDIO COAST
※両日とも開場18:00/開演19:00
※さらに2月16日(月)には大阪・梅田クラブクアトロにてANTEMASQUEの単独公演(LE BUTCHERETTESがサポートを務めますが、FAITH NO MOREは出演しません)も開催!

◆来日公演オフィシャルサイト
◆FAITH NO MOREオフィシャルサイト
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