【インタビュー】sukekiyo「“このバンド、何するかわかんないな”っていうのがsukekiyoなんです」
■匠は生きることに対しての貪欲さがホンマにすごい。“俺、生きる!”みたいな(笑)
■それは変態性とは違うかもしれないけど(笑)、ちょっと異質な感じはしますね。
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匠:ああ、そうですね。それによってさらに可能性が見えたっていうか。
YUCHI:そういう意味でも、ヨーロッパ・ツアーは刺激的だったんです。あっちのお客さんって、自由じゃないですか。そういう空気感のなかでライヴをやるっていうのが単純に新鮮でした。国内でのsukekiyoのライヴに慣れてきた頃に海外に行って、また違う反応とか空気感とかでやれたことで、こういうのもアリなんだなって思えたり。
――ヨーロッパ公演でも私語厳禁な雰囲気だったわけじゃないんですよね?
京:べつにこっちからは何も言わなかった。ただ、自分らがやってること自体は、日本でのライヴのときとあんまり変わんないですけど。
YUCHI:それでもなんか、自由な感じでしたよ。踊りたい人は踊るし、暴れたい人は暴れるし、みたいな。じっくり観たい人はじっとしてるし。お客さんも自分のスタンスをいちいち変えてないっていうか。だからこっちも変えないし。
未架:さすがに大暴れとかはないんですけどね。空気を読んでくれてたのか、自分たちがそういう何かを醸し出せてたのかはわからないですけど、曲間とかに声は上がるにせよ、日本でのライヴと似た空気ではありましたね。で、終わったらワーッとなる感じで。
京:べつに日本でも、みんな観ながら動いてくれて全然いいんですけどね。いろんなとこでそう言ってるんですけど。
▲京 |
▲未架 |
▲匠 |
▲UTA |
▲YUCHI |
京:というよりは、どっちでもいいかなと思っていて。空気さえ読んでくれれば。動くな、とは言わないです。自由にしてくれていい。馬鹿みたいに暴れられると、ちょっと困るかもしれないけど、自由でいい。年末の<COUNTDOWN JAPAN>に出たときに、初めはちょっと声援みたいなのがあったんですよ。やっぱり初めて観る人とかもいるわけで。で、まあべつにいいやと思って演奏を始めて、1曲目が終わったらシーンとしていて(笑)。ああ、やっぱそうなるよね、と。空気読める人たちやったら、当然そうなるというか。
匠:バンドの提示してるもの自体が、そういう感じだから。
京:うん。バンドの色がそういう感じなわけで。そこで無理して勇者になろうして「俺、声出したったで!」みたいになる必要はないわけで。そういう人はべつに求めてないんですよ。でも、とにかく自由でいい。
匠:海外のお客さんの場合、そこでべつに勇者になろうとしてなくても、自然にそういうことが出来るアビリティがありますよね。
YUCHI:ああ、実際そういう感じでしたね。
京:カップルでいちゃいちゃしてたりとかね(笑)。目をつぶって映画のシーンみたいに踊ってたりとか。
匠:でもそれは全然、嫌な感じじゃないし。ある意味、合ってるなとも思えたし。
――逆に言えば、日本のオーディエンスはすごく空気を読んでくれる傾向にある、ということでもあるわけですよね。もちろん良い意味で。
京:うん。だからなんか、えらいですよね(笑)。
――今回は東京と京都での単独公演の前に対バン・ツアーを展開していますけど、そこには何か理由があるんですか?
京:ホントはツーマンで全部まわりたかったんです。でも、どのバンドも全日程出演可能という状況じゃなくて。この日ならOKです、という返事がいくつかあったから、じゃあ毎回違うバンドとやるようにしようか、と。
――対バン相手は、とてもさまざま。異質なものとぶつかることでの刺激を期待しているわけですか?
京:それもありますし、最近、なんかどのイベントを見てても似たようなジャンル同士が一緒にやってることが多くて。まあ、そりゃそうでしょう、盛り上がって当然でしょう、みたいな。でも、僕からするとあんまり面白くないというか、一個ぐらい、まったく違う「なんでここに出てくるの?」みたいなバンドがいてもいいんじゃないかと思うんですよ。誰かがその壁を壊しにいってもいいはずだと思う。
――勇者になろうとしてますね!(笑)
京:僕らは勇者になってもいいんですよ(笑)。なんかね、全然真逆のタイプのバンドを観る機会ってあんまりないじゃないですか。友達に無理矢理に薦められるとか、そういう切っ掛けでもないと。でも、そういうのがあってもいいかなあ、と。
UTA:このバンドが始まる時点で、京さん自身がそういうことを言っていたんです。普通の対バンはしたくない、とか。そういうのに賛成してみんな入ってるわけなんです。だからもう、そこは悩むところじゃないというか、おまかせというか。「こんなのが決まったよ」という“お知らせ”でまずウチらがビックリして(笑)、そこから始まるんで。「ええっ、この方々ですか!」みたいな。
京:まず、メンバーを驚かせるところから始まりますからね(笑)。
――メンバーを驚かせるところから始まり、メンバーがハプニングに襲われている様子を楽しむ。いやぁ、それは楽しそうですよ。
京:でしょう?(笑)
――さて、新作の『VITIUM』というタイトルは英語で言うところの“vice”にあたる言葉らしく、異常性とか欠点、過ちを意味するようですね。京さんは今作に伴う資料のなかで「誰にでもひとつぐらいはそういうものがある」というような発言をしていますけど、皆さんがそれぞれに自覚している自分の特殊性というと、どんなものです?
UTA:いやー、それは言えないっす(笑)。
京:他人のことなら言えるんですけどね。ふふっ。
(ここで、申し合せていたわけでもないのに、何故か全員の視線が匠に集中する)
京:こういう話をしてると、だいうたいこういうことになるんです(笑)。なんかね、匠はホンマに、“生きる”ってことに貪欲なんですよね。見倣わなアカンな、と思うぐらい貪欲なんです。たとえば1日の予定を組むとするじゃないですか。それがスムーズに予定通りいくこともあれば、そうじゃないこともあって、「ああ、じゃあこれは明日かな」とか、そういうことになる。だけど匠は常にそれを完璧にこなすんです。何時に何処そこに、みたいなことが決まってると、明らかに遅れそうでも「いや、俺は行きます」みたいな感じで。こないだのヨーロッパ・ツアーのときも……たとえば飛行機のご飯とか、まずいことが多いじゃないですか。で、パッと匠のほうを見てみたら、自分で作ってきたサンドイッチみたいなのを食べていて。
京:わっ、こいつ食にも貪欲やねんな、みたいな(笑)。
――匠さんは、機内食はまずいものだという前提で用意していくわけですか?
匠:ちょっとそれも想定して(笑)。楽しい旅、快適な旅をしたいじゃないですか。だからホテルの朝のバイキングで若干余分に食料を拝借して、自分で作っていくんです。
――備えあれば憂いなし、というわけですね。
匠:まさにそれです!(笑)
京:ただ、こいつの場合、それが食に関することだけじゃなくて、ほぼすべてにおいてそうなんですよ。もちろんライヴのことでもそうだし、リハとかもちゃんとスケジュール通りにきちんとやって、自分のプライヴェートも確保するんです。「何時にハリー・ポッターゆかりの場所に行くんで、何時頃帰ってきます」みたいな(笑)。ホンマにすごいんですよ、生きることに対しての貪欲さが。“俺、生きる!”みたいな(笑)。そのパワーがすごい。それは変態性とは違うかもしれないけど(笑)、ちょっと異質な感じはしますね。
――悪いことじゃ全然ないけども、度を超えているというのがあるわけですね。
京:うん(笑)。ドイツに行ったときにも、バッハの墓に行きたい、と。だけど片道3時間ぐらいかかるところだったんですよ。往復6時間じゃないですか。普通、諦めますよね? でも、ギリギリまでむっちゃ悩んでるんですよ、「行けないかなぁ」って。こっちとしては「そこでそんなに悩むの?」という感じで(笑)。
匠:結局、その街への到着が遅れたんで、無理だったんですけどね。それで結果、諦めて。でも予定通りに着いてたら、30分しか現地にいられなかったとしても行ってたかも(笑)。
京:そういえば、墓は諦めつつも電車に乗ってどっか行ってたよな?
匠:ええ。バッハにゆかりのある教会があったんで(笑)。
京:ひとりで電車に揺られて、そういうところに行くんですよ。
匠:その教会のところにあった木の葉を1枚とってきて……。作曲で困ったときにはそれを煎じて飲んでみようかとな、とか思ってるんですけど(全員爆笑)。
京:わりとキテるでしょ?
――甲子園の土か、みたいな(笑)。
匠:ええ、まあ。わりとそういうの、自分としては普通なんですけどね(笑)。
――ひとつ念のため聞いておきたいんですけど、備えあれば憂いなしの精神で用意していったサンドイッチは、もしも機内食が美味しかった場合にはどうなるんですか?
匠:いや、実際、意外と美味かった便もあって。
YUCHI:確か、機内で食べ比べてましたよね?
UTA:しっかり目撃されてる。
YUCHI:ホテルの食材のほうがグレードが上だな、みたいなこと言ってましたよね(笑)。
京:向こうのライヴハウスのケータリングで、食パンとかどっさり用意されてたりすることがあるんですね。で、ライヴが終わって「はい、移動します」ってなったときに、やつは全部それを鞄に詰めてますからね。「食パン1斤持って帰んの?」みたいな。「ええ、何かあったときのために」って(笑)。コイツすごい、と思って。
――匠さん、手荷物が多そうです。
匠:ああ、確かに荷物は多いです(笑)。
YUCHI:そうっすね、確かに(笑)。
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