TM NETWORKの全国アリーナツアー<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA>が2月15日に全日程を終了。さる2月7日と8日には、さいたまスーパーアリーナにて開催された。

◆<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA>画像

<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30>の追加拡大版とも言うべき本公演。つまりディレクターズ・カットのようなものか……と想像しがちだが、そのあたりはさすがTM NETWORK。帰着するポイントこそ同じだったかもしれないが、そこへと至る過程には新要素が満載。むしろ<QUIT30>と<QUIT30 HUGE DATA>は、まったくの別公演と呼んでもいい、そう呼ぶべき公演となっていた。

ライブは、宇都宮隆が“例のバトン”を拾うという<QUIT30>ツアーのオープニングをコンパクトにしたシーンからスタートしていく。「Communication」の声が、さいたまスーパーアリーナを飛び交い、ショルキー(Tetsuya's Mind Control)を抱えた小室哲哉と、エレアコを鳴らす木根尚登とともに、「SEVEN DAYS WAR」。そして、クレジットが表示され、物語の幕開けを告げるような「Birth」。音の洪水と、この広い会場だからこそできる圧倒的な照明演出で創り出された世界観は、この日のさいたまスーパーアリーナで、何を生んでくれるのか、そんなオーディエンスの期待感を煽っていく。

手拍子を煽っての「LOUD」。映しだされるのは、これまでのTM NETWORKが我々の前に見せてきた、ライブという名の物語。「テクノロジーの進化が引き起こした更なる混沌を1980年代に予見したTM NETWORK。彼らが表現してきたエンタテインメントはAR(拡張現実)だった」という主旨のメッセージと、過去の映像が、2015年のステージ上の彼らの動きとシンクロすることで、今、この瞬間、目の前にいる3人は、はたして一体どの時代の3人なのかという軽い錯覚を引き起こしていく。

気がつけば、レンガ造りの部屋で、革張りの黒いソファーに座るキャロル・ミュー・ダグラスの映像。そして傍らには小室の姿も。

「A Day In The Girl's Life」では、小室哲哉が撮影してきたロンドンの映像が、背面の大型スクリーンに映し出される。マイクスタンドを抱きかかえるように歌い上げていく宇都宮隆。そして「CAROL(CAROL'S THEME I)」で、「世界が今変わる」と、2階建てのバスが追い越していく景色の時を止める。それは音が盗まれた、音の消えた世界。彩りを失った世界。

「CAROL」という物語についての、こんなメッセージが伝えられる。

テクノロジーに
ファンタジーのドレスを着せ
音が盗まれる物語を創りました
音楽すらなくなってしまう
未来への危機感を
抱いたからです

これぞTKというべきサウンドと、大量のレーザービーム。<CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~ TOUR 1988-1989>のライブ映像(というか、ジャイガンティカの映像)をバックに、小室哲哉の即興でメロディーが紡がれた「Gia Corn Fillippo Dia」。「In The Forest」では、当時のライブ映像に映る3人と2015年の3人が融合。2015年の宇都宮隆が腕を伸ばせば、1980年代の宇都宮隆もまた同じアクションを見せる。ちなみに小室哲哉のツイートによると、映像出演しているキャロルは、<CAROL ~A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991~ TOUR 1988-1989>でキャロルを演じたパニーラ・ダルストランド本人だそうだ。


「In The Forest」から「Carol(Carol's theme II)」、そして「Just One Victory」の流れは、<TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation->の時とも同じ。眼前で作り出されていく、オーディエンスの天を指差す光景は、あの日、さいたまスーパーアリーナでの記憶をも呼び覚ます。そしてここで、再びメッセージが。

FANKSのアバターと
その日々を描いた
「CAROL」は
僕ら30年間を
代表する作品になりました
時代を超え
ここに戻ってきてくれて
ありがとう

CAROL組曲を経て、宇都宮隆が赤いテイラーのエレアコ、木根尚登がダブルネックのアコギを手にしての「Still Love Her」。3人のハーモニーが重なる瞬間、木根の極上のハーモニカがこの空間を満たす瞬間、そしてハンドクラップと、会場一体となったコーラスに包まれる瞬間。

映像では、キャロルから、FANKSへの最後のメッセージが送られる。「聴こえるはず、心をひらいて」という呼びかけに応えるように、声を揃えていくオーディエンスひとりひとり。それこそが、キャロルからのメッセージ。この歌声に共振するように、音の消えたモノクロの世界は、再び彩りを取り戻していく。

さらに前回、多くのFANKSに「木根がいてよかった」と言わしめた木根尚登ソロコーナー。サポートギターの松尾和博、ドラムRuyとともに披露された「Looking At You」で、アコースティックの温もりを持ったTMサウンドを披露していく。

さいたまスーパーアリーナ天井に吊るされたミラーボールが、地球上のネットワーク網を描くような無数の光を反射しながらの「We Love The Earth」。あの日考えていた遠い未来の息遣い、そこに根付くGood vibrationを感じ、多幸感に包まれるオーディエンス。

四方を鍵盤で囲まれた小室哲哉が、どこにその設計図があるのかというほどの、緊張感を高めるビートとスリリングなサウンドを積み上げてこの広い空間を期待と興奮で満たしたかと思うと、次の瞬間、例のアタック音で「Get Wild 2014」へと移行。会場のボルテージは爽快なまでに一気に放出されていく。そんな光景に、宇都宮もレスポールに持ち替えた木根も微笑みを見せながら、くるりとターンを決める。小室はNord Leadをスタンドからおろして、ステージ最前でツマミを弄りながらカオティックなパフォーマンスを決めたかと思うと、ステージから投げ捨てた瞬間、ステージでは大爆発が発生する。

煙の向こう側に見える俯瞰の景色と「I am」。<TM NETWORK CONCERT -Incubation Period->からまだ3年も経ってないというのに、この曲は流れ続ける時間の中で、様々なメッセージを孕みながら、我々に大切なひとつのことを訴えかけてくる。変わり続けることと、変わらないこと。Yes I am human。Yes We are human。

そして、赤、青、紫の衣装に身を包んだ3人が披露した最後の曲として、デビュー曲「金曜日のライオン」の<今 赤く燃えるサバンナ>をも想像させる夕日(グリニッジ天文台にて小室哲哉自ら撮影)を背景に歌われた「Fool On The Planet」。それは、地球潜伏30年目を迎えて任務完了となった2014年のTM NETWORKが、タイムマシンで時間を2年間(730日)巻き戻した、2012年の<TM NETWORK CONCERT -Incubation Period->1曲目。そしてあの日、母船から日本武道館のステージに降り立った3人もまた、赤、青、紫のジャケットに身を包んでいた。

2012年の再始動から続いた一連の物語は、<QUIT30>ツアーの内容を何倍も巨大に、そして情報量を増幅させた<HUGE DATA>で終了。そしていよいよ、TM NETWORKの30周年を締めくくるライブ<TM NETWORK 30th FINAL CONCERT>が3月21日&22日に横浜アリーナで待ち構えている。

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みなさんのエネルギーを
借りる事で
その時代その時代を
表現できた30年間でした
だから
今日、もしも
人生を彩る音を
見いだしてもらえたら
光栄です

There will be love & peace
from
HUGE DATA.
(<TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA>で表示されたメッセージ より)

Photo by Yukitaka Amemiya