【インタビュー】UQiYO、2ndアルバム発表「自分たちの音楽が総合芸術の領域に」

ポスト

■そもそも手は2本しかないというところで(笑)
■ループ・マシンを使いつつ、インプロビゼーションができる隙間も

──Yuqiさんが原曲を作る際に、最初のモチーフは、どのように生み出すことが多いのですか?

Yuqi:今の僕らの制作スタイルとして特長的な点は、プロジェクト・ベースで曲を作っていることです。このアルバムを制作してきた2年間で、僕らは相当な数のプロジェクトをやってきたんです。そこでのテーマであったり、そのプロジェクトに対する僕らのアプローチによって、曲を考えていきました。そこが、前作との決定的な違いですね。

──そういった制作スタイルに至ったのは、何かきっかけがあったのですか?

Yuqi:まず、UQiYOとしてやっていこうとした当初、今から4~5年ほど前に、「CDが売れない」と散々言われ続ける今の時代を、アーティストは、どういう風に生きていくのが“幸せ”なのか、それを長い時間をかけて、ずっと考えてみたんです。その時に、お金をたくさん稼いでロックスターになるというモデルを“幸せ”に掲げてしまうと、恐らく僕らは、不幸になるだろうと思ったんですね。もちろん、そういうやり方もあるでしょうけど、アーティストには、お金以外での満たされ方が絶対にあるべきだと思うし、世界的に見ても、例えば、高度成長期を経た今の北欧のライフスタイルにも、それは通ずると思うんですよ。生きるために十分なお金がある中で、お金とは違う何かで豊かになれれば、20年後に、死ぬほど働いてお金を稼いだ人よりも、「オレの方が幸せだ」って言えるんじゃないか、と。

──なるほど。よく分かります。

Yuqi:そういう考えに至った時期に、日本には、音楽業界とはまったく関わっていないけれども、素敵な作品を作っているクリエイターがたくさんいることを知ったんですね。そういう人たちと一緒にモノを作ったり、そういうクリエイターが、僕らと一緒にモノを作りたいと思ってもらえる存在になることができれば、これはロックスターになるのと同じくらいの事なんじゃないかと思ったんです。それで一時期は、デザイン事務所だとか、音楽レーベル以外のところに、デモ音源を送りまくったんですよ。

Phantao:映画の会社だとかね。

Yuqi:そうしたら、実際に数社から返事がきて、「一緒に何かやろう」と言ってくれたんですよ。最初のミュージックビデオも、まったくのゼロ・コネクションから、そのつながりで作ったものなんです。これに充実感を覚えて、味をしめたというか(笑)。面白いことをすること自体が、お金以上の価値を生み出すんだなって思ったんです。

──そうだったんですね。たとえば、「Saihate」は、シーケンス的なピアノが、どんどんエモーショナルになっていくのが印象的でしたが、この曲はどのような背景で?

Phantao:「Saihate」は、最初からライブを意識して作っていきました。

Yuqi:そうだったね。まず、ある革命家がいまして。その人は、今で言うエコビレッジの走りを始めた人で、熊本に三角エコビレッジ“サイハテ”という村を作って、自給自足の生活を提案している人なんです。その人が、“革命”というプロジェクトを立ち上げて、サイハテのような村をメキシコに作りたいと言い出して。それはかなり難しいんじゃないかとも思ったんですが(笑)、でも面白いなと思って賛同したら、じゃあ一緒にムービーを作りましょうということになって、そのために作った曲なんです。

──では、曲のテーマも“革命”?

Yuqi:僕も革命的な音楽を作りたいと思って、でも何を思ったのか、全パートをシャッフルするという革命を行ったんです(笑)。しかもライブでは、ピアノがリズムを担当して、僕はコード的な演奏をして、なぜかドラムが、パッドを叩いて声のサンプルを鳴らすという。ボーカルが歌わない。これこそが革命だと思って作ったんですけど、今にして思えば、勘違いだったかなって(笑)。それでも、この曲は作っていて面白かったですよ。「革命は一日にして成らず」ですね(笑)。

──(笑)。ライブと言えば、エレクトロな要素が強い音楽性にも関わらず、ポリシーとして、ライブでは同期を使わないのだそうですね。音源とはまた違う楽しみ方を提供したいという思いなのでしょうか?

Phantao:基本的には音源の再現を目指しますが、そもそも手は2本しかないというところで(笑)、ループ・マシンを使いつつ、インプロビゼーションができる隙間も作りながらライブをやっています。

Yuqi:僕が足元にボスRC-300(ループ・マシン)を置いていて、歌とnord electro、あとはギターの回線を分岐していて、1本はアンプ、もう1本をRC-300に入れるというシステムを組んでいます。

Phantao:僕もボスのループ・マシンを使っています。今まではRC-50でしたが、今度RC-300に変える予定です。曲によっては、Yuqiのループ・マシンと同期させたり。ライブでは、ヤマハCP33をマスター・キーボードに使っていて、ローランドINTEGRA-7(シンセ・モジュール)を鳴らしています。

──Yuqiさんのギターは、どういったものを?

Yuqi:Taylorのエレアコですが、ピエゾじゃなくて、マグネティックPUを搭載したモデルです。会社員時代に、サンフランシスコへ出張した際に、ギター・センターで見つけたんですよ。これを、LINE6 POD HD(アンプ・シミュレーター)を通して鳴らしています。

──ループ・マシンなどのツールを活用することで、独特の温度感のあるパフォーマンスを行っているのですね。

Yuqi:僕らは勝手に「ヒューマン・エレクトロ」ってジャンル付けをしているんですけど、ただのエレクトロではない、人間的な要素があることで、無限の情報量を音楽に加えたいと思っているんです。ラップトップでシーケンサーを流すだけではなく、どこかにアナログな要素がないと、自分がやるには、やっぱりつまらないと感じてしまうんです。

──一期一会だからこそのライブですもんね。

Yuqi:そうなんですよ。その日にしかできない音楽をやっているし、サポートのドラマーにもジャズの下地があって、彼はアドリブ好きな面もあるので、そういった要素も、ライブでふんだんに取り入れるようにしています。

◆インタビュー(3)へ
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報