【ライブレポート】植田真梨恵、ツアー初日の濃密さに「もう一回あたまからやる？」

メジャー1stアルバム『はなしはそれからだ』を引っ提げたツアー＜植田真梨恵 LIVE TOUR 2015「はなしはそれからだ」＞が3月15日、恵比寿LIQUIDROOMからスタートした。

◆植田真梨恵 画像

アルバム『はなしはそれからだ』は、ソングライター植田真梨恵の豊かな想像力と音への高い感度／感性が活きたファンタスティックな作品であり、シンガー植田真梨恵が繊細でエモーショナルな表現で聴かせる。いろいろな景色だったり、思い出の場所であったり、まだ見ぬ世界。そんなところへと音楽という乗り物で旅していくような作品だ。

大きな歓声のなかでバンドと共に登場した植田真梨恵の姿は、ゴーグルつきのフライト帽子をかぶったかわいらしい少年飛行士のようなスタイル。

「＜植田真梨恵LIVE TOUR 2015＞へ、ようこそおいでくださいました」

と機内アナウンスのようにかしこまって（というよりは、球場のうぐいす嬢のような人力エコーだったけれど）、挨拶をすると、「さいごまでついてきてください」とアルバム中でも豪快でロックなギターサウンドでぶっ飛ばす「FRIDAY」を披露するなど、序盤はアグレッシヴなバンド・サウンドによるダイナミックな曲を中心にフロアを盛り上げ、観客の熱をひっぱっていった。ハンドクラップを煽り、ギターをかき鳴らすその姿は、とても力強い。

　鶴澤夢人（ギター）、麻井寛史（ベース）、車谷啓介（ドラム）、西村広文（キーボード）といういつものバンド編成に加え、中盤では植田のアコースティックギターの弾き語りセットが用意されていたほか、アコースティック編成にヴァイオリニスト藤井里紗を迎えるなどさまざまな形でのアンサンブルでも魅せた。

インディーズ時代のアルバム『U.M.E』収録の「コンセントカー」などは、アコギ、ピアノ、ヴァイオリンで再現され、狂おしいほどに切ないヴォーカルを響かせる。『はなしはそれからだ』の中盤を飾るドリーミィなサウンド世界の「a girl」や「プリーズプリーズ」のような曲もまた、生のバンドスタイルでドラマティックに、より鮮やかにプレイされた。哀しい陰りと、凛とした美しさとが混じり合ったメロディが静かに会場に沁みわたり、その余韻を味わうように観客が拍手をする。

心地好い酔いのあるシーンがたっぷりとある半面、シングル曲「ザクロの実」や「彼に守ってほしい10のこと」などでは、観客がジャンプをしたり、リズムに体を揺らしたり。さらにアグレッシヴなバンドチューンでは頭上でハンドクラップをしたり、タオルを振ったりと一体感たっぷり。

アルバム同様、変化に富んだ、いろんなところに連れ立っていってくれたステージ。この日は開演時間が17時半と早かったこともあり、本編が終わる頃もまだ19時半くらい。「今日はまだこんな時間か……もう一回あたまからやる？」という冗談に、観客が大きな歓声で「やろう、やろう！」と盛り上がるほど、濃密なライヴであっという間に時間が経ってしまった。こんな感覚を味わうのも、濃いアルバムの世界観と、それを表現する鍛え上げられたバンド・サウンドやライヴ・バンドとしての面白さがあってのこと。とても良いツアーのはじまりだった。

取材・文◎吉羽さおり








◆植田真梨恵 オフィシャルサイト
◆植田真梨恵 オフィシャルYouTubeチャンネル