【インタビュー】シェーン・ガラス、B'zサポートドラムのインスト作品に「素晴らしい世界への広がり」

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私がもしシェーンだったとしら、今頃はテングになってミュージックシーンを高みの見物するようなドヤ顔をしているような気がする。ドラムプレイにとどまらずギター、ベース、キーボードのほとんどを自らプレイ、この驚異的なインストアルバムを一人で作り上げたのだから、それもやむなしでしょ。試聴音源を一聴すれば、その完成度とともにそこに宿された鬼才ぶりはすぐに分かる。



◆「Silverstrand Sedation」ミュージックビデオ

これはシェーン・ガラスの4作目となるソロアルバム『Bitter Suites from the Red Room』、発売は4月1日である。聴き返すたびにアドレナリンが身体を駆け巡る。腰が抜けるほど突き抜けた傑作の誕生を紐解くべく、本人直撃のインタビューに臨んだが、シェーンはいつもと変わらず謙虚なまま、穏やかな笑顔を湛えていた。

   ◆   ◆   ◆

■アルバムを作りたいという気持ちが強くて
■自分ひとりで全部やっちゃった

──前作『Ascend』インタビューの時に、シェーンは「インストのアルバムを出したい」と言っていましたね。それがこの作品ですか?

シェーン・ガラス:はい、その通りです。今まで溜まってきていたアイデアを1年前ぐらいからまとめ始めて、昨年の11月ぐらいからレコーディングに向けて作り上げて、実際のレコーディングは今年の1月から2月にかけて行いました。

──このギタープレイは…?

シェーン・ガラス:自分です。

──ベースも?

シェーン・ガラス:基本的にはだいたい自分がプレイしているんです。でも、ゲストミュージシャンに参加してもらった曲ではギターやキーボード、ベースも弾いてもらっていたり。ギターソロでTak(B'z 松本孝弘)に弾いてもらっている曲もあります。

──ドラム以外の楽器をこんなにも弾きこなせるなんて…ギタープレイを聴いて本当にぶっ飛びました。

シェーン・ガラス:小さい頃から弾いていたので、ギターを弾くのはわりと得意なんです。ドラムっていうのはすごくフィジカルな楽器なので、いつも毎日練習してないとキープできないんですけど、ギターもいつも触っていますから。曲作りもギターで行なうことが多いし、曲をまとめる際にもギターはすごく触っていたので。

──前作『Ascend』でもギターは弾いていたので弾けることは知っていましたけど、今作のインストプレイはまた別次元のギタープレイでしょう。ほんとに驚きました。

シェーン・ガラス:サンキュー。

──ギタリストとしての自己評価はどうなんですか? 謙遜しないでくださいね。

シェーン・ガラス:マイケル・ランドウみたいにライヴで演奏するのはすごく難しいことだと思うんですけど、スタジオは演りながら止めたりとか、今のダメだったなと思ったら演り直したりできるから、ずいぶんと楽です。やっぱりギターには長年触れてきたこともありますし、今までずっと素晴らしいギタリストの方々と仕事をしてきているので、「ギターというものがどういうものか」ということはある程度は理解してるつもりです。だから、自分がギターで表現したいことや出したいものは、わりとイージーに表現はできると思います。「自分が素晴らしいギタリストか?」と聞かれたら絶対的に「ノー」だけれども、自分が表現したいものをギターで表現できるという点では、ある程度満足しています。譜面とかスケールとか楽典的なことはよくわからないけど、耳で聴いてこの音が出したいということは実践できているので、ギタープレイヤーというよりも自分のフィーリングをギターで表現できる、っていうことだと思います。

──謙虚だなぁ。自分の凄さをわかっていないのかな…。

シェーン・ガラス:テクノロジーもすごく発達してるので、オーバーダブしたりやり直したりとか、いくつもトラックを作ったりするのは昔よりすごく簡単にできるようになったからね。

──テクノロジーでセンスは磨けないでしょう? 4曲目の「Grind 2.0 (The Salacious Elixir)」のリフからは、私はジェフ・ベックのようなフィーリングを感じました。

シェーン・ガラス:ジェフ・ベックも子供の頃からすごい好きだったんで。『ブロウ・バイ・ブロウ』や『ワイヤード』もすごい聴いていたし、ロッド・スチュワートとのジェフ・ベック・グループ時代のプレイもすごい好きだし。

──アルバムの中には、ブラッフォード作品のアラン・ホールズワースとか、スティーヴ・ヴァイ、ジョー・サトリアーニのようなクレイジーさや、ロバート・フリップのような実験的な匂いすら感じます。

シェーン・ガラス:そんなに褒めていただいて嬉しいです。ありがとうございます。

──シェーンは以前からインストバンドも演っていますし、「インスト」と「歌モノ」という2つの側面を持っているアーティストなんですね。

シェーン・ガラス:ヴォーカルもの、メロディものを考える時は、自分の中ではシンプルな方向に流れていく傾向があります。忙しいギターやベースよりもシンプルに作っていきたいと思う。例えばザ・ビートルズみたいに、ね。でもインストの場合は、スーパークレイジーなジャズだったりプログレっぽいものとか、ヴォーカルものとは違うとらえ方があって、そこはあまりクロスしない。そこは別モノだと感じているんですよね。

──実際の曲作りはどのように進んでいくんですか?

シェーン・ガラス:ギターのアイデアとかドラムのアイデアがちょっとずつiPhoneに溜めてあるんです。アイデアがいっぱいある中で、まずいくつかをピックアップしてPro Toolsに移してみて、今度はそれらに合わせてリズムのドラムを入れてみたりして、肉付けしていくような感じかな。あるいは、もうひとつのやり方として、例えばドラムのグルーヴがひらめいたら、そのグルーヴをまずレコーディングしてそれをループさせ、そこに合わせるように今度はギターのコードを入れていく。アイデア自体はすごくたくさんあるけれど、その中でやっぱりダメなものを削除していくと、40個くらいあっても使えるのは8個ぐらいになっちゃう。ただ、このアルバムではひとつのくくりにとらわれず、いろんなエレメントを入れ込みたかったっていうのはありました。

──確かに1970~1980年代の名盤で感じられるようないろんな要素が味わえます。最後の曲「Song for Dale」あたりにはドナルド・フェイゲンのような匂いも感じました。

シェーン・ガラス:「Song for Dale」は父のために書いた曲なんです。子供の頃にお父さんがピアノを弾いて、自分がドラムを叩いてたそのイメージからきてる曲なんです。

──シェーンが3人ぐらいいたらバンドでジャムれるんでしょうけど、そうも行かない。楽器を持ち替えながら一人でレコーディングを進める作業って、どんなメリットとデメリットがありますか?

シェーン・ガラス:自分で作りたいと思った時に作れるっていう自由性とかフレキシビリティはあるんですけども、本来はいろんな人とコラボレーションして才能をぶつけ合うのもやってみたいかな。でも僕の周りのミュージシャン仲間たちはみんな忙しいから。本当はみんなと一緒に演りたかったなっていうのもなくはないけど、今回はアルバムを作りたいという気持ちが強くて、自分ひとりで全部やっちゃったんですよね。

──もしこの作品をライヴで演ろうと思ったら、どのパートをプレイするんですか? 曲によって違うのかな。

シェーン・ガラス:んー、ドラムかギターかな。ベースはステージでは弾けないだろうなぁ…ベースだけは友達に弾いてもらいたいかな(笑)。「Grind 2.0 (The Salacious Elixir)」はギターを弾きたいな。

◆インタビュー(2)へ
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