【インタビュー】NoGoD、けっこう重かった10年の痛みや苦しみを伝えたいベスト・アルバム『VOYAGE』

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フロントマンを務める団長の特異なキャラクターが生み出す独自の世界観と、ハイ・クオリティーな音楽性を併せ持った個性が光るNoGoD。2015年バンド結成10周年を迎える彼らのベスト・アルバム『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』が4月8日にリリースされる。団長とKyrieの2人に、ベスト・アルバムやNoGoDの10年間の軌跡などについて語ってもらったロング・インタビューをお届けしよう。

◆NoGoD~画像&映像~

■何をもってベスト・アルバムとするのかというのはすごく難しいんです
■メンバーそれぞれが思うベスト・アルバム像が違い過ぎて揉めに揉めました


▲『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』初回生産盤

▲『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』通常盤

――『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』に収録する選曲のセレクトは、どんな風に決めたのでしょう?

団長:もう、揉めに揉めました。メンバーそれぞれが思うベスト・アルバム像が、あまりにも違い過ぎて。誰かの意向を強めると、他の誰かにとってはベストではなくなってしまうという状況だったんです。かなり揉めた結果、DISC-1はシングル・コレクション的な内容で、DISC-2はアルバムのリード曲やカップリング曲を主体にした“裏ベスト”みたいなものにしようということになりました。DISC-1は古い曲から順に並んでいて、DISC-2は新しい曲から古い曲へという構成になっています。

Kyrie:何をもってベスト・アルバムとするのかというのは、すごく難しいんですよね。新作の制作を行なう場合は、正解が誰も見えないじゃないですか。だから、これが正解だろうと判断できるヴィジョンを持った人間がイニシチアブを取って進めるのが良いと思う。でも、ベスト・アルバムは、この曲と、この曲と、この曲で…という風にマテリアルが出揃ってしまっているから、それぞれが思い描く完成像というのがだいぶ具体的だったりするんですよ。そうなると、自分が理想とする形にしたいという気持ちが働くから、どうしても意見が分かれてしまう。たとえば、ライブ・ベストであれば、ライブで重要な役割を担っている曲や稼働率の高い曲を選べば良いし、シングル・コレクションであれば、インディーズ時代も含めてシングルとして自分達が追ってきた軌跡をちゃんと提示すれば良いんですけど。でも、今回のベストに関しては、何を持ってベストとするかということを決められないから、とりあえずNoGoDというバンドの中心になっているものを見せられるような作品にしようということになりました。

▲団長

▲Kyrie

▲Shinno

▲華凛

▲K

――NoGoDの本質を知るのに最適な一作になっています。それに、メンバー全員で意見を言い合って真摯な姿勢で収録曲を決めたというのは良いことだと思います。

団長:自分もいろんなベスト・アルバムを聴いてきたけど、雑なベスト・アルバムってあるじゃないですか(笑)。絶対に本人達の意志ではないセレクトだということがわかるベストとか。俺らはベスト・アルバムもNoGoDのディスコ・グラフィーを飾る作品と捉えているから、手抜きなものにはしたくないという想いがあって。だから、本気で言い合ったし、揉めに揉めました。

――リスナーは、嬉しいと思います。『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』はメタル・テイストを活かしたメロディアス&テクニカルな楽曲が核になっていますが、バンドを結成した当初から音楽性は固まっていたのでしょうか?

Kyrie:僕はNoGoDの結成から半年後くらいに加入したんですけど、その時点ではメンバー全員メタリックかつメロディアスな音楽をやりたいけど、それを形にできないという状況でした(笑)。

団長:そう(笑)。ハードな音楽をやりたかったけど、俺が作れなかったんです(笑)。当時は作詞/作曲を全部自分がやっていて、メロディーは作れるし、コード進行も作れるけど、なにせエレキギターがあまり上手く弾けないもので。ハードな音楽の肝になるカッコ良いリフとかが作れなかった(笑)。

Kyrie:メタルが好きだけど、メタルの曲が書けないという(笑)。それに、今回のDISC-1の最初のほうに収録されている「ノーゴッド」や「愚蓮」「最高の世界」辺りまでは、まだバンドの技量的にも難しくて。僕自身も、他のメンバーも、こういう風にしたらよりイメージしているものになるだろうということがわかっていても、プレイヤーとして未熟だったから、それを表現できなかったんです。そういう物理的な壁もあって、当時は大変でした。ただ、僕自身はNoGoDというバンドにメタルを持ち込みたかったわけではなくて。僕は元々メタル・バンドをやっていて、新しいバンドではもう少しポップなものをやりたかったんです。でも、NoGoDに入った時に求められたのは、真逆のものだった。

団長:俺はメタルがやりたいのにメタルが作れないから、メタル・ギタリストが欲しくて仕方なくて。だから、Kyrieにメタル要素を求めたんです。俺は、元々激しい音楽が好きだったんですよ。激しくて、メロディーがある音楽が好きとなると、メロディック・メタルしか自分の中で選択肢がなくて。もちろん、それ以外にも好きな音楽はいっぱいあったけど、化粧をして人前に立つなら音的にも圧力のあるものにしたかったというのもあるし。そういうところで、NoGoDを組んだ時点で音楽性は見えていました。

――ただ、2005年頃というと、メタルは冬の時代だった気がします。

団長:氷河期でした(笑)。俺はNoGoDの前にメタル・バンドをやっていたんですけど、ブッキングを組んでくれるライブハウスは限られていたし、そういう箱でライブをしても全く広がっていかなくて。それで、このままでは飯が食えんと。好きな音楽で飯が食いたくてバンドをやっているのに、このアプローチにはマーケットがないと思って。そこで改めて考えてみると、自分がガキの頃に聴いていた邦楽のメタル・バンドは、みんな化粧をしていたんですよね。OUTRAGEさんとかはまた別だけど、聖飢魔IIや筋肉少女隊、X、SEX MACHINEGUNSといった人達は、化粧をしたメタル・バンドという形で、エンターテイメントとして成立していたんですよ。だったら自分もそうしようというくらいの考えで化粧を始めただけで、ヴィジュアル系のバンドがやりたかったわけではないんです。自分の音楽を、より受け容れてくれるマーケットに移っただけだった。それに、メタルの要素と、ちゃんとした歌謡メロディーと、良い塩梅のヨーロッパ感と、たまに出てくるアメリカン・テイストという風に、良いとこ取りをしたバンドというのを見たことがなくて。それを、自分でやりたかったんです。でも、Kyrieが加入するまでは、自分が思い描いている音楽を形にできなかった(笑)。

Kyrie:僕が加入した頃のNoGoDは、ポップな感じの曲を中心にやっていました。でも、その後僕と団長が一緒に書いたメタリックでうるさいもの……たとえば「愚蓮」だったり「最高の世界」だったりが核になっていったんです。その後NoGoDのパブリック・イメージが“メタリック”というものになっていくにつれて、そういうもので新しいアプローチを出来るようにしないといけないなと考えるようになって。それが曲調の幅を広げることに繋がりました。

――NoGoDがただ単にメロディアスなメタル・バンドではないことは『VOYAGE~10TH ANNIVERSARY BEST ALBUM』を聴いてもわかります。たとえば「万国深層大サァカス」などは、メタル感ではない“尖り”を放っています。

Kyrie:「万国深層大サァカス」は団長の曲で、素材としてメタルではなかったんです。それを、どうやってラウドなサウンドにアプローチしようかなと考えて。それで、自分なりにキング・クリムゾンみたいなイメージをはめてみたりとか。そういうミクスチャー感覚を活かした曲です。自分が書いた曲ではない場合は、特にそういうことがやりやすいというか。素材が自分のイメージの外側にあるものなので、より自由な感覚でイマジネーションを膨らませられるんです。

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