【インタビュー】Awesome City Club、“また変な曲出したな”と言われるようになったらうれしい『Awesome City Tracks』

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▲写真左より:マツザカタクミ(Bass/Synthesizer/Rap)、atagi(Vocal/Guitar)、PORIN(Vocal/Synthesizer)、モリシー(Guitar/Synthesizer/Backing Vocal)、ユキエ(Drums)。

バンドじゃなくてクラブ。グループ名が示すように、華やか見栄えの中にひと癖もふた癖もある、メンバーそれぞれの強力なキャラクターの集合体。Awesome City Clubの1stアルバム『Awesome City Tracks』で聴けるのは、80年代と2010年代を繋ぎ、J-POPとクラブ・ミュージックを股にかけ、音楽家でありムーブメントの仕掛人でもあるような、説明しがたいときめきがいっぱいに詰まった、良質なポップ・ミュージックだ。彼らは一体何者なのか? マツザカタクミ(Bass/Synthesizer/Rap)、atagi(Vocal/Guitar)、PORIN(Vocal/Synthesizer)の3人が語ってくれる。

◆Awesome City Club~画像&映像~

■バイトの初日に出勤してきたPORINと出会って“あー可愛いな”と
■音楽の趣味も良いセンスしてるなと思ったので誘いました


──「4月のマーチ」のミュージック・ビデオ(http://gyao.yahoo.co.jp/player/00091/v10146/v0994000000000542937/)が、可愛すぎて困るんですけれども。

PORIN:ふふふ。生着替え(笑)。

──あれはずるい(笑)。どうやっているんですか。

PORIN:あのまんまです。ずーっと撮りっぱなしで、それを速送りしただけ。

──まだ見てない方、今すぐ見るように(笑)。インディーの頃からずっと、ちゃんと映像を作っていますよね。

マツザカ:そこは、やりたいことだったので。全部のことをきっちりやって、自分たちの周りで全部完結出来るようにしていて。レコーディングとか、デザインとか、ビデオとか、それはライブがスタートする前から作ってました。

──ハンドメイド感がすごくします。

マツザカ:かなりDIYですね。

──そもそもの出会いで言うと、マツザカさんとatagiさんが一番古いですか。

atagi:そうですね。PORINはまたちょっと別ですけど、ほかの二人はもともと知り合いでした。マッツン(マツザカ)も、ずーっと知り合いだった。もう何年だろうね?

マツザカ:5年はたつかな。前のバンドで対バンしたりして。で、2年半ぐらい前にバイトの職場が一緒になって、さらに仲良くなったというか。

──結成を持ちかけたのは?

マツザカ:僕です。最初は受け流されていたんですけど(笑)。

atagi:だって、あんまり楽器をやっていなかったから。前のバンドの中では。

マツザカ:真剣にやってましたけど、バンドという感じのバンドでもなかったし、不思議なことをやっていて。どちらかというと、どういうふうに運営するかとか、そういうことに興味があったんですよね。で、そのバンドではそういうことをずっとやっていて。

──それはたとえば、パフォーマンス性が高いとか? アートっぽいとか?

マツザカ:いや、今でいうアイドルの走りというか。パンク的なアティテュードでやったりとか。

マツザカ:最初はビースティー・ボーイズみたいなことをやっていたんです。楽器もやってラップもやるみたいな。そこから楽器がなくなって、いつのまにかエレクトロ・ポップで踊りまくるみたいなことになった(笑)。それもDIYなグループだったんですけど、自分は曲を作る人ではなくて、イベントのプランニングみたいなことを主にやっていて。自分の思うバンドをやりたくて、その時に考えた“こういうバンドをやればうまくいく”というものを、試してみようと思って、声をかけて……というところからスタートしました。

──その、“こういうバンドをやればうまくいく”というコンセプトは、具体的に?

マツザカ:まずメンバー編成が、男3人で女2人。それから、BPMがゆっくりで踊れる曲。歌詞の世界観としてはそんなにメッセージはなくて、単純にグッド・ミュージックをやって、音でアガッてほしいということ。音楽性に関しては、ざっくりですけど、80'sっぽい感じとか、ブラック・ミュージックが基調になってるとか、そういうところですね。パッションでワーッとやるシーンにこの2人がいたので、そういうところじゃないところでやりたいよね、というのは最初から決めていました。

──はい。なるほど。

マツザカ:ずっとインディー・シーンにいたんで、周りのバンドを聴くぐらいで、CDショップでCDを買うことも全然なくなっていたんです。このバンドを始めるちょっと前に、ふと、また洋楽が聴きたいなと思って、たまたま聴いたのがフォスター・ザ・ピープルの『トーチズ』で、あーやっぱり洋楽好きかも、と。それと、働いてるのがスタジオだったんですけど、そこでかかるBGMが、うるさくない音楽だったんですよ。ベニー・シングスとかが好きになって、ああいうグッド・ミュージックというか、歪んでるギターじゃない音がいいなぁと思って。そういうことをやりたいと思ってatagiに声をかけるんですけど。バンドを始めてから一番ハマッたのは、チルウェーブとかですね。(プロデューサーの)mabanuaさんと一緒にやっているのも、そこが一番大きいと思います。

──ダンスミュージックだけど、音がとても柔らかいし、テンポもゆったりだし。

マツザカ:ムードのある音楽がいいと思ったんですよね。それをやっている人が周りに全然見当たらなかったので、面白いかもなと思って。

──踊らせるというと、とにかくテンポを速くするバンドが多いですからね。

マツザカ:フォスター・ザ・ピープルとかを聴き出した頃は、洋楽ではそういうバンドばかりだったんです。でも日本はどんどん速くなっていて、洋楽はゆったりしていて、不思議だなと思っていました。僕はそっち(洋楽)が好きだなと思って、やっていました。

──PORINさんもその頃に?

PORIN:同じアルバイト先で出会いました。「サポートでいいからやってみない?」と言われて、何もわからずやっていた感じです。サポートと言っても、メンバーと同じようにリハーサルにも入るし、ライブもしていたんですけど、「4月のマーチ」という曲がきっかけで、正式に「お願いします」ということになって。

マツザカ:“可愛い子は絶対入れたい”と決めていました。ドラムで女の子(ユキエ)はもういたので、もう一人、最初は違う子を誘っていたんですけど、駄目になっちゃって。でもライブが決まってたので、誰かいないかなと思っていたところへ、バイトの初日に出勤してきた彼女と出会って、“可愛いな”と(笑)。それで、音楽の趣味を聞いたら、“いいセンスしてるな”と思ったので誘いました。アイコニックな存在がほしかったので、歌ってくれなくてもいいという感じだったんですよ。シンセの音と、アイコンっぽい子がほしいと思っていたので、ぴったりだなと。でも、あんまりバンドをやりたくなさそうだったんですよね。最初は。

PORIN:そういう、ウェットなのが苦手で。でも彼らは、いい意味でドライだったので。

マツザカ:クラブだからね。

atag:まったく制限がなかった。ほかに音楽をやりたければ、それもやっていいよって。みんながノン・ストレスで始められたのは、大きいかもしれない。

PORIN:それまでは一人でやっていました。バンドもやっていたんですけど、人間関係がぐちゃぐちゃになり、毎日叱られていましたね。協調性がなさすぎだって(笑)。

──でもこの“クラブ”は肌に合った。

PORIN:そうなんです。それに、音が好きでした。彼の書く曲が。

──今回のメジャーデビュー作は、ほぼインディーズ時代の再録音なので、最初からこういう曲があったということですよね。

マツザカ:そうですね。

──実験とか、助走とかじゃなく、最初からコンセプトを決めて全力疾走というか。

マツザカ:意識してましたね、スピード感は。ライブをたくさんやって、じわじわお客さんをつけて……というのが、わずらわしいという気持ちがあったので。今もライブハウスでやってるんですけど、ライブハウスでブッキングしてもらう時期は、前のバンドでもうやってるし、どうやったらスムーズに行けるかという算段もついてた中で、今のやり方が出て来て。うまく行ったなという感じです。

──楽曲的には、メイン・コンポーザーはatagiさんですけども。何か、注文されるんですか。マツザカさんから。

atagi:注文というか、日常生活の中で、“最近こういう音楽聴いててさ”とか、そういう情報を僕が収集することはありました。

マツザカ:PORINもそうなんですけど、最新の洋楽が好きで。彼が作って来た曲が、そういう感じに聴こえるんだけど、彼にしたら実はルーツ的なこととしてやっていて、それがうまいことリンクしたというのはあるかも。

──それ、大いにあると思います。僕みたいな世代が聴くと、初期80'sっぽく感じる曲が、若い子たちにはすごく新鮮に響いたり、音楽って回ってるじゃないですか。そのシンクロ率の高さをすごく感じる。

マツザカ:今は若い人もライブに来てくれるんですけど、年代が上の人も、そういうふうに楽しんでくれていて。

──40代後半のおじさんにどんぴしゃですよ。うれしいかどうか知りませんけど(笑)。

マツザカ:うれしいです(笑)。

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