李香蘭が戦時中に録音した未公開音源、試聴開始

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李香蘭(山口淑子)が戦時中に録音したものの、お蔵入りとなっていた「雲のふるさと」「月のしづく」の2曲の音源の試聴が日本コロムビアのページで開始となった。

古賀政男音楽文化振興財団が所有する古賀政男の遺品SPの中にあったという「雲のふるさと」「月のしづく」の2曲。しかし、オフィシャルな記録からもこれら曲の存在は抜けており、確認した当事者たちも亡くなり、発見時に同席した音楽史研究家・郡修彦 氏の記憶の中だけに埋もれていたものだった。

このたび山口淑子の逝去により、その歌の記録が企画編集されることになり、あらためて確認され、戦後70年の時を経て日の目を見ることとなった。

音源の録音が行なわれたのは、昭和19年11月10日。これが戦時中、李香蘭の日本での最後の吹き込みとなった。この時期、レコード原材料も不足で、軍部の意向にそった作品でさえ、レコードが発売されたか否か判らないものがあるという。ただ、この曲の記録欄には、他にほとんど例のない、発売しない理由が「作詩不良のため発売不能」と特記されている。「雲のふるさと」は、この1年前に映画『あの旗を撃て』主題歌として伊藤久男が歌い発売されているはずの曲であり、同じ歌詩であることから「なぜ?」という疑問も浮かぶが、伊藤盤がさほど普及していなく、検閲する軍部からなにがしかの注意があったのか、もしくはコロムビア自体が自粛したのかは不明。この作品のような覚悟の抒情歌は厭戦的な情を喚起する面もあり、3番(このバージョンでは2番)の「すめらぎに 捧げたる身の 死にてよと 汝は言わずや」や、1番の「ますらおの われというとも 故しらず 涙落つるを」が表現として許容範囲外となっていたのだろうか。

多くの青年の心をつかんだが故、時代を代表する詩人だった大木惇夫の作品といえども、“不良”と認定せざるを得なかった。そんな戦局が背景にあったのだろう。

この2曲は、4月29日発売となる『伝説の歌姫 李香蘭の世界』に収録される。本作品はそのほかにも、初のCD化となる李海燕と共演の「迎春花」のほか、多くの曲を最新技術で音質改良して収録。李香蘭(山口淑子)の代表曲・貴重作品47曲を収録した2枚組。

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