【インタビュー】kyo [D'ERLANGER]、「デビュー前みたいな時間を4人でシェアした」

ポスト

■そこにバンドのサウンドがあるわけで
■そのサウンドが自分をどう導いてくれるかが、まず重要だった

──他の収録曲についてもいくつか訊いておきたいんですけど、まずは事実上の表題曲ともいえる「狂おしい夜について」。

kyo:これは最初にプリプロで聴いた時に、ぬめっとした色っぽさというのを感じて、その瞬間にこの曲のタイトルを「狂おしい夜について」にしようって思ったんです。だからあんまり表題曲っていう捉え方はしてなくて、たまたま同じタイトルなだけっていうか。たとえば映画で言うと、予告編とかでダイジェストでパッパッパッとフラッシュバックしながら、そこに台詞とかもパッと入ってくるような、そんな感じ。だから、文章を歌うというよりは、ワードがその場その場に嵌まっていって、好き勝手に景色を作っていくみたいなイメージがありますね。

──曲に対してイメージを投げつけていくような作業だったわけですね?

kyo:うん。綺麗に絵を描くっていうよりは、キャンバスに向かって絵の具を投げて、グシャッとぶつけられたものが重なり合いながら形作られていくようなイメージでした。僕の好きなやり方ですね、これは。

──続く「Cherry」は超早口な歌(笑)。ライヴでも聴きおぼえがあります。

kyo:ええ。いざレコーディングしてみたら、その早口が嵌まらないところが自分のなかで出てきて(笑)。だからライヴで歌ってた時からすると結構歌詞が変わってるんです。ずいぶん端折りました(笑)。多分ね、ライヴではグルーヴにまかせてるところがあるんで、そういったところはやっぱりTetsuが僕の歌を聴いてくれて、寄り添ってくれてたところがあったんだと思う。でも、ホントにこれもD’ERLANGERにしかできない曲ですよね。ライヴでやってる時からそう思ってたけど、いざレコーディングしてみたら、「ああ、まさにこれぞ!」と思わされて。

──続いては「Dance with me」。「唇が唇を塞ぎこんだ…戸惑いが飲みこまれた」という歌詞がすごいです。

kyo:ふふふふ。

──戸惑いが吞み込まれるのって、唇を塞がれてしまった女性側の視点であることのほうが一般的じゃないかと思うんですよ。これに限ったわけじゃないですけど、詞のなかで性別が入れ替わることってたまにありますよね?

kyo:あんまりそこはね、男だからこうとか女だからどうのというのがなくて。多分そこが、僕がよく言う“隅っこに置いてあるものをくすぐりたい”っていう欲求の現れだと思うんです。僕もそんなに普段、激しい人間ではないんで、どちらかというと。だからたとえばモラルだったりとか、そういったものも当然あるわけですよね。でもなんか、ロックに向かってる時の自分というのは、またそういった自分とは別のところがあって。それがちょっと反映されてるのかもしれないですね。

──それって、ある種の不良願望の現れに似たものでもあるわけですか?

kyo:そうかもしれない。やっぱりロックって、ホントに幼稚な言い方になりますけど(笑)、悪いものだったりとか、羽目を外すものだったりとか。普段、まともにやってる人ほどハジけられるものというか。なんかどこか、そういう部分があるんですよね。「タガを外せ!」みたいな。そういうところで、こういった表現が出てくるのかもしれない。だから、セクシーに書こうとか、男性的/女性的っていうのとは関係なく、単純に「ハジケなさい!」みたいなところだったりもするんです。戸惑いだったり、躊躇いだったり、恥じらいみたいなものって、普通に生きてる時には必要なんだけども、それを超えた時の感覚というか……なんかそれがロックだって感じがあるんです、僕のなかでは。

──どちらにせよ子供には真似のできない歌詞表現という気がします(笑)。そして「SWEET EMOTION」。こちらもライヴで披露済みだった曲ですよね。当初、向こうで録る予定だったということは、他の曲よりも一足先にかっちりとした形になっていたということですね?

kyo:そうですね。これはやっぱり『#Sixx』の次の新曲として最初にできてきたものなんで。自分のなかでのロックン・ロール感というか、そういったものがストレートに出てるかな。自分の描くロック・スター像みたいなものというのがすごく反映されてる。極端に言えば、意味なんてないというか。

──意味のない歌詞であったとしても、すごく言葉が転がってる感じがあって。

kyo:うん。そう言ってもらえるのは嬉しいな。

──「BABY」については……なんかこれ、超人気曲になる予感がします!

kyo:そうですか(笑)。これはね、ホントにCIPHERにも言ったんですけど……いい曲ですよ。なんかね、ありそうでなかったというか。“らしい・らしくない”で言えば、らしくないのかもしれないんだけど。

──だから、入るべきアルバムを問う曲でもあるのかもしれません。

kyo:そうですね。おそらく『the price of being a rose is loneliness』には混ざり合わないだろうな。でもこれは、まさに真正面から見た景色を歌いたかったもので、対象云々というよりは、もうちょっと大きな愛みたいなところを歌いたくなった曲なんですよ。だからパッと曲を聴いた時に、ホントに今まで敢えて書かなかったような柔らかい表現というか、もうちょっと体温がある感じというか……。そういうものにしようって、聴いた瞬間に思いましたね。

──「Candy In The Shape Of You-2015-」は、またここで味がいっそう濃くなりましたよね。

kyo:色っぽいんですよね。僕もそう思います。熟成された感じがあるというか。ヴォーカル的に言うと、照れがより消えたというか。もちろんこれまでも照れながら歌ってたわけじゃないけど(笑)、自分がヴォーカル目線で聴いた時にそんな感じを受けるんです。歌ってきた回数というのもあるんだろうけども。向こうでこれを録った時って「ああしよう、こうしよう」って考える余裕が、いい意味でなかったんですよ。初対面の外国人のエンジニアとディスカッションしながら歌を録るっていう初めての経験をしたなかで……なんだろうな、無我夢中と言うと言い過ぎだろうけど、なんかそこに集中していたので。だから、自分がどういう想いで録ったかというのは、あんまり重要じゃないんですよね。ただやっぱり、そこにバンドのサウンドがあるわけで。そのサウンドが自分をどう導いてくれるのかっていうのがまず重要だったというか。

──それによって、いつもとは違った自分が出てくることがある、ということなんですね?

kyo:そう。まあ、ライヴでは何度も経験してることなんですけどね。だからある意味、セルフ・カヴァーってこういうことなんだなと思いました。やっぱりTetsuのドラム、SEELAのベース、CIPHERのギターにも、それぞれのドラマがあって、しかもそれが『#Sixx』の時とはどこか違っていて。

──なるほど。そして「Skelton Queen」。この曲については、“歌い出しがこのキーから始まるのか!”という驚きがありました。

kyo:はははは! これね、これは大変ですよ。どうしましょう、みたいな(笑)。かなりスコーンとね、高いところから始まるんで。これ、なんかライヴでは後半に来そうだから、大丈夫かなって(笑)。でも、なんかこういうメロディで始まる曲って……ホントにこれもありそうでなかった感じがするんです。ただ、それでもメロディを書く時には、僕が歌うのを本当に大前提として書いてくれているので。だからそれもきっと、いろんなところでのCIPHERが持つ「kyoがこれを歌ったらカッコいい」というのの嵌まり方のひとつだったんじゃないかな。しかも、これも無意識だろうと思いますよ、きっと。

──そして最後は「CRAZY4YOU」。まさにシングルになりそうな曲だし、実際、この曲がアルバムのリード・トラックということになるんですよね?

kyo:そうですね。まさに突き抜けた感じの曲で。なんだろうな。25年前にできた「LULLABY」があって、25年後、この「CRAZY4YOU」が同じアルバムのなかにあるっていうのが、ひとつの答えでもある気がするというか。その、自分たちなりのポップ感に対する答えだったりもするんだろうし。なんか、すごく嵌まりがいいんですよね。

◆インタビュー(4)へ
◆インタビュー(2)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報