【イベントレポート】中島卓偉、『煉瓦の家』イベントはアコースティックバージョンで

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中島卓偉がニューアルバム『煉瓦の家』リリースを記念したミニライブを池袋サンシャインシティ噴水広場にて開催した。

◆中島卓偉『煉瓦の家』リリース記念ミニライブ 画像

サンシャインシティの噴水広場といえば、言わずと知れたアイドルイベントの聖地。ここで中島卓偉がどんなイベントを繰り広げるのか。そんな期待を胸に多くのファンが集まる。ウィークリー2位を獲得したアンジュルム提供曲「大器晩成」や、℃-uteに提供した「次の角を曲がれ」など、昨今はハロー!プロジェクトのグループにも楽曲提供している中島卓偉。その効果か、彼のライブでは男性ファンが増加中。今回のイベントにも男性ファンから卓偉を呼ぶ歓声を耳にすることができた。

ステージ上、スタンドに立てかけられていたのは、愛器・Gibson J-45。この日は、中島卓偉がアコギとともに歌声を届けるアコースティックライブだった。

大きな拍手と歓声を受け、吹き上がる噴水を背に中島卓偉がステージへと登場する。そして、ギターの感触を確かめ、チューニングを行なった後、マイクを前に一言。

「ちょっとリハーサルします。すぐに始められません。」

そう言い放つと、卓偉が鳴らし始めたのは、奇しくも来日公演中のポール・マッカートニーが作った「アイ・ソー・ハー・スタンディングゼア」(名義の上ではレノン=マッカートニーだが)。なんてことはない。リハーサルを兼ねた、集まってくれたファンへのサービスである。軽快なストロークと卓偉の歌声に自然にクラップが起こり、周辺を歩いていた人も耳馴染みのあるビートルズナンバーに足を止める。上階にいたサラリーマンや年配の男性たちが興味深そうに身を乗り出してくる光景は、なかなか面白いものがあった。

「OK。中島卓偉です。短い時間ですけど、最後まで楽しんでいってください。」そうつぶやくと、さっそくアンジュルムに提供し、自身のアルバム『煉瓦の家』にも収録している「大器晩成」。もっとも、アルバム収録の中島卓偉ver.はバンドサウンドになっているので、アコースティックver.というのは、今のところイベント限定ともいえる。

卓偉のシャウトが会場を煽っていく。“それ大器晩成って言わねえし”の違いはおろか、ある意味で誰もが初めて耳にするアレンジと、ストレートに鋭く訴えかけてくるボーカル。当初、アンジュルムver.が世に放たれた時には“神曲”なんて言葉で賞賛されたこの曲。しかし、ギター1本と中島卓偉の歌声だけで披露されたこの日のバージョンは、神曲なんていう陳腐な言葉を用いて表現するのが恥ずかしく思えるほど、強い輝きと響きを持って、我々のもとへと届けられたのである。

立て続けに、特徴あるラインを奏で始めると、すでにアルバムを聴き込んだオーディエンスから驚きの声が挙がる。「忘れてしまえよ 許してしまえよ」。サンシャインシティの吹き抜けを上階まで一気に突き抜けていく卓偉の圧倒的な歌声を前に、思わずワンコーラス終わったところで拍手が巻き起こる。余談だが、「大器晩成」や「次の角を曲がれ」目当てでこの日のイベントに足を運んだハロー!プロジェクトのファンたちの多くは、むしろ“目当ての2曲以外の楽曲”にこそ魅了されていたようで、Twitterなどにもそんな言葉が次々投稿されていた。

「あらためましてどうも、中島卓偉です。ここでやるの初めてでね。普段はもっと踊る人たちがやるんでしょうけど、すごくステージが広く感じますが、もちろん全部は使いません(笑)」

1曲終わるごとにチューニングを行なって軽くトークを挟むものの、リリースイベントということで基本は次々に楽曲を披露していくスタイル(ワンマンライブで聴くことができる「才能と歌唱力が凄まじい、中島卓偉です。」の挨拶もなし)。あえてそのテンポの良さをたとえるなら、ポール・マッカートニーの<MTVアンプラグド>の模様を収めたライブアルバム『公式海賊盤』を聞いているかのよう。

「次の角を曲がれ」に続く「どんなことがあっても」。弾き語りという形式ゆえに、“信念はいずれ光となる” “自分の努力は自分を裏切りはしない”といった卓偉の発するメッセージが、よりダイレクトにオーディエンスへと投げかけられる。そしてここ数年の中島卓偉を代表する1曲と言ってもいいであろう「3号線」。アルバムのタイトルチューン「煉瓦の家」での卓偉はというと、マイクの有無など関係ないとでも言うように、ギターを激しくかき鳴らし、メロディーに感情をぶつけてひたすらに喉を震わせる。

「東京は移り変わりが激しすぎるから、自分が上京してきた時と街も変わってる。どっか、進化していかなきゃという気持ちもありながら、寂しいなぁという気持ちもついてきたりして。そういう思いを自分なりに歌詞にした曲を最後に歌いたいなと思います。みなさんも、自分の近所、田舎にある懐かしい建物をイメージして、聞いてもらえると嬉しいです。」

ライブのラストを飾ったのは「東京タワー」。地方から上京してきた者がふと感じることがある都会の寂しさや、通り過ぎてきた過去をフラッシュバックさせるようなノスタルジックさを漂わせた歌声に引き込まれていると、さらに楽曲は同じ響きを持ったスタンダードナンバー「スタンド・バイ・ミー」(ベン・E・キング)へと繋がっていく。元々「東京タワー」という曲の延長線上にイメージしていたのか、はたまたスタジオに入っている時に浮かんだ偶然か、もしくはステージ上での思いつきか。セットリストにも書かれていないこの展開を挟んで、再び「東京タワー」へと戻ると、会場は拍手喝采に包まれたのだった。

楽器ひとつと歌声ひとつの、余計なものを徹底的に削ぎ落としたアレンジが弾き語り。この日の中島卓偉のステージで各人が覚えた感動や衝動は、つまり、極限までシンプルにしてみた結果、やっぱり中島卓偉が紡いだ曲そのものが強い響きと強い魅力を備えていたということと、やっぱり中島卓偉のボーカリストとしての揺るぎない才能は圧倒的であったということ、そして素晴らしい楽曲とボーカリストがひとつになるという奇跡的な瞬間を我々は確かに共有したということの証明にほかならない。

なお、中島卓偉の『煉瓦の家』リリース記念ミニライブは5月8日には大阪・あべのHoopでも開催。また、4月24日にはLoVendoЯと<ANOTHER OF MUSIC FESTA>が渋谷DESEOにて開催される(チケットはソールドアウトとなっているが、それでも当日券を出してほしいと中島卓偉がスタッフにリクエストしている、らしい)。

text and photo by ytsuji a.k.a.編集部(つ)

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